第71話

 なんと!米粒魔石にも使い道があるのですね!全く見向きもされないから道端に放置されているのかと思いましたが……こうして瓶の中に入れて飼うことができるから、わざわざ拾い集めに行かないのですね……。

 な、なんということでしょう……。

 私の今までの苦労は何だったのでしょう。

 大きめのフライパンとかいろいろ欲しい物あありますが、まずは瓶を……瓶を買おうと思います。それから、明日はスライムさんを捕まえに……いえ、捕まえて瓶に閉じ込めると考えるとかわいそうなので、瓶を置いて、自分で入ってくれる子がいるのを待ちましょう。

 きっと、スライムさんの中には、瓶の中が落ち着くぅっていう子もいると思うのです。

 ……私がスライムだったらそのタイプですね。引きこもり体質ですから。……そういえば、猫もやたらと狭い箱とかにすっぽり入るタイプもいますね?きっとスライムさんも瓶だ、わぁーい!というタイプがいるんですよね。マーリーさんが棚に戻した瓶にはふたはついていません。逃げようと思えば逃げられると思うんですよ。ぴょーんと飛び上がるとかできましたよね?でも居心地がいいから逃げていないんですよね?

「で、パイナップルの芯がどうしたって?」

「おいくらですか?」

「あはは、どうせ捨てちまうからあげるよ。でも、食べられないところだからね?無理して食べようとしちゃだめだよ?毒があるらしいからね」

 毒?そういえば、日本でもパイナップルの芯には毒があるから食べられないなんて噂もありましたね。毒はないし、実は栄養素が豊富で食べるためのレシピも検索すればいろいろと出てくるはずなのですが。あまり丸のままパイナップルを買う人もいないのでいまいち広まっていませんが……。スーパーではカットパイナップルはよく見かけますが、芯だけ売っているのは見たことがないですしね……。

「あと、あの……生の肉は出せませんか?」

 マーリーさんが目を丸くした。

「生の肉ぅ?生で肉を食べるなんて聞いたことがないよ」

 ああ、そうなんですね。グレイルさんが特殊だったんですね……。

 そうですね。生で肉は……まぁ、日本人は好きだから食べますけども。食べちゃダメっていわれてる危険な肉も食べちゃう人いますけども。

「おう、熱でも出したんか?生肉なら俺が出してやるぞ」

 パイナップルを注文したおじさんが手を上げました。

 熱?

 そういえば、発熱したときに生肉で体温を冷やすとかいうのを聞いたことが……生臭くなりそうなので勘弁してほしいと思った記憶が……実際にする人がいるということですよね。

「ありがとうございます。このサイズの魔石しか持っていないんですが……」

 慌てて小指の爪サイズのパンが出せる魔石をいくつか取り出します。

「おう、十分十分」

「あ、ちょっと待ってくださいっ」

 部屋に戻ってフライパンを持ってきてそこに肉を出してもらいました。

「ありがとうございます」

 マーリーさんにもらったパイナップルの芯もそこに入れてもらいました。

 蓋をしてワーシュさんの前の席に戻って頭を下げる。

「すいません、バタバタしてしまって。ちょっと試したいことを思いついたので」

 ワーシュさんが他の人に聞こえないように声を潜めました。

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