第11話 人見知り

 今回やるゲームモードは、王道の爆弾を設置する側と爆弾解除やエリアを死守する側と攻守で別れ、先に13ラウンドを先取した方が勝ちというシンプルなルールだ。全体で13ラウンドを経過すると攻守交替である。

 マッチポイントで攻守、同じラウンドに達した場合、攻守を1ラウンドずつ入れ替えながら戦い、先に2ラウンド先行した方の勝ちとなる。

 俺自身、普段もこのゲームモードでプレイしている為、問題は無い。そもそもこのゲームで、他のモードをプレイしている人の方が珍しいのではないか?


 「定番のゲームモードでやりますが、大丈夫っすか?駄目なら全然他のモードでも大丈夫ですよ?」


 「ユリは、どのモードでも大丈夫ですぅ。」


 「そうですね、俺も普段はこのゲームモードでプレイしているので大丈夫です!後、奈落と呼んで貰って大丈夫ですよ。」


 「了解。じゃあ始めますか!」



 その後は、和葉さんから、『普段の配信ではどんなことをやっているのか』や『最近ハマっていること』など、無難な質問を受けた。

 ユリさんは普段の配信では、視聴者からの恋愛相談を受けたり、歌配信をしたりなどを中心にやっているのだとか。

 俺も流れに任せて『雑談配信を中心にやっている』と説明したが、インパクトが足りなかったかもしれない。めちゃくちゃ噛んだし・・。人見知りのせいかな。


 それでも、和葉さんのおかげで、会話をスムーズに進展させることが出来ている。

 和葉さんの最古参オタクとして言わせてもらうが、実は和葉さんもデビュー当初から数年間は人見知りが激しく、コラボなどでも上手く話すことが出来なかった。

 特に、切り抜き動画にもなっている、マモルカートでの伝説回がある。

 マモルカートとは、スーパーマモルブラザーズというゲームに登場するキャラクター達で、色々なコースを様々な乗り物に乗ってレースをするゲームである。

 事が起こってしまったのは、このゲームが出てから間もない時だ。



 最初、和葉さんもあまり詳しい話を聞いていないままコラボ配信が始まった。いつも一緒にゲームをしている協さんからは、『あまり人は集まらないかもしれないから気楽に来て良いよ?」と聞いていたはずだったのだが、実際には、一緒に出来る人数の上限一杯まで集まり、そのほとんどが会話もしたことが無かった人ばかりだったのだ。

 何とか会話に混ざろうと頑張ってはみたものの、上手く会話に入ることが出来ず、途中に協さんからのパスがあったのだが、それも逃してしまった。結局、約3時間の間に数回程度しか上手く会話出来ず、ほとんどの時間、ミュートをしたまま、視聴者との『いかに上手く会話に入るか』という話し合いで終わってしまった。

 一緒に見ていた視聴者も、最初のうちは〈早く会話に参加しなよww〉〈声小さすぎて聞こえて無くね?ww〉などのコメントが多かったが、配信が進んでいくごとに、〈頑張れ!勇気を出すんだ!〉とか〈よし!今少しだけ会話に混ざれたな‼〉のようなコメントが増えていき、最終的には〈よく頑張った〉コメントで覆われた配信回があった。

 それからも所々で人見知りでコミュニケーションがうまく出来ないことがあったが、最近ではほとんど見なくなった。

 そういう事でも俺は尊敬というか、羨ましいのかもしれない。 


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