第8話 村長との話
翌朝。
「魔王様起きてください、もう朝ですよ」
昨日とは真逆で心地よい目覚めだ。
「おはようマーシャ。起こしてくれてありがとう、寝坊するところだったよ」
村が太陽に照らされていていい景色だ。
夕方とは違った良さがあるな。
「私は朝が得意ですからね! さあ魔王様今日から頑張るんでしょ? 早く外に出ましょう!」
「ちょっと待ってくれ。せめて支度くらいさせてくれ」
もう少し外を眺めていたかったが、せかされて大急ぎで荷物を整理する。
ただ服だけはどうしても入らなかったので、彼女のカバンを貸してもらった。
「マーシャってかばんたくさん持ってるんだな」
「そんなにたくさんは持ってないですよ。昨日ジュースを入れたやつと、魔王様に渡したやつ、あと私の荷物用の3つだけです」
「俺は一つも持っていないんだが」
「だって魔王様逃げてきたんですもん、たくさん持ってたほうがおかしいですよ」
「それもそうか。よし、荷物は全部持ったし出発するぞ」
「はい、魔王様!」
朝ご飯を食べてすぐに昨日言われた場所へと向かう。
村には活気があって魔王領のことを思い出してしまった。
いやいや、今は目の前のことに集中しなければ。
「で、ギルドの前に来てみたはいいものの……。どこから行けばいいんだ?」
見た感じ外に階段は見当たらなかった。
ギルドの中にもなかったし、まさか壁をよじ登らないといけないのか。
「魔王様、階段ならこっちですよ」
マーシャについていくと、建物の裏側に階段があった。
「よくわかったな。全然がつかなかったよ」
「この町にそこそこの年数住んでいますからね。任せてください!」
階段を上がると、村全体を見渡せるほどに高かった。
「シュリアは結構大きな村なんだな。ユスト町といい勝負かもしれない」
「ユスト村って魔王領ですよね? 栄えている町って聞いたことあります」
「マーシャも知っているのか、あそこももともとは俺の領土だったんだ」
「そっか、魔王様ですもんね!」
「今は元だがな」
「そんなことないですよ。ユストの人々は今でも魔王様のことを探していますよ」
「なんでそんなことがわかるんだ?」
「それは秘密です」
そう言ってにっこりと笑った。
「もしかして、あなたが誘拐犯を確保してくれた魔王様ですか?」
「ええ、今日は村長にあってほしいといわれたのでこちらに来たんですけど」
「そうでしたか、遅くなってしまい申し訳ありません。村長のブラントです」
そう言う老人に見覚えがあった。
「あっこの人昨日のおじいさんだ!」
「マーシャ、もう少し言い方を変えなさい。失礼だろ」
「まさか昨日のレベル99の人だったとは。いやいや全然気づきませんでしたよ。ささ、どうぞ中へ」
中には数人の警備員しかいなかった。
ここは村長の家というより仕事場のように見えるな。
「ああそうだ、別にわしに敬語なんて使わなくたっていいんだからね。どうせもうすぐ引退するんだから」
「え?! 村長さん引退しちゃうの?」
「まあね。歳だし、それにいい跡継ぎを見つけたからね」
ブラントはこちらを見ながらそう言ってきた。
「まさか……」
「そう、そのまさかだよ。君は魔王様なんだろ? もしよければこの村を魔王国再建の拠点にしてくれないか」
そう言って頭を下げられた。
もし俺が本当に魔王なんだとしたらすぐにうなずいただろう。
「やっぱりこの村まで負けたことが伝わっていたのか」
「勇者たちが自慢していたからね」
「でもこの村はアルマルク国の領土ですよね? 独立するって攻められたりしないか。もしそんなことになったら村の人々だって無事じゃなくなるかもしれないし」
「そのことに関しては平気だよ。なにせこの村は『捨てられた村』と言われているからね。まあすぐに何かをしてくれっていうわけではない。いつでも待ってるから、あと確保に協力してくれたお礼だ受け取ってくれ魔王様」
「あ、ありがとうございます……」
最後は無理やり言いくるめられたような気がしたが、願ってもない好条件だ。
「魔王様、どうするの?」
「少しだけ考えさせてください、明日までには決めるので」
「わかった。頼みましたよ」
まさかこんなに大事な話をされるとは。
全く想像していなかったので、
村長とも話したし、次はダンジョンに行かなくては。
「マーシャ、道案内頼んだぞ」
「もちろんです、任せてください! あっ、その前に……」
彼女のほうから手をつないできた。
「私がさらわれないように、手を握っててくださいね」
「もう目を離さないから安心しろ」
「ありがとうございます魔王様!」
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