第2冊「邯鄲のあゆみ」
第2冊「邯鄲のあゆみ」①
【邯鄲の歩(かんたんのあゆみ)】
自分の本文を忘れて他人を真似る者は、両方とも失うことのたとえ。
【屋上架屋(おくじょうかおく)】
屋根の上にまた屋根を架ける意から、無意味な重複、新味のないこと、独創性のないことのたとえ。
「不快ね」
私立
「不快よ」
その小説は、
「不快だわ」
もう一人の客がいたことにぼくが気付いたのは、その時であった。ぼくは思わず飛びのいた。書店にぼく以外の人間が、まるで突然出現したように思えたからである。その人は女性で、制服を着ていて、端正な顔立ちをしていた。化粧っ気がなくとも肌と髪の毛が綺麗で――いや、あまり描写すると条例に引っかかるのでこの辺りにしておこう。彼女はじい、とぼくの方を見ていた。人に見られるのはあまり得意ではない。思わず目を逸らしたけれど、彼女の視線はずっとぼくの瞳孔の奥を捉えていた。
そして――こう続けたのだった。
「不快」
(続)
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます