第2章 桜間くるるは近づきたい!
2月15日(水)_さくら色ガールズトーク
放課後。学校近くのスタバは春の香りがする。
くるるの頬はゆるみきっていた。桜咲く紙カップに口をつけて、季節限定の新作ドリンクを啜る。
ホットの『さくらソイラテ』。
温かいソイミルクにサクラのフレーバーが香るいちごのソースが注がれた一杯だ。
ほうっと息を吐くと、くるるは再びニヤついた。
「……へへ」
「イイことあったって顔に出まくりじゃん」
向かいに座る少女──理央が嬉しそうに言う。彼女はくるるとは別の新作ドリンクを飲んでいた。
「えへ、へへ、理央ちゃんのアドバイスのおかげだよお~。……にへへ」
「ちょっと不審者っぽいぞ~」
「やだなあ、理央ちゃんったら。……にへへ」
「ほら、早く聞かせてよ。昨日の帰りからどうなった? どこまでいった?」
理央が急かすと、くるるはわざとらしく咳払いをする。どちらからともなく二人の背筋が伸びる。
「あのね、ゲームセンター行っちゃった」
「……はい?」
「それからカイトくんにヒーローって言っちゃった~」
「……それで?」
「チョコ貰った!」
「……なんで?」
「友チョコだって。ちゃんと友だちになれたよ~」
えへえへへ、とくるるはメトロノームのように揺れながら笑った。昨日あった幸せな出来事を全部話してしまったと言わんばかりにとろけるほっぺたに納得できない人物が一人。
理央が、くるるの頬を左右からモチモチと引っ張った。
「よーし、くるるちゃん。詳しく訊こうじゃん?」
「なんれほっぺたひっぱるのりおちゃん~」
「チョコ買ったとき言ってたっしょ。明石に渡したいって」
「はひ」
「で、教室でちゃんと渡せたじゃん」
「ほうらね」
「で、そっからどうやったら友だちのままでいられるワケ?」
理央は、答えを述べよとばかりに手を放す。くるるがほっぺたをすりすりと撫でて安全確認をする。
「……私が、友チョコって言って渡したから、かなあ」
「ど~してだ~?」
「あ~、りおひゃんほっぺ取れひゃうっへ。うう、だ、だって」
「だって?」
「私だって、その、カイトくんのことどう思ってるか分かんないんだもん」
「チョコ買ったときはなんて言ってたっけ?」
「き、気になるとは、言ったけど、さ?」
くるるはさくらラテの紙カップを盾のように掲げ、隠れた。
「だって、私だって分かんないんだもん……」
理央は「もう答えっしょ」と呟いた。
くるるの頬は桜色に染まっていた。
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