第19話
「良い御身分だな、ゲイルよ」
「はっ!? お嬢様のタヌキ!」
後ろから声を掛けた吾輩に対して、なかなかにふてぶてしい態度ではあるが……、先ほどの
「吾輩のおかげで倒せた魔獣の話をしておったのであろう?」
「ははは、そうだな、可愛らしい君が後ろで応援していてくれたおかげだったぞ、あれは!」
応援……? 我が魔力による力添えのことであるよな? 吾輩の偉大な力による恩恵を表すには不十分な言葉に聞こえたが……、まあ良いか。吾輩は寛大だからな。
「感謝するがいい」
とはいえ、舐められすぎるのはよろしくない。我が深謀遠慮の宿る怜悧な視線をじっと向けることで釘をさしておこう。ふふふ……、少しばかり怖がらせてしまうやもしれぬな……。
「そ、そんなつぶらな瞳をしても……、自分はお嬢様のようには甘やかさないぞ! ペットのしつけは……大事…………」
「ゲイル副団長?」
ゲイルが聞き取りづらい声でもごもごと何やら言いながら、ついには無言になって何かを差し出してくる。
……ふむ? これは干したイチジクか?
「うまそうだな、もらっておこう。……はぐっ、もぐっ」
甘露。これは良い貢物だ。この男の若干失礼な態度は目こぼししてやるとしよう。
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