5:殺人犯と異世界転生
シリウスは人には見せられないほど無残な姿になっていた。戦いの
街の方から防衛軍が音を聞きつけて近づいてきたので、俺は慌ててシリウスの死体を引きずって近くの森へ逃げ込んだ。
やばいことになった。
曲がりなりにも魔王の手下を殺してしまったのだ。バレたら俺は終わる。すぐにシリウスの死体を森の中に埋めた。季節が巡って、ここに綺麗な花が咲けばいいな。
考えろ。シリウスの死を
……そうか。その手があった。
***
夜になるのを待って、俺は街の一角にある墓地にやって来た。スコップを片手に。自分の墓を探して、土を掘る。汗だくになって棺に辿り着く。急いで中に横たわる俺の死体を引きずり出した。
まさか自分の死体を掘り起こすことになるとは……。今日は死体記念日だ。
魔王は魔法で俺の身体を作り出した。俺の死体を調べ上げ、魔法を分析すれば、シリウスの身体を作ることができるかもしれない。
俺の死体を教会の方へ運ぶ。ここには俺が子どもの頃に遊び場にしていた地下墓地がある。今は使われていないから安全だ。
***
夜明け前に魔王が俺の身体を作った方法は分かった。
結局、シリウスの魂を作り出す方法は分からずじまいだ。そこで俺は結論を導き出した。
シリウスは魔物に殺されたことにしよう。
四天王を殺せるほどの魔物を探して、シリウスの死体を放置してくれば万事解決だ。
昼前にシリウスの身体ができあがる。俺の身体についていた奴の血が役に立った。
そこで気づく。俺はこいつの死体を担いで魔物を
仲間が必要だ。
だが、誰が俺に力を貸してくれる? この街にも魔王城にもそんな奴はいない……。
こうなりゃ、異世界から召喚するしかない。
***
本来、召喚魔法は異世界から悪魔を呼び出す禁術だった。それがカスタマイズされ、一部の
シリウスの死体と共にシルディアの街を出て、召喚魔法を行うのに必要な開けた場所までやって来た。
早速、陣を描いて呪文を唱える。
光の帯が陣の周囲を渦巻いて、雷が落ちた。
「ここは……?!」
彼女は辺りを見回して怯えたような声を漏らした。無理もない。この魔法で異世界から強制的に呼び出されたのだから。
「私、家に帰る途中だったんだけど! ケーキ楽しみにしてたのに、バカ!」
うるさい女だ。説明してやらねば。
「ここはシルディア、この世界では──」
「え、待って! 私ここ来たことある気がするんだけど」
「いや、話を聞け──」
「ねえ、魔王いるでしょ、魔王! 私、どっかの街で勇者にされた気がするんだけど」
「お前、本当にここにいたのか? 名前はなんと言うんだ?」
女は今気づいたように俺を睨みつけた。
「まさか、あんたが私をここに呼んだの?」
「説明が省けるのは手っ取り
女は俺に飛び掛かってきた。
「せっかく仕事順調で良い恋愛してたのに、あんたに選ばれたせいで向こうで死んじゃったじゃん! ふざけないでよ!」
女はそのまま泣き崩れた。忙しい奴だ。
「お前、名前は?」
「リナぁ~……」
リナが泣きながら答える。とりあえず慰めようとすると、転がしておいたシリウスの身体に彼女の目が向けられた。
「いやぁっ! 人殺しぃっ!」
俺は溜息をついた。先が思いやられる……。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます