タヌキ研究、編
第90話
とことこ、ぽこぽこと町を歩く吾輩は、機嫌がいい。
町が平和であるからな、平和は良いことだ。
「あらタヌちゃん、相変わらず毛並みが素敵ね」
「御機嫌好う、ご婦人。ふむ、ありがとう」
すっかり顔馴染みとなった露天商から、見慣れぬ木の実をもらったことで、季節の移り変わりを実感する。
結局今になっても、このセヴィという町が長野のどの辺であるのか不明ではあるが、吾輩としても積極的に調べているということもない。知ってどうなるという問題でもあるしな。
そうそう、平和だ平穏だといっても変化ならしている。長閑なこの町も近頃は人間どもの往来が増えている様子だ。しかもその理由というのが、吾輩が精霊たちに頼んで用意してもらったあの温泉だというのだから、気も良くなるというもの。
良いものが良いと認められるというのは、見ていて気分の良いものということであるな。
「ふむ……そうだな」
ふと足を止めて考えを巡らせる。
いやなに、大したことではないのだが……、思い出すと温泉につかりたい気分になってきたな。
よし、思い立ったが吉日ともいうし、さっそく向かおうではないか。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます