第26話 魔術神?


 家具屋の数人が運ぶのを手伝ってくれたおかげで往復する手間が省けた。

 手伝ってくれた人たちにもお礼を渡さないとな。


「手伝ってくれてありがとうな。少なくて申し訳ないがこれでおいしいものでも食べなさい」


 財布の中から万札を何枚かとり、全員に渡す。


「本日はありがとうございました、またお越しくださいませ」


 そう言ってみんな帰っていった。


「魔王様すごい大金を渡していましたね」


「あの荷物結構重そうだったからな、それにみんなが喜んでくれてたしいいだろう」


「魔王ってなんでそんなにお金持ってるのよ。もしかして村の倉庫から盗んでるの?」


「俺がそんなことするわけないだろ、ちょっと難易度の高いクエストをクリアしたら結構な報酬がもらえてな。それを渡しただけだ」


「そういえばサンドワダンジョンを攻略してたわね。私も挑んだことがあったけど、途中からモンスターが強くてすぐにあきらめちゃったな」


「魔王様はすごいんですよ、人間の倍くらい大きい魔物相手に傷一つ追わなかったんです!」


「傷一つ負わないなんてどんだけ強いのよ」


「別にあいつが弱かっただけだ。俺としてはもうちょっと歯ごたえがある敵がよかったんだけどな」


「もしかしたら魔術神様と同じくらい強いのかもしれないわね」


「そういえばそんな奴もいたな。どれくらい強いんだ?」


「レベルは魔王様と同じ99でカンストしてる。ただ魔術をすべて使えるから魔王様のほうが少し不利かもしれないわ」


「そんなに魔術とやらは強いのか?」


「レベル20の一流魔術はレベル60の物理攻撃より強いと言われてるわ。ただ一流魔術を使える人はほとんどいないんだけどね」


「それじゃあその魔術神はレベル297ほどはあるってことか。なかなかに強そうな相手じゃないか」


 そこまで強い相手なら興味が出てくる。

 ただそんな理由で相手のことを攻撃できるわけもないんだが。

 大体俺は平和をもたらしたいんだ、強い奴と戦いたいわけじゃない……よな?


「魔王様さっきから難しい顔しているけどどうしたんですか」


「そんなに難しい顔していたか、いやマーシャがかわいいと考えてたらついな」


「ちょっとまってよ、私に対しては何かないわけ! ちょっとくらい私のこともほめてくれたっていいと思うけど」


「もちろんマリーもかわいいと思うぞ。ただ」


「ただ何よ。私のことが嫌いとでも言いたいの?」


「もうちょっと丸い正確ならもっとかわいく見えると思うんだがな」


「丸くってしょうがないな。魔王、あたしのこと好き?」


 マリーが上目遣いで見つめてくる。

 いつもからは想像できない彼女の姿に思わず固唾を飲む。

 しかも服が大きいからか胸元が見えるし……。

 駄目だ動いて疲れたからか、眠くなってきた。


「答えてくれるまでやめないよ?」


「うわああ、マリーちゃんが魔王様のこと食べようとしてる」


「大丈夫だマーシャ、マリーのことだしすぐに飽きるはずだ」


「そんなことないよ。魔王が言ってくれるまでやめない」


 彼女の顔がどんどんと近づいてくる。

 こんな理由でキスされるとかたまったものじゃない。


「かわいいし好きだよマリー」


 彼女の目を見つめてそう言う。

 顔が熱い、顔だけじゃなくて全身あつい。


「ま、まあ当たり前よね。こんなかわいいあたしと寝れて魔王は幸せね」


「その言い方だと誤解を生む、幸せなことに間違いはないが」


「マリーちゃんだけずるい、私も魔王様とチューしたい」


「してないわ!!」


「でも私だけ仲間外れみたい。魔王様わたしともしよ」


「どうせなら二人で一緒にしましょうか」


 いつも仲がいいと思っていたが、こんな時まで仲良いいのか……。


「魔王様そこから動いちゃだめだからね」


「そうよ、私たちのことちゃんと受け止めてね」


 二人に迫られて壁まで追いやられた。

 今回だけで済んだらよいが、もしかしたら次からもっと過激なことをされるかもしれない。


「やめてくれ、俺たちはまだそんな関係じゃないはずだ!!」


「魔王様起きてください」


「こんなところで寝るなんて風邪ひいちゃうわよ」


 気づけばいつもの二人に戻っていた。

 さっきのは夢だったのか、それとも現実だったのか。


「マリー、マーシャふたりのこと好きだぞ」


「魔王様両想いです寝うれしいです!」


「起きていきなり何言ってるのよ、この変態。でもありがとう」


 マリーは顔を真っ赤にした。

 どうやらさっきのことはすべて夢だったようだ、ただ彼女の気持ちにもう少し答えてあげるようにしないとな。

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