第22話 投票結果
どうやらもうすでに全員の投票は終わったらしい。
今結果を確認するためということで別室で待機しているのだが……。
「そもそも立候補者一名で投票の集計を数理身なんてあるのか、今回の選挙じゃあ無投票っていうのもできないみたいだし」
「まあまあ、待ったら待った分だけ楽しいとかよく言うじゃないですか!」
「そんなの初耳だぞ、マーシャが作った言葉なんじゃないのか」
「私そんなに頭よくないですよ」
「マーシャちゃんはポンコツ魔王よりも全然あたまいいよ!」
「マリーちゃん、魔王様のことをポンコツって言っちゃダメなんだよ。これからは村長って呼ばないと」
「いいよ二人は魔王のままで。というかようやくちゃんとした魔王に復活ということなんだがな」
二人と話していると、紙を数える音が鳴りやんだ。
そろそろ結果の通知が来るか。
結果はわかっているはずなのに、なぜか鼓動が早くなる。
「三人ともお待たせしました、お見事当選です。これからシュリア村、いえ魔王帝国領シュリアを導いてください」
ブラントが丁寧な口調でそう言って頭を下げてきた。
「そんなにかしこまらないでくれ、それに俺は村の経営に関してはわからないことだらけだ。そんなにすごい人間でもないぞ」
「ブラント様、アルマルク国に提出する独立報告書の確認をお願いしたいのですが」
「それならこちらの魔王様にお願いしなさい」
「ははっ、魔王様。アルマルク国に提出する報告書の確認をお願いします」
役人はそう言うと、封筒を差し出してきた。
中身を取り出してぱらぱらとめくってみる。
「まさか、これ全部を読めってわけじゃないだろうな」
軽く触っただけで二十数枚はある。
こんな枚数を数時間で考えられたことにも驚くが、それ以上に長ったらしい分に嫌気がさした。
「一言『アルマルク国から独立する』だけでいいんじゃないのか。そんなにかしこまらなくあっていいだろう」
「わかりました魔王様、それでは修正したのちにすぐに送りますので」
役人はそう言うと急いでほかの人たちと連絡を取り始めた。
「建国してすぐだっていうのに、いきなり戦争になりそうだな」
「戦争ってなんでそうなるのよ」
「はいはい私たちの領土をあなたに無償でプレゼントしますよ。なんて王がどこにいる。戦争にならなくとも何かしらを要求されるのは当たり前だ」
「ねえねえ魔王様、この魔王帝国ってもともとあった魔王国とどれくらい違うの?」
「そうだな、人口で言うと5パーセントほど、経済で言うと3パーセントくらいじゃないか」
「すごいちっちゃいね!」
「そりゃあ一つの大きな国と小さな村を比べているからな」
そう言って笑っていると、ユスト町のことが頭をよぎった。
すぐに自分の領土を手放さない、逆にすぐに領土を併合することも難しい。
もし今から行けばユスト町もうちの帝国のものにできるんじゃないだろうか。
今は村長になったばかりだし、これが落ち着いたころに足を運んでみるか。
「三人とも、申し訳ないが明日は空いているかね?」
「俺は大丈夫だ」
「私も魔王様と一緒!」
「まあ開けてあげなくもないけど」
「それはよかった。荷物を全部持った状態で地図のこの場所に来てくれないか、ちょっとしたプレゼントがあるんだ」
「わかった、明日から忙しくなりそうだな」
荷物を全部か。
いま住んでいるところも気に入っていたのだがな。
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