第15話 正夢?

 風呂に入って疲れを取ろうと思ったのに、精神的に疲れた。

 あのあともマーシャに振り回されて……。

 マリーにばれなかったのが救いか。


「……あれ、魔王がびしょびしょだ」


「そりゃあ風呂上がりだからな。今はマーシャが入ってるけどマリーも入ってきたらどうだ?」


「二人で入ったら狭いでしょ」


「いや、俺とマーシャの二人が入っても十分スペースはあったぞ」


「なんでそんなこと知ってるの?」


 しまった、つい口が滑ってしまった。


「いや、わかりやすいたとえをと思ったのだがな。誤解させてしまって申し訳ない」


 ふう、何とかばれなさそうな嘘をつけたんじゃないだろうか。


「魔王様、お風呂二人で入って気持ちよかったね!」


「別に魔王が手を出してないならいいけどさ。嘘はよくないんじゃない?」


「すまなかった」


「それじゃあ私も入るけど、のぞき見しないでね。絶対に」


「もちろんだよ。魔王の名にかけてしないよ」


「変態ロリコン魔王の間違いでしょ」


 一回だけ風呂に一緒に入っただけなのに。

 なんでこんな罵詈雑言を受けなければいけないんだ。


「魔王様、これでも飲んで元気出して」


「ありがとう。……この色もしかして、マーシャが買いに行ったあのジュースか?」


「うん。こういうものは早めに飲まないといけないんだって!」


 そう言いながらマーシャも飲もうとしてた。

 これ確かアルコールは言っているかもしれないんだよな。


「ちょっとまった、俺が味見するから。マーシャが飲むのは俺が飲んだ後にしなさい」


 そう言ってコップいっぱいに入ったそれを飲む。

 マリーが酔っていたらしいから強い酒かと思っていたが……。


「これアルコールは言ってるのか? 匂いでも味でもわからなかった」


 まさか、俺のことをののしるために酔ったふりをしたのか?

 いやさすがにそれは考えすぎだな。

 単なる偶然に違いない、うんそうだ。


「私も飲んでいい?」


「ごめんな、俺の勘違いだったみたいだ」


 それにしても疲れたな。


「悪いが俺は先に寝る。それじゃあまた明日な」


「魔王様寝ちゃった。ちゃんと毛布かけてあげないと」


「…………」


 気づけば俺はマーシャの後を追っていた。

 いやいや、さっきまで宿の中にいたのになんで外にいるんだ?


「そうか、これは夢か」


 俺の夢はマーシャが西に歩いているところだけを映し出している。

 なんでこんなマニアックな夢を見ているんだ俺は。

 彼女はしばらく一人で歩いていたようだが、町のはずれのあたりで知らない女性に声をかけられた。


「マーシャ、久しぶり」


「リック一週間ぶりだね!」


 どうやらこの二人は知り合いらしい。

 挨拶が終わったら二人とも芝生の上に座った。


「調子はどう、というより最近私の近くに来ていなかったけど元気だったかい?」


「魔王様が私とずっと一緒にいたいっていうからそばにいてあげているんだ! リックはどうなの、魔術神様っていうのとイチャイチャしてるの?」


「私は魔術神様と話せるほど偉くはないよ。それにウェインという通訳のことも好きになれそうにないよ」


「その人たちは悪い人なの?」


「悪い人ではないよ、マーシャの手術に成功したのもあの人たちの魔術がなければ難しかった」


「じゃあその人たちは私のことを救ってくれたんだね!」


「まあそうなるな。マーシャのことを地獄に落としたのもあいつらなんだが……」


「そうなんだ、なんか難しいね」


 マーシャは話の内容がよくわかっていないようだった。

 彼女は手術をしていたのか。それにしてもマーシャを地獄に落としたってどういう意味なんだ。

 それにリックって誰だ、彼女の保護者か何かなのか。いや、それだったら俺からは離れているはずだよな。


「マーシャ、人が来たみたいだしこっちで話そうか」


 リックがそういうと、マーシャは自然と手を出した。

 いったい彼女は何者なんだ?

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