挿話 セヴィ騎士団によるエルダートレント討伐の報告書
第65話
――セヴィ領領主ジャスパー・セヴィ・エバンズへ提出された報告書の一部――
討伐対象:エルダートレント(とても強い魔獣でした)
結果:損害軽微にて完了
以上
団長シエナ記
……
副団長ゲイルが補足を記入いたします。
討伐対象は斥候の情報通りに巨大な古木のような魔獣エルダートレントでありました。
エルダートレントの詳細については事前に斥候隊がまとめた資料をご参照ください。
討伐は完了しましたが、素材の回収は枝の欠片と大量の葉のみでした。帰還後にバルドゥルに見てもらいましたが、どちらも価値はないとのことでしたので、エバンズ様による討伐確認が済みましたら騎士団の倉庫へと全て収納(念のための措置です)予定としております。
騎士団の損害は怪我人が五名でしたが、いずれも既に治療が完了しております。実質的な損害は、破損した武器防具(別資料にて後日報告予定です)と消費した治療薬のみでありました。
以下は非常に突飛な内容ですが、主神ミティア様に誓って真実であると申し上げておきます。
団長から口頭での報告があったと思いますが、協力者が一名随行しました。許可は団長の現地判断によるものです。
肩までの茶色い髪、黒い瞳、中性的な顔、異国風の出で立ち。以上が協力者の特徴ですが、これらから自分が受けた印象については主観的にならざるを得ませんので省略します。ただし、神々の手によるとしか思えない見事な剣を携えていたということは申し添えておきます。
損害少なく討伐が成ったのは協力者の功績であったことは間違いありません。自分も危うい場面を助けられましたので、個人的な礼を私費から渡すべく探しているのですが、現在までその行方は不明となっております。
精霊術と剣術をにわかに信じられないほどの練度で操っていた協力者ですが、エルダートレントへ止めを刺した攻撃は群を抜いて強力なもので、それが素材の件の理由ともなっています。
その攻撃についても主観的になりそうなので、特徴の列記に留めておきます。
朱色の炎のようなものを剣にまとわせて斬りかかる、朱色にまとわりつかれたエルダートレントがのたうちながら炭化、炭化したものがさらに灰となって崩壊(その様を“まるで泥沼に沈むようだ”と表現する団員が特筆して多かったことも記しておきます)。
騎士としてあるまじき動揺から読みにくい内容となってしまっていましたら、申し訳ございません。詳細についてさらなる補足が必要であれば、自分か団長が直接口頭での再報告をさせていただければ幸いです。
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