吸いにくる長門さん

 夜。眠っていると、玄関ではなくて窓から入ってくるようになった長門さん。


 息苦しくなって目を開けると、爽やかな香りがして、目の前には長門さんがいた。


「んー、ハルくんっ」


 顎を撫でられながら、普通のキスを何度もする。

 その後で、ねっとりと舌が入ってくるのだ。


「ふ、普通に玄関から入ってくればいいじゃんか!」

「こっちの方が盗みに入ったみたいで、スリルあるんだよぉ」

「……発想がおかしいよ。何言ってんだよ」


 首に腕を回され、唇をくっ付けた状態で、長門さんが言った。


「アタシのおかげで、変われたでしょ」

「……まあ」

「もっと素直になりなさいよ。……んむ」


 甘いキスをされて、ボクは目を閉じる。


 キスによる心地よさはもちろん最高だ。

 けど、今は何より、早く窓を直してほしい。


 それが素直な気持ちだった。

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カノジョに”吸われる”ボク 烏目 ヒツキ @hitsuki333

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