第57話

 翌日、午前はマリーと昨日のことやマーシャのことについて話していた。

 そして午後にユストでトロッコの進捗を見に行くことになった。


「あっマーシャだ、今日も来てくれたんだ!」


「メアリーちゃん久しぶり! 私は魔王様とずっと一緒にいるんだ!」


 久し振りって、昨日の夕方まで一緒にいたじゃないか。

 そんなセルフ突っ込みを入れつつも、進捗を見て驚いた。


「一夜でここまでできたのか?」


「メアリーのこと舐めてもらっちゃ困る。本気を出せばこのくらいできるもん」


「そういえばローズはどうしたんだ? てっきり二人で一緒にいるのかと思っていたが」


「ああ、ローズ姉さまならあっちだよ」


 メアリーの指さしていた先には重い荷物を運んでいる彼女の姿があった。

 いやいや、和服きながら重い荷物を運んですごい大変そうだ。


「資材運びを手伝っていたのか。マーシャ、俺たちもやるぞ」


「もちろんです魔王様!」


 急いでローズのもとへ向かう。


「魔王様いつの間にいらしていたんですか?! すいません挨拶が遅れてしまって」


「挨拶なんてしなくていい。ちょっとそれ貸してくれ」


 ローズが重たそうに運んでいたレールを試しにもってみる。

 さぞ重いのだろうと思ったのだが、予想より運びやすくて拍子抜けだ。


「魔王様って体力すごいあるんですね」


「レベルが高いから勝手に上がっただけだよ」


「今度ゆっくり触ってみてもいいですか? とっても気になります」


「すまないがあとにしてくれ。万が一持っているレールがぶつかったりデモしたら大けがになってしまう」


「わかりました魔王様、それでは終わったら必ずですからね!」


 その後何回か往復したらすべての資材を運び終わっていたようだった。

 意外と早く終わったようで安心した。


「魔王様ってどんだけ強いんだよ……。町のいかつい兄さん集めなくてよかったじゃないか」


「本当ですねメアリー、それじゃあ魔王様筋肉を……」


「ここに運んで終わりじゃないだろう? レールを設置して試運転が成功してから終わりにしよう」


「でも今からやって間に合うかな?」


「それは気合と根性で何とかするしかないだろ」


「荷物はトロッコに乗せて運びましょう、それじゃあ持ってきますね!」


 そういえばまだトロッコのことを見ていなかったな。

 雨風を防げるような設計になっているといいのだが……。

 どんなものか楽しみにしていたが、斜め上の完成度だった。


「まてまて、これはもうトロッコじゃないだろ」


 動く建物と呼べそうなくらい頑丈そうな車両が出てきた。

 窓も屋根もおまけに座れるソファーまでついているではないか。


「どうだ、結構自信作なんだけど」


「一日でこんなにすごいものを作れるとは思わなかった」


「そんなに喜んでくれたか、それじゃあ荷物を運ぶほうも見てみて」


「こちらは窓とか一切ないが、すごい頑丈そうだな」


「徹夜したから疲れちゃった」


「あらあら、メアリー魔王様に褒めてもらいたくて頑張ってましたもんね」


「ありがとうなメアリー、やっぱりお前に頼んで正解だったよ」


「そこまで言ってもらえるとは思わなかった! うれしい!」


 メアリーの頭をなでていると、ふとマーシャがいないことに気づいた。

 どこに行ったんだ?


「魔王様、これなんでしょうか?」


「発着場じゃないか。道とは結構離れてるな」


「それはわざとなんです。発着場の前にお店を立てられるスペースを作ろうと思いまして」


「いい考えだな、利用者も多いし成功しそうじゃないか」


「ありがとうございます魔王様!」


「では、あとはレールとシュリア側の発着場の設置で終わりなんだな?」


「明日の朝までには終わらせたいけど、どれくらい時間かかるかわからないんだよな」


「俺が手伝うから夜までには終わらせるぞ!」


「夜までってそんな無茶な」


「頑張ればなんとかなるだろ。誰かやり方教えてくれないか?」


 一日でも早く完成させ、収入を得たい。

 そしてわずかではあるかもしれないがシュリア村の防衛を強化したい。

 すべてはあの村を守るため……。


 俺が直接頑張ったからか、作業員に現金をプレゼントしたからかはわからないが、作業は予定よりも大幅に前倒しで完了した。


「魔王様の言った通りになりましたね」


「これもみんなが頑張ってくれたおかげだ。それじゃああとは試運転だけか」


「うん。今回はメアリーが操作するけど、これからはほかの人にもやってもらえるようにして、たくさん走らせられるようにもしたいと思ってる」


「それは楽しみだな。あとはこの村の反対方向までレールを伸ばしてほしいんだが」


「任せてください魔王様!」


「メアリー、そろそろ帰って寝る時間ですよ」


「本当だ! 早く帰らなきゃ。それじゃあ出発!!」


 俺たち四人と作業員を乗せたトロッコが走り始めた。


「魔王様見てください、反対側にもう一つ線路が見えます! それにすごく早いです!」


「歩いていた時とは比べ物にならないな。それにもっと便を増やすことも計画してのことだったのか」


「メアリーのこともっと褒めてくれてもいいんだからね!」


「お客を乗せて走れるようになったらもっと褒めてやるよ」


「そうだ魔王様、このトロッコのことなのですが名称を変えませんか? 鉄の道を走るから鉄道とか……」


「その名前がいいな。あとは発着場も言いずらいな」


「それじゃあ駅という名前にしておきます」


「ローズは話が早くて助かるよ」


「それじゃあ魔王様、筋肉を……」


「忘れてた、そんな約束してたな。いいぞ、好きなだけ触りなさい」


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