シンのギター2
あるときシンが言った。
「コハル。ギター買うてほしいねん。コハルに教わってそこそこ弾ける感じになって来たけどこのギターでは何か限界を感じるようになって来ている。
いい音を出すためにはコハルのギターくらいの大きさがいいのはわかるんやけど
俺が持つと体の小さな小学生がランドセルを背負った感じになってしまうんや。
小学生ならかわいいでええねんけど俺はかわいくはないからな。笑
大きさはこの中華製のギターくらいがちょうどええと思うけどそんなギターで音の良いのってあるんやろか?」
「私はシンがかわいいねんけど」
「それは俺とお前の間だけの事やから。うれしいけどよそで言うたらあかんのやで」
「うん。 言わへん」
チュッ。
「ほんで俺の体に合うギターの話やで」
「確かあったと思うよ。ちょっとネットで見てみたら?」
「うん」
シンは早速調べ始めた。
「候補はヤマハとタイラー?テイラー?あとマーチンやな。でも結構いい値段するんやな。でもこれ実際の大きさを見て見らんとわからんなぁ」
「そうやな。実際に見てみらんとあかんな」
「うん」
シン曰く「もっと曲を輝かせてやりたい。コハルのギターくらいは無理にしても近いくらいの音は出したいな。
同じギターでもこんなに音が変わるとなんだか曲がかわいそうになってしまうんや」
「シン。じゃあ買うか」
「うん。買ってください」
「シン。いつか買ってあげようと思ってたよ」
「ありがとう。じゃあ一度楽器屋さんに行ってみるわ」
「じっくりと見てみたらええ」
「うん。ヤマハの小さなギターとリトルマーティンとテイラーの小さなギターやな。これを比べてみたい」
「うん。ええ所と違うやろか」
「そうか、そない言ってくれたら安心や」
会社の帰りにイオンにある楽器店に寄ってみた。
しかしお目当てのギターがなかった。
「コハル、イオンにはなかったわ」
「そうなんや。新品の楽器屋さんはなかなか自由に触らせてもらわれへんから中古屋さんのほうがええかもしれんけど」
「そうなんや。ちょっとネットで検索してみるわ」
梅田にいくつか楽器店がある。駅からそんなに離れていない。
「コハル、今度の休みに買いに行こうと思う。ついて来てくれる?」
「うん。行こう」
「シン、梅田に行ったら阪神百貨店のイカ焼き食べよな」
「知らんけど。有名なん?」
「・・・」
「コハル絶句してるけど何々? 知らんとおかしいの? なぁ、何とか言うてくれや」
「シン、ほんまに知らんのか?」
「知らん。大阪駅と梅田が同じ場所やって最近知った位やしそもそもそんな人の多い所へは行かへんやん」
「そうやったか。シンらしいといえばシンらしい」
「なんやぁ。あかんのか!阪神のイカ焼きを知らん俺はもうあかんのかぁ!」笑
「あかん訳やないねんけどな。色々と物知りなシンがそんなことを知らんやなんてある意味驚いたんや」
「そうなんや。なんで驚かれるのかわからんけどな。そもそも俺和歌山やしな」
「シン、そう言うことやないねん。イカ焼きは大阪のソウルフードやねん」
「そうなんや。まあええやん。今知ったし。今度行ったら食べようや。夜店のイカ焼きとおんなじやろ」
「シン、それが違うねん」
「違うって?」
「うん、阪神百貨店のイカ焼きは粉もんやねん」
「そうなんや。百貨店の中がイカ焼きの臭いで充満しているんやと思ってたわ。ちがうんや」
「違う。私は今、前人未到のジャングルで初めて人を見つけたようなそんな気持ちになってるねん」
「コハル・・・。それ前にもなんかで言われたな。でも仕方が無い。知らんもんは知らんのやから」
「シンが大阪に住んでもう十五年くらいになるのやろ。そんな話題が全くなかったんやな」
「そうやな」
「シン、しょんぼりしてるな」
「うん。俺遊んでないからな。だから楽しむことに関しての知識が無いのやな」
「遊んでる遊んでないも関係ないような気がするで。大阪の常識やからな」
「今日俺はコハルに詰められている気がする。最後にはどうなるんやろ。きっと手足を縛られて転がされるんやろな」
「それ良いな。そうしよう」
「嫌です」
「そうか嫌か。なら今から私をかわいがってもらおうか」
「なっ、なんやて!なんでそんな展開になるんや?」
「だってぇ、シン昨日はよ寝ちゃったしぃー。わたしわぁ、ちょっともんもんとしちゃったんだよね。いぇ」
「なんやコハルラップか? いぇ」
「おおぅいぇ!はよしてシン!はよしてシン!いぇ!」
「なんやようわからんけど、いぇ!コハル、いぇ!パンツを下げるで、いぇ」
「シン、それはちょっと、いぇ!おおぅいぇ! もうわけわからんわ、いぇ!」
「コハル、あいしてるぅいぇ」
「私もやで、いぇ」
チュッ。
「長かったわ」
「そうやな」笑
「ラップ禁止や」
「うん」
「俺らの下の世代やで」
「そうやな、いぇ」
「もうええっちゅうねん」笑
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます