授業中、長門さんの姿が見当たらなかった。

 休憩時間になると、リクくんがボクの席にきて、こんな事を言ってくる。


「聞いたか? 昨日、ウチのクラスの女子がよぉ。職員室の窓ぶち壊したって」


 すでに噂話が流れていた。


「マジでサイコ過ぎんだろ。何考えてんだよ」

「真面目に授業を受けているボクらには、関係ないよ」


 そうだ。

 全て、自業自得。

 長門さんが勝手に自爆しただけの話だ。


「でもさぁ。あいつだろ? 長門だろ?」

「知ってたんだ」

「いやいや。あいつ、ヤベーから。まあ、なに? 顔はメッチャ可愛いから、頼まれたら付き合うか、セフレくらいなら、考えてやってもいいけどよぉ」


 ボクは猥談が苦手だった。


「でもなぁ。あいつさ、中学の時、体育教師の頭に熱湯ぶっかけたって」

「……やり過ぎじゃない?」


 どうも、奇行は中学の時にもされていたようだ。


「俺のセフレが言ってたんだよ」

「セフレって」


 まあ、意味くらいは、分かる。


「ウチの学校?」

「おう。バレー部の子だよ。あ、内緒な。バージンじゃねえと、先生たちの態度が変わるらしいんだよ」


 昨日、ヒナ姉ちゃんが言っていた話の意味が、少しだけ分かった。

 ようは、宗教と学校の伝統の都合上、アウトな事をしたらダメっていう、決まりがあるみたいだ。


 だけど、処女だったら、宗教の都合上アウトではないから、多めに見られるってことか。

 この学校の目的というか、根っこにある教えが西洋の宗教だから、そこがデッドラインになっているのかもしれない。


「あいつ、バカだよなぁ。黙って、俺と一緒にハメハメ生活送ればいいのに」

「リクくん。ボクは、風紀委員だよ? いくら友達でも、そういった乱れは聞き逃せないよ」

「堅いこと言うなって。お前だって、これだけ可愛い子揃ってて、チンコは何も機能しないのかよ」

「な、何てこと言うんだい」


 友達がいないボクは、こんな調子のリクくんが相手なのに、強く前に出られなかった。


「とにかく、真面目に学校生活をしてよ。勉強が本分だよ」

「へいへい」


 ダルそうに肩を竦め、リクくんはボクの見ている前で、女子生徒の尻を揉みだした。

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