第四話
「と、いうわけで。」
「今日はマネさんも含めた話し合い兼事情聴取です。」
我が家、金曜夜。当初はこの時間に事情を全世界の皆様にお伝えするつもりだったけれど、俺、加藤兄妹と通話越しにマネさんの四人での話し合いに変更された。配信はしていない。
「お前も聴取される側だかんな?」
今日は最初から敬語抜きだ。マネさんの舌は素晴らしいケイデンスをしてらっしゃる。
「まあまあ、落ち着いて。まずは自己紹介からしましょ?」
「すべての元凶が何をほざく」
「はーい、こちらのとてもあたりの強い方はうちの事務所のマネージャーの一人で俺のマネジメントをしてくれています、恵村さんでーす。普段は落ち着いた常識人なんだけどね、最近、というか直近の
「おいゆっくり画面からフレームアウトするな不穏な捨て台詞を残して消えるんじゃない待ておい。」
さーて、出し忘れてたお茶でもいれてこよー。
「…チッ。お二方とは初対面ですね。私は
え?舌打ち?
「いえ、悪いのはこいつなんで。それにダメージがあったのは慧と御社なので、謝るのはこちらです。本当にすいませんでした。」
「すいませんでした。」
知り合い三人が画面越しにペコペコしてるよ、新鮮な絵面だね。
「いえ、悪いのは不注意に不注意を重ねた夜夢さんなので。自業自得です。」
わあ辛辣。
「返す言葉もねーや。あはは。」
「本当にわかってんのかお前。」
「なんで聞こえてんのぉ!?」
おかしい。この距離なら顔はギリ見えても声までは拾えないはず。沙紀ちゃんが突撃してきたときのアーカイブを見返して確認したんだ間違いない。
「いえ、ムカつく面で大口開けてたんで、どうせ笑ってんだろうなと。」
「はえー。
あ、これお茶ね。ここ置いとくよ。
んで、このままだと配信一枠分くらい悪口の応酬になるから本題に戻りましょ?」
マネさんの暴言は受け流す。疲れて頭鈍ってると思えば怒る気も失せるってもんよ。手が出ないだけマシ…出てたな、手。……
「ああ、そうだった。えーと、加藤沙紀さんですね?」
「あ、はい」
「うちでVTuberやりません?」
仕事の鬼か。あんた死ぬよ?
「えっ」 「えっ」
こっちはこっちでほんと兄弟仲いいね君ら。
っと。
「待て待て待て待て。今日はこの二人に月曜のアレについてと、個人情報云々の話をするんじゃ?
というか、つい三ヶ月前に新人四人出したばっかなんだからそんな余裕無いでしょ?」
「冗談です。
本題に戻りましょう。夜夢さん、この三日間でネット、見ました?」
「見てません。DMの通知で炎上してるのはわかってますが。」
「……いい話がいくつか、悪い話がいっぱいです。どっちから聞きます?」
いっぱいて。いや聞くけど。
「……交互に聞きましょう。まず悪いほうからドン!」
「夜夢さんが身バレしました。」
「はえーよ」
ナンデ?
いや、心当たりしか無いけども。何?特定班暇なん?
「遅かれ早かれ通る道です。受け入れてください。
…因みにですがお二人もです。デマや憶測も多いですが事実らしい内容もありました。時間の問題でしょう。」
「スウゥゥゥゥ…い、い知ら、せってのは?」
ああああああああめんどくせえことになってきたぞーーーう。
もうどーしよう。
「大好評なんです。」
「えなにが?」
「件の乱入配信です。」
「……ホ?」
なにいってんだこのひと。
なにかんがえてんだねっとのたみ。
「……そんなにですか?」
良くて一過性のバズ、悪くて炎上ぐらいだと考えていたけれど。
……思ってたより大事になる…な?
「夜夢さん、最後にコラボしたのいつですか。」
「え、つい今週の月曜日、不本意ながらこの子と。」
「うっ」
「そうではなく、同業者と。 デビュー数週間後の同期全員コラボの後から今までで、誰かとコラボしました?」
「…っえーー、いえ、二カ月と少し、一切配信で人と関わってませんでしたね、ええ、はい。」
うるさいな。
っていうかあんた俺のマネージャーなら知ってるだろうに。
それがどうかしたかこの野郎。
だって先輩方も同期もみんな忙しそうだったしぃー。はい、言い訳です。
「普段人と関わらない推しが!約二ヶ月ぶりに人と絡んでて!キャラ崩壊!生活感丸出し!極めつけにアンチが大好きな異性関係の火種と来た!!」
急に大声出すな興奮するな。
内なるオタクが出てる。
こりゃもうとまんねぇな。
「これで話題にならないほうが嘘では?」
うわあ、急に落ち着くな!
この人今日も睡眠不足キマってんの?
うん俺のせいだねごめんねマネさん。
それはそれとして後でこの人Vにできないかシャチョサンに上奏してみようかな、あの人なら簡単に「イイヨ―」とか言いそう。
「つまりですね、多くの人の目に留まってファンもアンチも増えました、やりましたよ二期生最不人気からの脱出ですよ!」
「なんか複雑なきもちー。」
しかし言われて見れば。
件の配信事故は端から見る分には面白かったのだろう、当事者としてはそんなことも言ってはいられないのだけど。
「…失礼、すこし取り乱しました。それを踏まえてですね、夜夢さんの今後とお二人の扱いについてお話したく、今日は集まっていただきました。」
はて、同期とすらまともに関係が持てない人間が、どうして世間さまから注目されてんだ……?
「まずお二人をどのように扱うかですが、夜夢さん、どうお考えで。」
「……ごく稀に顔を見せる妖精さんということで。」
「…味占めましたね?」
「そういうんじゃないですけどね?!」
うん、本当にそんなんじゃないよ、ほんとほんと。
ただ、うん、そう、その…言い訳とか、ないです。
「…まあ、おふたりがそれでいいならいいですけど。」
許された……許されたかな、多分。
でも世間が許してくれなかったからこうなってるんですけどねちくしょう。
ともだちのいもうと が あらわれた! あなた は はいしんちゅう だ! 昨日までROM専だったひと @Honnnomusi0403
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。ともだちのいもうと が あらわれた! あなた は はいしんちゅう だ!の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます