第47話

「ほい、これだよ、リツ兄ちゃん。やっぱり違うだろう?確認したら魔石に戻すよ」

 ミック君が差し出してくれたあんときたべたあれを受け取ります。

「……これ……」

 た、玉ねぎにしか見えない!

 新玉ねぎ……。ちょっと皮を1枚2枚むいて匂いを嗅いでみます。

 匂いも、玉ねぎにしか思えないです。

「くっ」

 しまった!

「目がっ!目がっ!」

 玉ねぎの汁が目に……涙が出ます。ああ、こんなところまでしっかり玉ねぎですっ。どう考えても、これ、玉ねぎですよね?

「リツ兄ちゃんっ!大丈夫か?毒にやられたのか?」

 ミック君が大慌てです。

「も、戻れ!」

 うわぁ!玉ねぎが消えて魔石に戻りました。

「どうしよう、おいら……おいらのせいで……!」

 ミック君が泣きそうな顔をしています。

「だ、大丈夫だから。玉ねぎは目に染みるもので、毒じゃないよ?毒じゃないからね?」

 私の言葉に、ミック君が疑いの目を向け待て来ます。

「でも……鑑定で有毒だって出たし……」

 うん、それなんですよ。

 どう見ても匂いも目に染みるところも玉ねぎだと思うんですけど。

 鑑定魔法?で、有毒?

 ……玉ねぎは確か、アリなんちゃらかんちゃらっていう毒が含まれているというのは聞いたことがあります。赤血球を壊してしまって血尿が出たりするとか。……という点において毒と言えば毒なんですが。

 人間にはほとんど効かないんですよね。犬とか他の動物にとっては危険だけれど……。人間はよほど毎日大量に玉ねぎばかり食べるとか極端なことをしなければ大丈夫なんですよね……。人間が食べても平気でも有毒判定なんでしょうか……。

 うーん。それとも、似ているけれど実は玉ねぎじゃない?

 もすくは、この世界の人間は玉ねぎを食べると危険?……どっちなんでしょう……。

「ミック君は、大丈夫だったんだよね?……その、すごくまずかった以外は」

 ミック君が頷きました。だったら、毒じゃないんじゃないかな?食べても平気な玉ねぎなんじゃないかな?

 とはいえ、一口かじっただけって言ってましたし。これは、安全を確保したうえで食べてみましょう。

 安全を確保……えーっと、お医者さんとかが近くにいて、ミック君とか誰かにすぐ対応してもらえる状況で食べる。

 と、言うことは街で食べないとダメです。もしこんな森の中で一人で食べて毒で倒れても誰も助けてはくれません。

 街へ移動する間、野宿していたので今日も森の中でもいいかなと思っていましたが……。街へ行った方がいいでしょうか。

 ですが、街では逆に野宿は危険そうです。人がいるということは悪い人もいるということです。

 グレイルさんも女だとばれないようにした方がいいと言っていました。ということは、女には危険なことがある。悪い人がいる。つまり、少年のふりをしていたって悪い人がいる限り、何かしらの危険があるってことですよね……。

「なぁなぁ、リツ兄ちゃん、さっきからさ、あそこから煙上がってんのなんだ?」

 はっ。そうでした。燻製を作っているところでした。

 低温での燻製じゃなくて高温での燻製なので、短時間でもできるはずです。どれくらい時間がたったでしょう。なんだかんだと1時間以上はたっていますよね。お肉をミンチにするところからハンバーグを作りましたし。

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