第92話

「一応、他にも黄色い花を持ってきたのだが……」

 申し訳なさそうな顔をして、グレイルさんが籠の中からもう一つ花束を取り出しました。

「あ!」

 取り出した花束を見て、目が輝きます。

「これ、アブラナ科の花ですよね?」

「分からない……名もなき花だ」

 名もなき花。わざわざ花として育てて愛でないという意味でしょうか。バラとか百合とかのように雑草とひとくくりにしちゃうみたいな……。

 いえ、私もアブラナ科の花とひとくくりにしちゃいましたけれど。

 だって、見分けが難しいんですよ。

 菜の花に見えます。どれも。それもそのはずまとめて菜の花と呼ぶけれど、実は、白菜の花だとかコマツナだとか、アブラナとかセイヨウカラシナとか違う花だったりするんですよ。

 白菜…コマツナ……食べたい。

 ああそれに、アブラナって種子から菜種油が取れますし……菜の花は咲きそろう前には美味しく食べられますし。

「もらってもいいんですか?」

 菜の花嬉しい。

「もちろんだとも。リツのために持ってきたんだ」

 喜んで手を伸ばして菜の花の花束を受け取る。……でも、あれ?切り花……。

「グレイルさん、あの、またこの花を持ってきてもらってもいいですか?」

「ああ、もちろんだ。何度だって、リツが喜ぶ顔が見られるなら」

「いえ、あの、何度もはいいのですが、今度持ってくるときは、切らずに根っこごと掘り起こして持ってきてもらっていいですか?」

「は?」

 植えて種を収穫すれば、無限に育てられます。菜の花、何の花なんだろう。できれば白菜。白菜が希望です。まぁ、アブラナでも菜種油が取れるので油があれば、揚げ物調理ができちゃいます。ふふふーん。ふふふーん。

「根っこごと?」

 グレイルさんが首を傾げました。

 ん?贈るための花って、切り花ばっかりの世界なの?

「根がついていれば、植えると……」

 種が取れますし。

「あ……ああ、ずっと……その、俺が贈った花を……見ていて……くれるということか?」

 いえ、花はずっとは見るつもりはなくて、手っ取り早く種を取るためにミック君に成長を促してもらうかと。

 申し訳なくて視線を逸らします。花より団子すぎる自分、ごめんなさい。

「分かった。今度は根のついた状態で持ってくる。リツ……なんでも希望を言ってくれ。どこに住みたい?王都に屋敷が欲しければ王都に用意する。その街がいいか?もう少し王都から離れた場所でも構わないぞ」

 ああ、責任を取るという話の続きですね……。

 別に責任を取ってもらわなくても全然かまわないのですが、でも。

 責任を取らないと、グレイルさんが無責任な男だと思われても困りますよね。もし、女性と二人で馬車の中で一夜を共にしたというのがばれた時に。それも、陛下が召喚して追放した女性の弱みに付けこんだみたいなあらぬ噂が立ってしまっては……グレイルさんに申し訳ないです。

 ことがばれた時にも十分な償いをしていることが分かれば……女の方からそれが目当てでグレイルさんを陥れたみたいな風に勘違いされれば、グレイルさんの名誉は守れますね。何もなかったんですと言っても信じてもらえないなら、せめてグレイルさんの迷惑にならないように申し出を断るのもよくないかもしれないです。



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ご覧いただきありがとうございます!

感想ありがとうございます!返信できずにごめんなさい。とても嬉しく、楽しんで拝見させていただいております!

時間が取れたときに返信させていただきます……。いっぱい感想くださると嬉しいです。突っ込みどころ満載な作品だと思うので……(*´ω`*)

なるべく料理だけは不自然ないように実際に買って食べて原材料見てと、やっております……。

出てきたチーズのお菓子も、チーズ感とか実際少なくて驚いたりね……


駄菓子も、値上げの時代で……とりあえず平成駄菓子な感じです。平成初期駄菓子。

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