第2話

 エミールの店は、朝の六時半に開いて、九時で休憩のためにいったん閉まる。

 その九時ぎりぎりにやって来たアヒルのフェルディナンドに、エミールが声をかけた。


「フェルディナンドさん、新しい従業員のアンナを紹介します。アンナ、こちらはお得意さまのフェルディナンドさんだ」


 エミールの隣には、白い体に目元と頭と背中の一部が黒い、情熱的そうな雌のミニブタが立っていた。


「アンナです。よろしくお願いします」

「よろしく、アンナ」


 アンナが笑顔で挨拶すると、フェルディナンドもかぶっていた帽子をちょっと上げて会釈した。

 アンナがカウンターの奥に行った後、フェルディナンドがエミールに囁いた。


「美人じゃないか」

「ええ。それによく働きます」

「明日から男の客が増えるかもな」

「願ってもないことです」


 フェルディナンドがニヤリと笑いながら言うと、エミールは生真面目に返した。

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