第16話 夢での再会
次は顔をよく覚えているやつらが出てきた。
「魔王って確かシュなんとか村にいるんだよな。すぐに見つけ出せるか」
「姉さんその村ってかわいい女の子いますか!」
「何しに行くのかを考てから発言しろ馬鹿者。あとリーダー、シュリア村だからな」
そう、魔王城に攻めてきた勇者三人組。
こいつらの顔は絶対に忘れない。
話を聞いている限り俺がこの村にいることがばれたみたいだな。
「それにしてもレベル99の相手にどうやって立ち向かうんですか。俺たち全員50代ですし、相手の寝込みを襲うくらいしか手なくないですか?」
「まあまあ。キャムと立てた作戦があるだろう。それをちゃんと実行できれば何とかなるさ」
「そうです、私に任せて下さい」
「ただ出発は一週間後くらいになっちまうな。それまではここでゆっくりしていようぜ」
これがいつ頃の話なのかもわからない。
しかもこれは夢の中の話だ、本当に俺の居場所がばれたのかもわからない。
……だったらなぜ知らない女性のことが夢に出てきたんだ。まさかこれは正夢というやつなのか?
「魔王様うなされてるよ」
「いや、これは楽しい夢を見ている顔だわ。だってかすかに笑っているもの」
「マリーにはばれていたか。お前たちの声が聞こえてきたからつい笑ってしまったよ」
「おはよう魔王様!」
「おおはようマーシャ、まだ夜なのか?」
「うん、もう真夜中だよ。私たちも今から眠るところだったんだ」
「そうか。なあ変なことを聞いてもいいか」
「私に応えられることなら何でもいいよ!」
「ちょっと、寝る前だからって小さい子に何聞くつもり」
「リックという名前を知っているか?」
「うん、知ってるよ。今日会ったもん」
「やっぱりあれは正夢だったのか。その人はどんな人なんだ?」
「どんな人ってお友達だよ!」
「そうだよな、変なこと聞いてごめんな」
「魔王様どうしたの、もしかしてリックと会った?」
「夢の中で二人が話しているのを見たんだよ。そのあとに勇者たちが出てきたんだ、俺のことを探していた」
俺と勇者たちとの戦いで終われば一番だ。
ただマーシャとマリーに攻撃が一切当たらないとも限らない。
下手したら人質に取られてしまうかもしれない。
「もしかしてあたしたちの心配してるのか?」
「なんでわかったんだ」
「マリーちゃん大丈夫だよ、魔王様は私が誘拐されたときにも助けてくれたもん! 相手がどんな人でも助けてくれるよ」
彼女の笑顔を見て、前にも同じことを考えていたのを思い出した。
攻撃される前に相手を全員倒せばいいんだ。
そうすれば二人の心配をしなくていい。
「ありがとうマーシャ」
「……スピィスピィ……」
「マーシャちゃん寝ちゃったね」
「そうだな、さっきまで元気にしてたのに」
「魔王、今の話なんだけど」
そうか、俺にとっては魔王はにくい存在だ。
ただマリーにとっては真逆の存在のはずだ。
「夢での話が本当なのだとしたら俺はあいつらと戦うことになる。その時にはマリーは好きなほうについていいんだぞ」
「もしかして、魔王ってこの村がアルマルク国のどんな存在かしらない?」
勇者と戦うことに抵抗があるのかと思っていたのだが、真逆の反応をされて驚いた。
そういえば勇者はアルマルク国の人間だったよな。
「今日宿屋の人にちょっとだけ聞いたよ。この村から七割くらい金奪っているんだろ」
「さすが魔王わかってるじゃん。勇者は国王から派遣されてくるからこの村でもかなりエラそうな態度だったの。そんな人たちと一緒に戦いたいと思う?」
「じゃあ俺たちと一緒にいてくれるのか」
「私だけじゃないわよ。この村の人全員があなたの味方だと思うわよ」
「そうだと嬉しいんだがな」
「本当だって、明日町で勇者について聞いてみるといいわ。あいつらのこと好きって言ってる人なんて一人もいないから」
「そんなに嫌われてるのか」
「不法侵入された村人だって結構いるのよ」
「それは嫌われて当然だな」
「うんうん、だからそんなに心配しなくていいのよ。それに……」
「それにどうした?」
「私の裸初めて見られちゃったんだもん。そう簡単に離れられないでしょ」
「俺はマリーの裸を見た覚えはないぞ。まあ下着ならうっかり見てしまったかもしれないけれど」
「どっちも似たようなものじゃない。どうする、もう一回見たい?」
「寝ているとはいえマーシャの隣でそんなことできるわけないだろ。そんなに見せたいならよそに行ってくれ」
「誰でもいいってわけじゃないよ、魔王にしか見せないってば」
「だから見てないって!」
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