ひきこもりのクラスメイト達

「おーい、ハルト氏~、今日はなんのクエストに挑戦するん?」


ホームルームを終え、2限目の休み時間。


次の授業である数学のテキストデータを目の前に表示されている画面をタッチしてダウンロードしているとクラスメイトのクラウドが話しかけてきた。


もちろんクラウドという某有名なゲームキャラクターのような名前は本名ではない。

学校の制度で生徒は匿名性でそれぞれ任意の名前を名乗ることが許されているのだ。

俺は名前を考えるのがめんどくさかったので名前をカタカナでハルトと名乗っている。


また格好や容姿についてもカスタマイズが可能だ。

カスタマイズに必要なアバターは配布されたポイントやクエストをクリアすると手にいれることができる仕組みだ。


ひきこもりになる人というのは、自分に自信がないやつも多いため、こういった架空の人物になれる制度を用意したのだろう。

確かに、匿名で自分の姿がばれなければ元気になるやついるよな・・・。


ちなみにクラウドの見た目は、少女漫画に登場しそうな金髪で顔が整ったイケメン顔で、今にも壁ドンとかやっちゃって女子生徒の唇を奪いそうな雰囲気を醸し出している。


「ぼ、僕はうさみみのメイドさんと1日デートするクエストとかいいと思うんだよね~。( ;´Д`)はあはあ」


・・・なにも喋らなければな。

見た目が変わっても隠しきれないものってあるよな。

きっとコイツの本当の姿はテンプレのようなオタク姿に違いない。


「そんなクエストあるわけないじゃん」

「え~、そしたらどうやってお嫁さんを見つければいいんだよ!」


俺が呆れ顔で現実をつきつけると、クラウドは逆ギレしてきた。こいつは嫁を探しに学校にきてるのかよ(汗)

どちらにしてもNPCはお嫁さんにはできないだろ・・・。


「てか、ハルト氏もそんな村人Aみたいな格好じゃお嫁さんはおろか、彼女もできないぞっ。もっと僕のように見た目にもこだわらないと~」

「うるさいな~、目立ちたくないし自分の容姿を考えるのめんどいじゃん。デフォルト設定最強だよ。それに俺は嫁探しに学校にきているわけじゃないぞ」

「せっかくイケメン顔で学校に通えるというのに・・・。もしかしたら、あみんたんの彼氏にもなれるかも知れないんだぞっ」


クラウドはそう言いながら、いやらしい目つきで教室の窓際で友達とおしゃべりしているあみんの方を向く。


あみんはクラスのアイドル的存在の女子生徒だ。

顔は整っており、髪は肩にかからないくらいのショートカット。クラウド曰く、キラキラした大きな瞳で見つめられるとどんな言うことでも聞いてしまいたくなるような魔力があるらしい。裏表がなく、分け隔てなく気さくに接するためクラスメイトの男女問わず人気を集めている。

なんでこんなリア充要素だらけの人がこんなひきこもりばかりの学校に通っているのか不思議なくらいだ。


「あみんたん、かわいいな~、今度のクエスト一緒にいってくれないかなあ。はあはあ・・・」

「そんな顔で話しかけたら通報されるからやめとけよな」


キーンコーンカーンコーン・・・


「おっと、じゃあまた午後に会おうぜ。相棒(はーと)」

イケメン顔のオタクは3限目のチャイムがなると同時に、鳥肌が立つようなセリフを残し自席に戻っていった。

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