第25話 地位6

「それにしても、何度聞いても不思議ですね」


「何がでしょう?」


「脱出方法です。良家の姫君がを探して外に出るなど普通では考えられません」

 

 確かに普通の令嬢なら絶対考えないだろう。でもね、あの建物の構造って実家によく似ていたのよね。だからこそ脱出できたとも言える。

 

「古い建物でしたので……」

 

「建物の構造で抜け道があると分かるものですか?」

 

「我が家にも同じような建物がありまして……そこは物置となっているんですが、子供の頃にそこでよく遊んでいたんです。秘密基地のような感覚でしょうか?他の建物とは違っていましたし。そこで偶然抜け道を見つけたことがあったので、もしかしたらと……案の定出られました」


 私がそういうと彼が吹き出した。……あれ?おかしいこと言ったかな。

 

「あはは!なるほど、そうでしたか!」


 え?笑うところなんてあった?

 

「申し訳ありません。あまりにもだったので思わず……」


 可愛いって……いや、子供が秘密基地で遊んでいてそれをヒントにしたんだから確かに可愛らしいかも?

 

「ですが、今回の一件で長官が何故貴女に興味を持ったか理解できました。まさかそのような理由で外に出られるとは……。予想外です。それに天も味方につけていらっしゃる。あの状況下で運よく味方側と合流できるなど奇跡です。その上、皇帝陛下まで貴女を守ろうと動かれた。これは通常では起こりえないものです。これこそと言っても過言ではないでしょう。他の者では到底かないません」

 

「そうですか……」

 

 その言葉が引っ掛かりを覚えた。彼は一体何を考えているんだろう。

 

「その幸運を大事になさってください」

 

「……え?」


 どういう意味だろう。

 彼はそれだけを言うと一礼して、部屋を出て行った。

 なんとも言い表せない気持ちになった。

 彼は本当に上司の謝罪に訪れただけなのだろうか?

 本当はもっと違う意味合いがあるのでは?

 もしかすると私は、彼に最初から試されていたような気がする。でも何故?彼は一体何がしたいのだろう。……まぁ、考えるだけ無駄かもしれない。私には理解できないナニカがあるのだろう。そう思うことにしてお茶を一口飲む。

 

「……美味しい……」


 茶はとても香り高くてとてもおいしかった。

 姉上からの茶葉。正確には皇帝から贈られた茶葉だけど。疲れた心身にとても良く効く。癒される。


 今後の荒波を予感するかのような一抹の不安を感じつつ、この一時だけは心を休めた。



 


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