新たな住処、編
第13話
第二の命を得てどこか知らない場所へと辿り着いた吾輩であるが、やや流されるままに行動してしまった結果、新たな住処を得ていた。
セヴィというのがこの町の名らしい。いわゆる盆地という地形にあるから、やはり長野のどこかだと思われる。
「タヌキさん、ごはんだよー」
「御機嫌好う、エリス。……ふむ、今日もうまそうだ」
案内される内に聞いたが、エリスの父はあの武者たち――正確には騎士と呼称するらしいが――の主であるらしい。つまりエリスはこの町の姫であったということであり、その姫に毎日こうして三食届けられる吾輩の扱いというのは、愚かな人間にしてはとても適切なものだといえた。
「はむっ、あぐっ、もぐもぐ」
さらにいえば吾輩が寝床にしているこの場所も素晴らしい。エリスが住む屋敷の敷地内にあって、ふかふかの芝の上で爽やかな風を常に感じられるここは、高貴な吾輩に相応しい居場所といえた。一応は居候という立場になるからして、息苦しそうな壁と屋根に覆われた中で過ごしているエリスに申し訳なく感じる程だ。
一度、寝場所をたまになら貸しても構わないと申し出た時にはエリスも「おにわでいっしょにねるー」と大喜びしたものだが……、“爺”なる人間が目を剥いて制止してしまった。まあ、あれは歳をとった人間だからな、エリスほどの賢さを期待する方が無茶というものだ。
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