第105話ダンジョン攻略十一日目6



 結束バンドで縛り上げた犯人達を、立花さんを先頭に護送する。

 浅い層にいるモンスターは、立花さんの一撃で死んでいく…… 


 コレが第一線で活躍するレベルの探索者か……俺がその高い戦闘力に関心していると、襲撃者の一人が声を上げた。



「テメェら覚悟しろよ! 暴行で訴えてやる!」



 俺は溜息を付くとこう言った。



「別に俺は置き去りにしてもよかったんだぞ? ダンジョン内は約24時間で死体が消える。武具を奪ってダンジョンに放置すれば、一体いつ頃にお前たちは死ぬのかな?」



 俺は中学時代に考えていた妄想の一つを語る。



「お、脅しか? 脅しには屈しないぞ?」



 ―――――と唾を飛ばして怒る。

 俺は再び深いため息を付くと、淡々と自分が好きな歴史に付いて語る。



「脅してなんていない。ただの思考実験だよ。

 こんな話をしっていますか? ほんの2、300年前まで存在した奴隷船貿易では、商品である奴隷以外の下級船員も奴隷と同等かそれ以下の扱いを受けたそうだ。だが下級船員は反乱をほとんど起こさず。奴隷だけが度々反乱を起こしたらしい。それ話何故だと思う?」


「……」


「例ば、反乱が成功し船を制圧しても、航海術を持たないためよく死んだ。脱出を諦めて海に飛び込んでくる奴隷もいたそうだが、入水を狙った鮫が回遊していたそうだ。奴隷の中でも女の奴隷など一部の奴隷は、カラダを提供したり、内通者となることで他の奴隷や下級船員よりも上等な扱いを受けた」


 奴隷=お前たちで、俺がお前に語っているのは、こいつらを抑える役目を果たせ、そうすれば多少は美味しい役をくれてやると言っているのだ。と明言せずに語る。


「断ったらどうなる?」


「下級船員の話をしていなかったな、奴隷を新大陸に降ろした後奴隷を抑える必要がなくなった下級船員の多くは、新大陸に置き去りにされるか殺された。理由は単純で食料を抑えられる事と金を払わなくていいからだ。で、どうする?」


「ちっ、分かったよ」


 そういうと俺から離れ、仲間たちの元へ走って行った。

 バカな奴め、俺はたとえ話をしただけでお前にメリットがあるなんて事は何一つ約束していない。

 強盗の示談金の相場は30~50万だとスマホで出てきた。単純計算で10人×30~50で合計300~500万だ。そこに傷害とか、探索者である事が加味されるので、その金額は跳ね上がる事だろう。


 多少不幸だと思ったが、戦闘の辛さだけでいえばボーナスステージ見たいなモノだったな。


 俺は内心ほくそ笑む。


………

……


~ダンジョンの出入り口~


 入場ゲートにライセンスをかざし、ダンジョン退出時の事だった。


「――――っ! 今日はどうしたんですか?」


 ゲート監視員のお姉さんは、異常さを察知したのかいつもと違う対応を取る。

 その気配を察知した他の探索者達の視線も集まってくる。


「アタシが話します……実は……」


 立花さんが事情を説明した。


「なるほど……そういう事ですねでは、警察を呼びますのでご案内するお部屋でお待ちください」


 俺たちが犯人を警備員に引き渡し、別室に案内される様子を目撃していた探索者たちに動揺が走る。


「……その前にシャワーだけでも浴びさせてもらえないかしら?」


 警備のお姉さんは少し考えるような仕草をする。

 するとお姉さんの後ろから歩いてきた老婆が声を上げる。


「別に構いはしないよ……魔法やスキルが絡んだ事件には警察はまるで役に立たないからね」


「副支部長……」


「衣服にも証拠があるだろうから、装備などを預けると言えば向こうのメンツも保てるだろう。着替えは持って来てるかい? 持って来ていないなら、倉庫にあるサンプル着てくれ」


「「ありがとうございます」」


 俺たちは、お礼を言うとシャワー室に向かった。


 熱いシャワーを頭から浴びる。

 浴びている間は気持ちがいいのだが、浴び終わったあとのムワりとした湿り気のある熱気が不快だななどと考えつつ、備え付けられたシャンプーやボディーソープで体を清めていく……


 人に刃物を向けた事は初めてではない。

 立花さんとの訓練では互いに真剣を向けて斬りあっている。(無論いつも斬られるのは俺で、俺自身、立花さんを斬った事はないが……)


 多分俺は気分が悪くなっているのだ。

 ゴブリンで、コボルトで、オークで、他のモンスターで生きている生物を斬るのに慣れたと思っていたが、同族と認識している人間は堪えるらしい。

 最初の敵をヒト型のゴブリンにした事だって、妹を助ける為には最悪の場合、誰かから奪う必要があると考えていたからだ。


 立花さんからは、ネジが外れているとか言われていたが、どうやら俺の感性は案外真面らしい。


 俺たちを襲おうとしてきた、犯人を斬りつけた事に後悔はない。


 少し硬いゴム毬に鋭い刃を付きつけ、プスりと穴を開けるような感覚が刀身から柄、柄から手に伝わってくる感触が残っている。


 もしこの不快感を大会の最中に感じていれば、俺は優勝何てできない思う。


「早く経験出来て良かった……」


 シャワーの音にかき消されるような小さな声で呟くと、聴取を受けるためにシャワー室を後にした。




============


【あとがき】


 まずは読んでくださり誠にありがとうございます!


あと12人で作者のフォロワー様が450人になりますので皆様宜しければお願いいたします。


 あとセリフと地の文の改行を1行にするかに行にするかでも悩んでいます。ご意見有ればお気軽にお申し付けください。


 誤字脱字も多い事と思いますが、「コレ違うんじゃね?」と思ったりこっちの表現の方が良いと思う、などありましたらお気軽にコメントを下さい。更新中の作品のコメントは全て目を通しており返信もしておりますので、こういうストーリーがいいなどお気軽にお申し付け下さい。


読者の皆様に、大切なお願いがあります。

少しでも


「面白そう!」


「続きがきになる!」


「主人公・作者がんばってるな」


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