第2話 物真似少女は模擬戦をする
そして受験当日
勉強はほどほどに一度も着たことのなかった新品ピカピカな中学の制服を纏い暁月高校へと入って行った。
「受験者は各自、自分の受験番号が書いてある受験会場に移動っと」
私の番号は390番……受験会場は運動場だね。異能科だし体力測定でもするのかな?
そこまで余裕というほど時間が無いので駆け足で運動場に向かう。
既に沢山の人が運動場にいて、剣などの武器を持っている人もちょくちょく見かけた。
私は持ってきては無いけどすぐに取り出そうと思えば取り出せる。
「受験者の皆さんこんにちは――」
私が到着してすぐに試験官の先生が話を始めた。
試験内容は……
1、試験官との戦闘
簡単な模擬戦をする、戦闘向けじゃない異能は試験官の先生に見せたりするとのこと。
制服で戦うのか……スカートだから気をつけないと。
2、体力測定
普通に20mシャトルランをするらしい、疲れるから嫌だと思ったんだけど異能も使っていいとのこと。
3、面接&簡単なテスト
体力測定の後、休憩を取ってから面接。これが1番嫌だ。それにテストも簡単って言っても私にとってはめっちゃ難しいと思うんだよね。
ギルドメンバーが言うには面接はよほどの事がない限り落とされることはないらしい。真偽は不明。
「では早速――」
10人程の試験官が順番に受験番号を呼び始めた。
数十分程待つと私の出番が来た。
試験官は女の人だった。
「白百合綾那です。よろしくお願いします」
「白百合さんですね。異能は"物真似の瞳"……?」
そう、私の異能は"物真似の瞳"と言う名前だ。
詳しく説明すると左眼で物真似したい異能を見るとその名の通り物真似……コピーして使うことが出来る。
ただ、物真似しすぎると脳がパンクして勝手に別の物真似をわすれてしまう。
他にも欠点があってコピー出来ると言っても所詮は"物真似"だから本物の異能の劣化版になることだ。
物真似したくなくても見てしまうとコピーしてしまうので普段は左眼を髪で隠して見えなくしている。
小学生の頃は眼帯をつけていた時もあるんだけどどう見ても痛い子だし厨二病感が凄かったからやめた。
「武器は使用しますか?一応、貸し出しも可能ですが」
「あ、大丈夫です。持ってます」
私はスッと何もない場所から普通の長剣を取り出した。
「い、異空間収納?!それにミスリルの剣……」
この試験官の人が言った通り、異空間収納という異能を物真似したやつを私は使った。
本物の異空間収納は大きなトラック数台分くらいは容量があるんだけど私の場合は小さなトラック1台分くらいしか容量が無いし使うたびに魔力を消費するというなんとも微妙な感じ。
本物は魔力の消費もない。使いたい放題だね。
あと、なんかミスリルの剣でも驚いてるんだけど……?
確かにミスリル製の武器は値段が高いけど頑張れば手に入るくらいの値段だったよね?えっと……50万くらい?普通に高いか。
「ちょっと剣振って良いですか?」
「は、はい。どうぞ」
試しにブンブンと長剣を振り回してみる。最近、勉強やらでダンジョンに行ってないから久々に剣を振った。
もちろん、毎日走ったりはしてるんだけど戦闘と言う戦闘はしてない。
「準備出来ました」
「……」
剣を鞘にしまって試験官に挨拶をするがポカンと固まって反応がない。
あれ?私の声、聞こえなかった?
そういえばなんかさっきよりも他の受験者に見られている気がする。こう、ジロジロと見られるのはあんまり好きじゃないんだけどなぁ。
「あの……!」
「ハッ!すいません……では模擬戦を始めましょう」
試験官はそう言って剣を構え始める。受験者が戦いやすいように剣を使っているのか全ての試験官は剣を使用してくる。
剣は構えているけど私に向かってはこない、試験官なんだから自分から向かう事なんてないか。
仕方ない、私が攻めよう。
「行かせていただきます」
「どうぞ……」
剣を抜いて私は飛び出す。
剣と剣がぶつかりギンッという鈍い音が響く。
「お、重い……!」
今さらだけど模擬戦という割には木剣とかじゃなくて普通の剣なんだね。怪我とかはどうするんだろう……?
軽い怪我でもしたらこの先にある体力測定に響く気がする。
治癒の異能でも持っている人がいるのかな?
そんなことを考えながら剣を振る。
「く……!」
左右に動いて撹乱してみたりちょくちょくフェイントとかを混ぜて攻撃を繰り返す。
そういえば人との模擬戦も久々だなぁ。私がやりたくないってのもあるんだけど気まぐれで誘ったりしてもギルドメンバーの人たち、私との模擬戦断るんだもん。
パキンッ
「あっ……!」
「えっ……?」
無意識に試験官の武器を折ってしまった。試験官の武器、普通の鉄剣だったもんね。
ってそんなこと思ってる場合じゃない、謝らなきゃ
「すいません……武器壊しちゃいました」
「い、いえ。学校で支給される武器なので大丈夫ですよ。模擬戦はここまでにしましょう」
どうやら怒ってはいないらしい。私物じゃなくて良かった。
模擬戦も無事に終わってホッとしている。
「しかし、武器が無くなったので校舎まで取りに行かなくてはいけませんね。受験者を待たせることになりそうです」
「あ、そう言うことならこの剣あげますよ」
私はミスリルの剣を試験官に渡そうとするが受け取ってくれない。
「こ、こんな高価な武器受け取れませんよ!」
「受験者待たせてるんですよね?別に貰い物ですし受け取ってください」
そう言って無理やり渡してからその場から引いた。
いつ貰ったのかは忘れたけど貰い物なのは本当だし。いや、貰ったんじゃなくてダンジョンでのドロップ品だったかも。
試験官も私を見失ったようで仕方なく渡されたミスリルの剣で模擬戦を再開した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます