第88話ご飯と反省

「二人共疲れたでしょ? 今日はダンジョンから帰って振り返りをしない?」



 確かにを気遣いながら戦うと言う行為は、集中力も精神力もスリ減らされてしまっており、これ以上戦うには《魔法》や《スキル》と言った『ステータス』や技量を割増しするナニカが必要になって来ると思う。

 そう言う部分も加味すればこれ以上ダンジョンに潜って、戦闘を重ねたとしても身に付くのは、『ステータス』と『精神力』程度で失うものが大きすぎると思う。



「……そうですね。私としては反省会をしたいと思うんですけど、立花さんとコータローくんはお時間空いてますか?」



 珍しい中原さんが誘ってくるのは初めてだ。



「アタシは空いてるわよ?」



――――と立花さん。



(よし! これでアドバイス受けて改善する方法を教えて貰う事が出来るぞ!)


「私も開いてますよ? 今日はどこに行きますか?」


「そうだなぁ……二人は行きたいところありますか?」



 個人的にはそこまでお腹が空いていないので、ファミレスのようなメニューの多い場所に行きたい。――――と言うのが個人的な願いだ。

 目をキラキラと輝かせて、中原さんが希望を述べる。



「私としては普段行かないようなお店が良いです! 二郎系ラーメンと言う物を食べて見たいです……」


((二郎系ラーメンは重いって……))



――――と師弟の心は一致していた。



「そうね……でもこの辺だとインスパイア系だからどうせ食べるなら、本店の暖簾分けに行って食べましょうよ……」



――――と今日の地獄二郎を回避する為に動いていた。



「それもそうですね……コータローくんは、御盆には東京方面で行われる大会に出るんですよね? じゃぁその機会に食べに行きます三田本店で総帥の作品を食べたいです! 今日は二人に合わせます」



 総帥と言うのは二郎系ラーメンの創設者らしい。



「今日は軽めのお店……イタリアンにでも行きましょう。サ〇ゼとかどう?」


「いいですね」



――――と言う事で俺達はサイ〇リヤに向かった。


 西口の駅前から進む事数十分。歩くとイタリアンレストランに辿り着いた。

 

 立花さんはエスカルゴのオーブン焼き、アロスティチーニ、辛味チキンと酒飲みの摘まみ見たいなメニューが多い。酒(ワイン)なんてボトルで注文している。どれだけ飲みたいんだ。

 俺はミラノ風ドリアと小エビのサラダ程度で抑えているものの、中原さんはマルゲリータピザ、カルボナーラ、ミラノ風ドリアと主食級のものが多く、大食いを発揮している。


 小エビのサラダにかかっている特製ドレシングがエビに絡まって美味い。



「でコータローが、アタシを呼び出したって事はさっきの戦いでの細かいアドバイスが欲しいって事よね?」


「その通りです」


「さっきも言ったけど、ソロでのあのモンスターを倒したせいで“覚悟”が決まっちゃってる状態なのよね……」


「覚悟ですか?」


「そ、覚悟……何かを犠牲にしてでも何かを成す覚悟……自分が傷つく事を勘定カンジョーに入れてない戦い方って言い換えても良いわね」


「私も自分自身に思い当たる節はありますけど、コータロー君のソレは、死地での覚悟みたいな強烈なモノを感じます」


「……」


「アタシの感想も似たような物ね……得点で言えばトモエちゃんを70点とすればコウタローは40点」


「理由は何でしょうか?」


 中原さんが訪ねた。


「トモエちゃんの場合は、コータローとトモエちゃんの場合指示を出すのに向いているのはどっちか分かる?」


「……すいません。わかりません」


「俺は中原さんだと思います」


「理由は?」


「俺達二人だけで考えた場合中原さんは、前衛、中衛、後衛で言えば中衛になります。それも数を抑える盾役タンクですが初手の陣形などの指示だけで見れば、中原さんのポジションは指揮官に向いているかと……」


「そうね。強敵を仲間から切り離し、雑魚をいち早く処理する攻撃役アタッカーのコータローの指示は、自分を中心とした我儘なモノになりやすいく不和を産みやすい……

 サッカーゲームの雷鳴イレブンで言えば、戦術を担当するゲームメイカーはⅯFミッドフィールダーが担当する事が多いように、前世に近いモノの一歩引いたポジションが最適なのよ。中衛か後衛が最適ね。」


「でも私には指揮なんて……」


「完璧にする必要はないは、混戦になったときに指示を出せばいいのよ」


「なるほど……普段はコータロー君が担当して、混戦の時に私が指揮を代行すればいいと言う訳ですね……」


「概ねその通りよ。これが主なトモエちゃんの減点理由よ……要するに指示待ちでいる事で、コータローが一瞬パニクって指示を出せないのに指示を出さなかった事が問題って事!」


「う、確かにそうですね……」


「コータローの場合は後で動画に音声コメント付きで、解説した動画を送ってあげるから、それを見ながらメモに自分ならどうするか? を時間をメモしながら書いて提出しなさい? いい?」


「はい」


「トモエちゃんもコータローと同じ指揮者としての技術を磨いてもらうから、コータローに出した問題を送るわね」


「あ、ありがとうございます」


「これって例の番組でも使うんですか?」


「その予定よ。企画書は通ったから向こうが録画する分を今取ってるところよ。幸い今は収録がないみたいだから取れる時に溜め取りするらしいわ」


「例の番組ってなんですか?」


 俺と師匠は経緯を説明した。


「大変ですね……」


「そうなのよ。広報がやれって五月蠅くて断れなかったのよ……まぁその分休暇が伸びたからいいんだけどね」

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