レーフェ編 第14話 酒場

 そう話はまとまって俺たちはその路地をそのまま抜けた。肩と背中が痛むが、連戦はさすがにないだろうし、寝れば治るから大丈夫だろう。

 路地を抜けた先は路地に入る前の大通りよりだいぶ大きな通りにでた。国自体の面積はそこまで広くないが大都市なだけあってかなり栄えている。


「なぁ、俺たちはどこに向かってんだ?」


「ん?忘れたの?」


「おう。なんか言ってたっけか」


「冒険者になるんでしょ?そのための手続きをしに行くの」


「あぁはいはいそうだったわ。行くぞ。案内してくれ」


「もう……そんなマップ見てただけだからあんまり自信ないからね」


 そう言ってミシアが先を歩き俺はその後ろをついていくことになった。

 少し歩くとすぐに大きないかにも酒場って感じの場所についた。酒……。


 ミシアは躊躇いもせずにずかずかと扉を開けて入っていく。

 扉はカフェみたいな感じで「からんからん」と音を立てる。


 中は昼なのにも関わらずたくさんの人が男女関係なくジョッキで酒を飲んで机の上には焼肉や揚げ物がたくさん置かれている。

 まぁ、冒険者ってこんな感じか。


 ミシアは少し周りを見ながら奥のカウンターに向かっていく。ミシアもここは初めて物珍しいのか。


「お姉さん。私たち冒険者になりたいんですけど、なれますか?」


「新規申請ですね。了解しました。ではこちらの部屋にお入りください」


 やさしそうな俺の嫌いなタイプの女が少し横の方にある扉を開け、俺たちを案内させる。

 

「ではこれから別の者が担当しますので」


 と言い残して部屋を出る。

 俺たちは少しソワソワしながら一分もしないぐらい待っているとさっきの若い女よりかは少し歳をとった女が出てきた。


「新規申請のお二人ですよね。では、これからはわたくしがお二人を担当いたしますのでよろしくお願いします」


 矢継ぎ早に挨拶をしてくる。なんだ、こいつ。保険会社か。


「では、まずお名前と年齢を」


「コウシ・ヤマガミ。歳は十七」

「私はミシア・カルミル。二十……二歳です……」


「はい、わかりました。これで登録自体は完了です。これから諸々のことを説明いたしますがよろしいですか?」


「はーい」


「まず冒険者というものは後ほどお渡しする証明書があればどの地域でも活動可能ですので、ご自由に冒険をしてください。報酬は依頼を受けた場所に報告をすることでその場でお渡し致しますが諸事情等で別の場所にいる場合は少し遅れてしまいますが受け取ることは可能です。その時もカウンターにいる係員に仰ってくれれば対応しますので。依頼は酒場にある掲示板に貼られている紙に書かれている番号を係員に言ってもらうことで受託することができます。他の方も閲覧するので紙は剥がさないでください。張り紙には適正ランクも記載されているのでそちらも参考にしてください。冒険者同士の揉め事はこちらでは対応できませんので自己責任でお願いします」

「他に何かありますか?」


「うーん、特にないかな」

「そっすね」


「了解です。では」

 

 と言いかけていたところで閉まっていた扉が勢いよく開く。


「おいレリア!お前の後輩全然仕事出来ねぇじゃねえか。俺は素材の鑑定をしろっつってんのに全然しねぇんだよ。お前ならやってくれるよな?お前は初心者への仕事じゃなく俺たちのために仕事しろよ」


 と言って強面でいかにも強そうな人が目の前のスタッフを恐喝して、しまいには俺たちのことを睨んでくる。まぁさすがに勝てないだろうしここで喧嘩してもいいことがない。横を見るとミシアは歯を食いしばって我慢していた。


「あら、そうですか?きちんと教育したはずなんですけどね。すみませんね、コウシさん、ミシアさん。後ほど証明書をお渡ししますので酒場の方にいてくださいね。今から向かいますので」


 スタッフはうまく俺たちと男への対応の方向をしっかり分けていてベテランなんだなと思ってしまった。古株なのだろうか。


 スタッフが部屋を出て男になぜか睨まれながら激しく扉を閉められた。


「俺たちもいくか」

「うん……そうだね」


 俺たちは扉を開けなんとなく気になってカウンターの方を見て男が持ってきた受け取られなかった素材を見るとそこには血がまだぼたぼたと垂れている完全に人間の生首があった。さっき俺たちが殺した男は生気がない感じだったが今目先にあるのは美人な若い女の人だ。髪の毛も綺麗に整えられていてよく手入れしていることがわかるだけ気持ちが悪い。

 

「なんでだよ!テメェも受けとんねぇのかよ!」


 と、男は激昂して……剣を取り出し始めた。これはどうなんだ?やばい?

 職員はもっと強いとか……いや、そこまで怯えている様子はないが余裕な感じもない。体に武器を仕込ませている様子もないし、って見てたらどんどん剣が近づいていっている。脅しの速度だがこの人は若い女性を殺した実績がある。全然やりかねない。

 周りの冒険者は気にせず酒を飲んでる人が半分行かないぐらいで、見ながら俺と同じようにどよめいてる人がそれ以外って感じだ。でも誰も止める雰囲気がない。まさか、この人より強い人がいないのだろうか。

 俺らは考えずとも勝てないからさすがに行かない……が……「精霊の風!大斬!!」


「ミシア!」


 ミシアはさっきの男をやったように一瞬で間合いを詰めてスキルを使うがさっきとは違って首を狙わず加減している。躊躇しているのだろうか。


「瞬影斬」


 その不意の一撃に対して振り向きもせずに呟く。

 俺はミシアの危機に思考する前に


「ミシア!星の一撃!!」


 俺はミシアみたいに瞬間移動はできない。できるだけ早く動いているが、男の剣には間に合わない……!


「不可侵への収監」

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