第42話 VSヴィペール 始動

 アタシ達はお姉ちゃんが出したご飯を食べている。


 「珍しいね。二人が飯を食うって」


 「まぁ耐性スキルは持ってるし、それに今回は需要な戦いだからな。少しでも集中力を上げる為に微々たる空間感も無い方が良い」


 お姉ちゃんが玲奈さんに言葉を述べる。

 本当に久しぶりのご飯でとても美味しい。耐性スキルがあるから良かったが、なかったらぶっ倒れている筈だ。

 ご飯が終わったらアタシ達は外に出る。⋯⋯決戦の太陽は雲のない空から輝いていた。


 「いってらっしゃい」


 「「行ってきます」」「シャ〜」


 アタシとお姉ちゃんは別れて行動する。

 レベル上げも兼ねて別行動をしていたが、今回の作戦の練習の為に別行動でレベル上げを行っていたのだ。

 持っている地図を広げてポイントに向かって進む。


 『ワオオオ!』


 狼のようなモンスターが正面から迫って来る。

 異空間から空飛ぶ十字架型のシールドガンを取り出す。

 銃口が正確にモンスター達に向き、内部に装填されている弾丸が回転しながら発砲する。

 一撃の火力は高く、簡単にモンスターの体を貫いて倒す。


 「⋯⋯ここか」


 ビルの中に侵入する。中から続々とモンスターが迫って来る。

 隠れているトカゲのようなモンスターが舌を伸ばして来る。

 すぐさまシールドガンを間に挟んで盾に使う。

 このシールドガン、名前を『ユリシー』と名付けて番号を振っている。


 それは攻撃を受けると自動的に結界を出現させて攻撃を防ぐ。

 内部に保存されている魔石のエネルギーによって展開しているので、エネルギーがなくなったら本体に攻撃が通るようになる。

 アタシの意識次第で盾にも銃にもなる。


 ユリシー二号がそのモンスターに銃口を向けて放ち倒す。

 魔石は特別の弾丸を生成させる為に必要なので回収しておく。

 そろそろビルの階段を登る。ここからが本格的に内部のモンスターと戦うようになる。


 「⋯⋯ほれ来た」


 様々な種類のモンスターが迫って来る。

 熟練度で次の段階のスキルに進化した理由は、同じ武器を精密に使っていた訳では無い。

 大量の武器を同時に精密に使っていたのだ。


 「武装展開」


 ユリシー一号から二十号までが異空間から出現して銃口を向けている。

 さらに連射特化のライフルが五丁、一撃の火力が高い単発ライフルが五丁、エネルギー弾を放つライフルが五丁出現する。

 懐のホルダーからユリナ、ユリカを取り出して構える。


 「ユリノア【ウェポンブースト】」


 「きゅう!」


 ユリノアがアタシの武器全てに強化魔法を使って火力を上げる。


 「一斉射撃」


 迫り来るモンスターに向かって、全ての武器が弾丸を放つ。

 激しい轟音と閃光が辺りを埋め尽くす。

 背後に気配を消して迫って来るモンスターをノールックで貫く。

 銃弾の雨を運良く潜り抜けて迫り来るモンスターには手に持つ銃で破壊する。

 弾が無くなっても【オートリロード】の効果でアタシのMPを消費して弾丸を生成してリロードする。


 「ふぅ。終わったか」


 一分足らずで大量のモンスターは消滅して魔石がゴロゴロ転がっている。

 空飛ぶ武器達を操作して魔石を全て回収して行く。


 「次行こうか」


 「きゅう!」


 お姉ちゃんと一緒に戦えないのは寂しいけど、アタシがお姉ちゃんの戦いには参加出来ないので仕方ない。

 サポートに徹するのが一番だ。


 「アタッチメント」


 単体でも弾丸を放てる一撃の火力が強いライフルがアタシの隣に飛来する。

 階段を登りながらそれに手を掛けて特別の仕掛けを使用して行く。

 ガチャガチャとして、次の階層に上がった瞬間にモンスターがアタシを囲む。


 「出来た」


 銃口とは真反対の付け根の部分にユリナを突っ込んでセッテングする。

 横の方にはユリカをはめ込む。

 三つの銃が一つの銃へと姿を変え、それを囲いこんで来るモンスター達に向ける。


 「合体専用スキル【複数照準】!」


 ロックオンマークが目の前のモンスター各々に赤く引っ付く。

 合体させた時にのみ現れるスキル【複数照準】。

 アタシの知力によってその数は変わる。150を超えていると15体は同時にロックオン出来る。

 ユリナの引き金を引く。


 刹那、一つの銃口から一発の弾が放たれ、それらがロックオンしたモンスターそれぞれに向けて弾けて貫く。

 一撃の火力は下がるがそれでも大軍相手にはかなりの効果が期待出来る。

 それに需要なのはただの時間稼ぎである。


 「終わりだよ」


 そして再び数々の空を飛来する銃を取り出して利用する。

 それを繰り返して屋上まで出て来た。


 「良い青空だな」


 アタシはスナイパーライフルを取り出した。

 かなりの大きさがある。

 ユリナとユリカを特別の操作で形を変更させて合体させる。

 それをスナイパーライフルの特別の場所にはめ込む。


 「きゅう、きゅう、きゅう!」


 ユリノアも応援してくれている。


 「あんがとね」


 この銃は一発しか弾を込める事が出来ない。

 だけど火力はピカイチだ。


 「貫爆弾」


 唐紅で20×110mmと言う規格外の弾丸だ。

 それを装填して魔石を入れる場所に数個入れ込む。

 すると機械が動くような駆動音を出して魔石を砕きエネルギーを先端に溜めて行く。

 これで準備は完了である。あとはお姉ちゃんが定位置に来るまで待機だ。


 「ユリノア、力を使う準備しておいてね」


 「きゅう!」


 ◆


 「シャー!」


 「この辺か」


 アオさんが威嚇するように首元で声を出したので止まる。

 頭を撫でながら服の中に戻しておく。


 「はぁ。スズちゃんが近くに居ないから少しだけ力が落ちてる気がする⋯⋯ま、戦いが始まったらすぐに本領発揮しそうだけど」


 武器は持たずに座り込み、そのまま横になる。

 地面がゴツゴツして寝転がりにくい。この辺にはモンスターが居ないので安心出来る。


 「⋯⋯そろそろ来そうだな」


 私の力ではヴィペールの潜伏系スキル【光学迷彩】を見破れない。

 気配を遮断しながらその姿すら消すスキル。それは動いても空間の歪みすら感じさせないし音も出させない。

 しかも奴はそれを常に発動している為に普通なら見つけられない。

 ならばやる事は簡単だ。相手から来て貰う。


 「シャー!」


 「来たっ!」


 アオさんが叫ぶのと同時に私の横に純白の鱗を持つ巨大な蛇が出現した。

 大きな口を開けている。

 ヴィペールは攻撃時にその姿を出さないといけない。【光学迷彩】の弱点だ。

 そしてこのスキルが解除された瞬間に気配は感じ取れる。


 「『クイックチェンジ』!」


 手に持っていた小石とヴィペール対策に用意していたアイテムを一瞬で交換した。

 これが私の考え出した、お前を倒す為の切り札だ!

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