◆魔女、駅でぶつかる

――各駅停車の電車の中


ついに……このときがやって来たか……。


師の話を聞いてから、私は電車に乗り、待ち合わせ場所へと向かう。


少しの緊張の中、私は冷静に行動するため『今日、やるべきこと』を頭の中でまとめる。いわゆるシミュレーションというやつだ。


――電車に揺られながらシンキング中……


……よし、考えがまとまったぞ!だからなのか、だんだんと心が落ち着いて来たぞ……。


プシュー……


目的地の駅に着いて、ホームを歩いていた……ときだ。


ふいに……


ドンッ


少年とぶつかった。衝撃は軽い。柑橘系の匂いが、ふわっと広がった。

「――」

……え?


ぶつかった少年が何かをつぶやいた。私に声を掛けたのか?いや違う。

少年は私の前を過ぎ去り、そのまま電車へ乗り込んだ。

何だろう、なんて言ったのか……少し気になる。

よく聞き取れなかった、怒って捨て台詞でも言ったのだろうか……。


「……あれ?」


………………。


………………!!


いや……いやいや……、

いや!そんなことよりも、そんなことよりも岬、岬、岬くん!だッ!


岬くんに会いに行かなくちゃ!行かなくちゃ!行かなくちゃ!!!

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