第71話 聖なる燦弾
────『虚空魔法++』×『岩魔法』。
「虚岩落石」
ヴィンセントの攻撃による砂埃から飛び出し、ノアは魔法を放つ。
ノアとスオによる魔力を合わせ、虚空で作り出した巨大な岩石を降らせた。
ヴィンセントが目を見開いた。
「……!」
それを見ていた観客が騒ぐ。
「い、隕石……!?」
「でっか……‼︎」
「どんな魔力量してんだ…‼︎」
銃口を合わせていたヴィンセントが魔法を放つ。
「プロメテウス・極」
爆炎が広がり、岩石が散らばった。
帝国式魔法。
別名、銃魔法。
ヴィンセントが使っているのは、ノアの国では銃魔法と呼ばれるものであった。
それを帝国式と呼び、愛用している。
ノアの虚岩落石と、ヴィンセントのプロメテウスが衝突する。
木々が吹き飛び、その爆風は観客席にいるリオンたちまで届いた。
リオンたちの髪が逆立つ。
爆風が落ち着くと、ヴィンセントが笑った。
「こんな魔法、貴公も無傷では済まぬだろう」
ヴィンセントの目の前にあった大きな石が割れる。
拳で石を割って現れる。
「この程度の攻撃なら、問題ないよ」
ノアの磨かれた美しい肉体美は、傷一つつかない。
「剣術、魔法、肉体……どれも最高水準の実力だ」
「そりゃどうも」
褒められるとノアは素直に喜ぶ。
「賛美を素直に受け取る心も良し」
カチャン…!
ヴィンセントが銃の弾を排出する。
薬莢が飛び出した。
そうして銃からプシュ〜…という音と蒸気が出る。
「余と並び立つ者は、そうこの世界にはいない。魔法教会や聖女……その他の強者と戦う機会もあまりないからな」
それでなくとも、ヴィンセントは王の立場に近い。
戦いを好んで仕掛けに行くことは、あまり立場的にもできないことであった。
「だから……余は今……最高に気持ちが昂っている」
懐から三つの銃弾を見せた。
ノアから見ると、ただの銃弾にしかそれは映らなかった。
ただの銃弾。されど、ヴィンセントは自信に溢れた面持ちを浮かべている。
スオが奥歯を噛み締めた。
「こやつ……!」
「…! スオ、何か知ってるの?」
「気をつけろ。あの弾丸……聖遺物だ」
「マジ……?」
三つの聖なる燦弾。
「流石は旧魔王であるな、気配で察知したか」
「聖遺物には良い思い出がなくてな。聖遺物はいわば、魔族の天敵」
神から授けられた力である。
「この遺物は魔法教会も知らない。余が独自に手に入れた聖遺物」
ヴィンセントはそれを弾丸として詰め込んだ。
「本当の戦いはここからだ、ノア」
ノアが半眼で唇を閉ざした。
「ねぇ……聖遺物持ちキャラ多くない?」
じゃがいも聖女に、オリヴィア。そしてヴィンセントまでもが聖遺物を使ってくる。
「こ、こんな時に何を言っておるのだ!」
「いやだって……ズルくないか。俺一つも持ってないよ!」
神に選ばれし者のみが持つことを許される聖遺物。
「俺にも一つなんか欲しい!」
「えぇ!? 今言うかそれ!?」
「スオなんか持ってないの!」
「持っておるわけないだろう! 魔族の天敵なんだぞ!」
ムスーっとした様子で、ノアが頬を膨らませていた。
スオがため息を漏らす。
「ダンベルでも握って、聖遺物って言い張れば良いのではないか?」
「それいいね……!」
「おい冗談だ間に受け……本当にダンベルを取り出すな!」
聖遺物、ダンベル出現。
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