シンのギター3


週末のある日シンと二人で電車に乗って出かけた。


「ママと父さんはデートしてくるからね」


「はーい。いってらっしゃーい」 花が見送ってくれた。


「楽器屋さんって結構開店時間が遅いんやな」


「そうやな。みんな夜型やからな」


「そう言うことか?」


「たぶんな。夕方からギター弾いたりして盛り上がって夜中中お酒飲んで騒いでみたいな感じかな」


「コハルもそうやったんかな」


「私は違うよ。彼氏がいてるときは別としてちゃんと家に帰ってたしな」


「そうなんや。俺もあんまり夜更かしはしてないな」


「シンは無理やろうな。家に帰ってきた瞬間に眠そうな顔してるからな」


「そうやな。真面目やからな」


「うん。きっとそうだね」


「コハル、何やら引っ掛かる言い方やけど」


「うん。私はシンと出会う前の事をあんまり知らんけど元カノへの一途さを考えるとぜんぜん遊んでないような気がする。 その辺りはもったいないような気もするしスレてないって言うのが男の人にも言えるのかどうかわからんけどいいのかなと思う」


「うん。まあ幽霊よりも人が怖いと思うからな。必要以上に人にかかわりたくはないねん」


「そうなんや。私は幽霊の方が怖いで」


「そうか。今度夜中のお墓に行ってみるか?」


「絶対に行きません」


「そうか。わざわざ行くところやないしな。俺も行かへんわ」


「うん。さあ梅田につくで」


「うん。しかしすごい人やな。何してるんやろ。どこに行くんやろ」


「シン。私らもそのすごい人混みを構成してるねんで。みんなおんなじこと思ってるかもよ」


「そうやな。そうかもしれん」


「さあシン、降りるで。行こう」


「うん」


「シン今日帰りやねんけどJRから帰りたいねん。お母さんからおまんじゅうの買い物頼まれてんねん」


「そうか。ええで」


「うん、ありがとう」


「ほんでコハルは道わかるんかな」


「大体わかるよ。だから任せといて」


「うん、ありがとう」


「まずはギブソン楽器やな」


「そうやな。まだちょっと時間が早いねん。シンあれが阪神百貨店やで」


「おおっ、あれがそうかって、上の方に阪神電車とか書いてるからすぐにわかるな」


「そうやな。あの地下にイカ焼きがあるんやで」


「そうか。帰りに買うわけやな」


「そうやで。しかし暑いな。握ってる手が汗ばんでるで」


「アツアツの二人やからな。仕方が無いのや」


「うん。シン、水分取ろか。飲みたくないかもしれんけどちょこちょこ飲むのがええ見たいやで」


「うん。なんか買って半分こしよう」「うん。間接チューやで」笑


「もうどぎついのを何度も経験してるけど何か新鮮な感じがするな」


「うん。その気持ちが大事なのよね」


「そうやな。さあそろそろいこか」


ギブソン楽器の前に着いた。


ギブソン楽器よりお知らせ。


改装のため九月一日まで閉店いたします。


仮店舗は難波の方にありますのでよろしければ足をお運びください。


「なんやてー」


「まあ仕方が無いな」


「ミナミまでは行かへんで」


「まあ行ってもええけど取りあえず近い所を先に回ろうや」


「うん。次はマーティン楽器やな」


「ここから十分くらい歩かなあかん」


「うん。がんばるで」


「シン、今あの女の人見てたやろ」


「いっ、いや見てないで」


「あんな大胆に胸元開けてあんな短いスカート履いてたら誰でも見るっちゅうねん」


「コハルも見たんか」


「見た見た。どんな顔してるんやと思ったらなかなかべっぴんさんや」


「コハルには負けるけどな」


「そうか。ほんまかな? シンも他の女に目が行くというのがわかったさかいな」


「ごめん。でももしコハルがあんな格好してたら俺ひっくり返ると思う」


「確かにあんな格好はようせえへんわ」


「そうやろ。コハルが壊れたらするのかもしれんけどな」


「そうやな。シンに振られたらそうなるかもな」


「そんなことは絶対にないからな」


「シン判ってるよー!」


「うん」


「よっしゃー。今晩シンをしばこう」


「ひぇぇぇぇっ。なんでやねん」笑


「楽しみなんかいな」笑


「なんでやねん。楽しそうに聞こえるんか。でへへ」


「あかん、シンが何か企んでるみたいや」


「そうやな」


「さあシン、マーティン楽器につきました」


「はい。まだ開いていないみたいやな」


「そうやな。シン、クレープが売られてるで」


「ほんまやな。久しぶりに食べよか」


「ええな。でも帰りやで」


「わかった。しかし開店前の店の前でこうやって二人て立ってるのもなんかおかしいような気もするな」


「そうかもね」


「あっ。店員さんが近づいて来た」


「いよいよオープンやな」


「おはようございます。どうぞ、いらっしゃいませ」


「おはようございます」


店内はエレキやらアコギやらウクレレにミニギターと所狭しに展示されていた。


アコギコーナーも品数があまりに多くて大小入り乱れていたために大きさの感覚がよくつかめなかった。


「コハルどれがどれやらよくわからんな」


「そうやな」


「店員さんも忙しそうにしてるしな」


「そうやな。声をかけづらい」


「そうやな。シンこれがヤマハのミニギターやで」


「小さいな。思ってたよりもかなり小さい」


「うん。これは今のギターよりも小さくなるからかえってアンバランスかもしれんな」


「そうやな。ベイビーテイラーは置いてないな」


「なさそうやな。GSMINIもない」


「リトルマーティンはあれやな。あれも小さいな」


「そうやな」


「コハルここは引き上げよう。ちょっと雰囲気がいまいちやわ」


「そうやな。出よか」


「うん」


店の外に出た。




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