第19話ダンジョン三日目3
「
逃げる時はてんでんばらばらに逃げるんだよ!」
コボルトを倒せる俺に取って、”ゴブリンの相手など、最早児戯にも等しい”は言い過ぎだけど、反応速度の違い?からか動きが”見切れ”る。
一撃一殺で強ゴブリンを虐殺し、木箱を奪う。
俺が木箱だと思っていたものは、『宝箱』と言われるもので、中には貴重な武具や防具、マジックアイテムが入っている事があると言う。
『宝箱』の多くは、隠し通路や隠し扉など分かり辛い場所で発見され、一説にはモンスターの補給地点ではないか? と言われている。
「さて、中身はなにかな……っと」
少し警戒しながら宝箱を開ける。
油をさしていないのか
中に入っていたのは、幾つもの硝子瓶であり、恐らくは魔法薬。
ポーションと呼ばれる、高額換金アイテムであろうと推察する。
「切り傷を即座に直す程度の
もう一方の宝箱も開ける。
「何が出るかな♪ 何が出るかな♪ 何が出るかな♪ ……」
そんな言葉を口ずさみ、ナイフを突き立て、無理やりこじ開ける。
油を差していないのか、
『宝箱』には一定数”ミミック”がいて、無防備な探索者がその餌食となる事故があるらしいが、今回丁寧に護衛まで付けて運んでいた荷物にその心配はないだろう。
金属の留め具をナイフでガシガシ叩き、金属を曲げこじ開ける。
「お、開いた!」
歓喜の声を上げて、箱を開ける。
中身は優秀な換金アイテムで、今日だけでも儲けは数十万行くだろう。
「これで、
小さくガッツポーズをし、宝箱の中身をポーチに移そうとするが……
「流石にどうやっても入らないな。仕方がない宝箱ごと持ち帰るか……」
『宝箱』には魔法がかけられていて、衝撃から中身を守る効果があるらしいので、ぽいぽいと内容物を纏め入れて持ち帰る事にした。
コボルトの魔石3つと隠していた袋に入っていたものを、袋ごと略奪し、道中現れる雑魚を屠りながら道を引き返した。
地元のダンジョンという事もあり年若い年齢の男女が、武器を手にスライムを潰している。
「もっと奥に行けば空いてるのにな……」
俺は馬鹿を見る目で大学生や高校生を眺める。
「あれ、なんで平均100万円もする武器がポンポン持ってるんだろう? 冒険者向けの
真面目に講習を受けず。講習を受けたフリをして過去問を暗記し、ただ試験をクリアしただけの俺にはそう言う細かい事は解らない。
「次にお店に行った時に、相場さんにでも聞いてみよう……」
そんな事を考えながら、段々と出入口付に近づいていく……とどこかで聞いたことがある声が聞こえた。
「ここがダンジョンかぁ!」
「わくわくするな!」
何というか会いたくもないクラスメイトの声に似ている。
俺はその声を一切合切無視して、気づかれないように何食わぬ顔で横を通り過ぎて行く。
「おい。何ぼーっとしてるだ? 早くスライムを倒してステータス手に入れるぞ?」
「どこかで見た事あるきがすんだけどなぁ」
駅の改札口のような機会にライセンスをかざし、入退場の時間を記録すると、バーがカシャと音を立て開き先に進む。
買い取りカウンターに付くと、発券機で券を受け取ってお待ちください。とアナウンスがかかる。
モンスターの体液を浴びているのだが、それは良いのだろうか? ものの5分ほどで自分の番号が呼ばれる。
「券番号 194番でお客様、買取窓口3番までお越し下さい」
自動音声を繋ぎ合わせているせいで、所々とぎれとぎれだ。
「これなら発券機要らないじゃん」
悪態を付きながら、椅子にしていた宝箱ごと買い取りカウンターに持っていく……
「お待たせ致しました。拾得物をこちらにお願いします」
受付の人がそう言うと、カウンターの下の部分が空き、宝箱ごと荷物が吸い込まれていく。
「ライセンスと振込先の銀行カードをお願いします」
「確認いたします」
ライセンスはマイナンバーと紐づけされているので便利だ。
「これは、ポーション系ですね……買い取りで宜しいですか? 」
「中級以上だったら買い取りたいです」
「分かりました。申し訳ありませんが、マジックアイテムやそれに類似する品の買取査定には、確認作業に少々時間がかかります。今この場で査定額を算出する事が出来ないので、お預かりしさせて頂き、後日査定額を通知するという流れに、なりますがご了承ください」
「魔石の買い取りが24000円で武器・マジックアイテムが未定になります。1,2週間で査定が完了しますのでその時にお支払いいたします」
「お預かり証明書にサインお願いします」
証書にサインをする。
「こちらがお控えとなっています。なくさないようにお願いします。本日は御利用ありがとうございました」
「取りあえずシャワーでも浴びるか」
こうして俺の三日目の冒険は幕を下ろした。
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