ステージ3

ゲームマシン

俺と璃音による記念すべき初動画を動画配信サイトにアップした。


その内容は凛音が据え置きゲーム推進委員会の副委員長に就任したというただの報告である。

だが以外にも結構な話題を呼んだ。再生回数は3日で50万を超えている。


現役の人気アイドルが得意分野のゲームに関して新たな行動を始めたことがファンの興味を引いたんだろうな。

俺は改めて実感したね。松野璃音はかなりの人気アイドルであると。


実は凛音ってば動画配信サービスの黎明期から既に手をつけていたらしい。

つまり老舗の配信者だったんだな。勿論今も定期的に配信している。


アイドルとしてのオフィシャルチャンネルとゲームに特化したチャンネル、その2つを持っているんだ。


それぞれの登録者数は現時点でどちらも200万人を超えているんだってよ!まったく羨ましいよ。


ただの弱小チャンネルに過ぎなかった据え置きゲーム推進委員会だけど松野璃音の加入により登録者数を大幅に伸ばすことになってね。


璃音と俺が出ている動画はどれも平均再生回数50万回を超えたんだぜ?信じられねえよ。


それに釣られたのかな、俺個人で作成した動画も再生回数が軒並み伸びていてさ。

今までほとんど書きこまれていなかったコメントもたくさん見られるようになった。


とはいえそれらを書き込んだのは松野璃音ファンがほとんどであり、素性の知れぬ男である俺に対しては男性ファンからの辛辣なコメントが並んだ。


ていうかほとんど誹謗中傷、罵詈雑言だよ。凛音がそれらに対して注意喚起のコメントを出したらマシにはなったけどさ。


同性の下らない嫉妬にさらされかなりの怒りに打ち震えながらもまめにコメントをチェックしていた俺はその中に引っかかるコメントを見つけた。


「ランドラインについての情報?、、、、、、マジか?」

電脳系解放教団のサイトでその存在を知った伝説の据え置き用ゲーム機、ランドライン。


個人的にかなり興味を抱いたので自身のブログやツイッターに情報求む!というコメントを書き込んでおいたのだ。

今では俺もランドラインについては一定以上の知識をもっている。


ん?ランドラインについてぜひ教えてくれだって?仕方ないな、それでは説明してやるとするか。


実はこのランドラインという代物、実際に発売されたわけではないんだ。

う~ん、あれだな、、、、ここはウィキペディアを読んで頂く方が手っ取り早いかもしれん。俺ってば口下手だしな。てなわけでどうぞ!


(ウィキペディアより抜粋)


ランドライン


ランドラインはアジア最初の基礎科学総合研究所である理化学研究所と日本のIT系新興企業マージナル・エレクトロニクス社が共同開発した据え置き型家庭用ゲーム機である。


プロトタイプが12台製造されたものの、プロジェクト自体がお蔵入りになってしまった為、本体は実際に発売されてはいない。


プロジェクト頓挫の原因は不明。様々な噂が飛び交っているが、理化学研究所とマージナル・エレクトロニクス社はいずれも否定している。


本体の詳しい仕様は未発表であるが、従来のソフトを入れ替えてプレイするタイプのゲーム機ではなく、本体にあらかじめプリインストールされているソフトをプレイするタイプである。


こんなところかな。

現実的にはこれらのプロトタイプが既に裏市場に流通しているとの噂が絶えないんだけどね。闇ウェブでかなりの金額で取引されていたとの未確認情報もあるし。


とはいえネットの噂だ。信憑性は低いかもしれない。しかしこのゲーム機を追い求める者は未だに後を絶たないのは事実だ。


なぜか?それはランドラインにプリインストールされているゲーム”エスカトロジー7”の出来が凄まじくよろしいからだ。

プレイした者はいないのであくまで俺の想像だがな。


エスカトロジー7は28歳で夭折した天才ゲームデザイナー香枝折御笠かえおりみかさが心血を注いで創ったゲームだ。


香枝折は生前4本のゲームを創ったんだけどそのどれもがゲームバランスが抜群で物語性に富み、独特な世界観が心地良いものだ。

しかも肝心かなめのシステム部分がかなりの中毒性を持つ出来栄えなのだ。


どれも全て一人で創ったとは思えない。際立つ完成度の高さを持つ。

凄いのはこの4本のゲーム、どれもジャンルが違う事。


アクションゲーム、アドベンチャーゲーム、ロールプレイングゲーム、シュミレーションゲーム。そう、ゲームにおける4大ジャンルを全て網羅しているんだ。


全く違うジャンルで傑作を何本も生みだしたゲームデザイナーは今までに存在しないはずだ。


ゲーム業界のライバルでありエンターテイメントの先輩でもある映画業界でもスタンリー・キューブリック(2001年宇宙の旅やシャイニング、フルメタルジャケット等を手掛けた)という監督だけが成し遂げた偉業だ。


だが香枝折が手掛けた4本のゲームは全てインディーゲーム扱いであり、プラットフォームはパソコンのみ。

家庭用ゲーム機に移植の話は何度かあったらしいが、香枝折が頑なに断っていたらしい。


従って一般人には香枝折御笠の名前はそんなに浸透していない。

だけどコアゲーマーには、、、、そりゃ神と崇められるわな。


ちなみに家庭用ゲーム機いわゆるCS機LOVEな俺は彼のゲームは1本もプレイしたことがない。


そんな香枝折が初めて家庭用ゲーム機専用ソフトとして開発したのがエスカトロジー7だ。開発自体は極秘裏に進められていたらしいが、香枝折信者のヘビーゲーマーがその情報をどこからか聞きつけネットで暴露したのだ。


だがこの件に関しては理化学研究所とマージナル・エレクトロニクス社が肯定した為、一気に注目度が増した。


しかもプリインストールされているソフトはエスカトロジー7のみ!それだけ自信作なのだろう。いやがうえにも期待は高まるわな。


俺もこのゲームはプレイしてみたい。ええ、かなりね。ちなみにジャンルは不明。おそらく今まで手掛けた作品とは違うジャンルだろうな。


そんな折、香枝折御笠が死んだ。しかもエスカトロジー7完成直前にだ。

死因は虚血性心疾患らしいが、、、信者の間では全ての生命エネルギーをエスカトロジー7に注いでしまったのが急死の原因とまことしやかに囁かれている。


何かうすら寒いものを感じるだろう?正直ホラーだよ。


まぁ俺が得たこれらの情報は電子遊戯研究所という老舗のゲームサイトで確認した物なのでどこまで本当かわからん。


ただゲーマニア(ゲームマニアの略称。俺命名)がランドラインに興味を持つのも無理はないだろう?


天才ゲームデザイナー香枝折御笠が命がけで創ったゲームをプレイ出来るのはランドラインしかないんだからな。


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