第21話 ヤバい彼女さん

 オレの彼女は清楚ビッチなんだけど、毎度毎度、エッチをする訳ではない。


「なぁ、芽衣。何でテストが終わったのに、まだ勉強するんだよ? しかも、オレってば目標を超える70点だったんだぜ?」


「ダメよ、油断しちゃ。勉強っていうのは、日頃の積み重ねが大切なんだから」


「そういうもんかねぇ~。また直前になったら、芽衣に教わる方がコスパよくね?」


「でも、その時まで、私たちが付き合っている保障はないでしょう?」


 グサリ、と不意打ちでナイフを刺されるようだ。


「いや、それは……」


「ちなみに、加瀬くんとはお友達だから。隼士くんと別れた後も、付き合いは続くわね」


「……舞浜は?」


 オレが問いかけると、芽衣はペンを止める。


「……どう思った?」


「えっ?」


「私の日記を見て」


 ゴクリ、と息を呑む。


「正直に言って良いわよ。気持ち悪かったって。ちゃんと、自覚しているから」


 芽衣は薄ら笑いを浮かべて言う。


「……日記は、ちゃんと読めなかった。すぐに閉じたよ」


「気持ち悪すぎて?」


「……ていうか、この前カラオケで、何か不穏な電話をしていただろ?」


「あら、立ち聞きなんて、趣味が悪いわね」


「でも、舞浜のことは売らなかったんだな? まあ、その友達を売ったのはどうかと思うけど」


「売った、なんて人聞きの悪い。ちゃんと、お互いにウィンウィンな取引だったわよ。それに、あのイケメン大学生さんたちは、別にそんな悪いことをしている訳じゃない、普通の人たちだし」


「芽衣、そいつらとシたの?」


「だとしたら?」


「……そいつらの、アレの大きさはどうなんだ?」


「えっ? ああ……それなりに大きいわよ」


「……そうか」


「まあ、何か薬というか、サプリ飲んだり。あと、上向きになる手術とか受けたみたいだし」


「はぁ?」


「やっぱり、大学生ってお金持ちよね」


「……じゃあ、オレも大学生になったら、チ◯ポ改造しようかな」


「その必要はないわよ」


「へっ?」


「隼士くんは、小さいから、可愛いんだし」


「芽衣、お前……」


「まあ、器も小さいけど。友達のフリして、加瀬くんを貶めたゲス野郎じゃない?」


「じ、事実だけど……今はもう、仲直りしたし。ていうか、お前も他人のこと言えないだろうが」


「うふふ」


「うふふ、じゃねーよ」


「そうだ、今度からパなの」


「からパ?」


「唐揚げパーティー。舞浜さんのお家にお呼ばれしているの」


「へぇ~……大丈夫か?」


「大丈夫よ。ちゃんと、育乳の極意を聞いてくるから」


「じゃなくて……お前、その内……舞浜のこと……」


 それ以上は自分でも怖くて、言葉が続かない。


「……ちょっと、おイタしちゃうかも」


「おイタ?」


「加瀬くんと、ついでにお友達2人もいる前で……あのい……ギャル子さんを、ヒィヒィ言わせちゃうかも」


「……そうかよ」


「良ければ、隼士くんも来る?」


「……いや、遠慮しておく」


「そう? 日頃、いがみ合っている舞浜さんの醜態が拝めるかもしれないのに」


「直視する勇気がないから……動画でも撮っておいてくれ」


「じゃあ、加瀬くんにお願いしようかしら」


「お前、鬼畜だな。だいたい、昇太がそんな、黙って見ている訳が……」


「隼士くん、さっきからずっと、手が止まっているわ」


「えっ? いや、だって……」


「次のテスト、5教科80点を取れなかったら、別れるから」


「は、はぁ~? そんな高いハードルとか……」


「私の彼氏なら、それぐらい当然よ」


「……ちなみに、もし昇太が彼氏だったら?」


「自分はちゃんと勉強しつつ、直前までエッチ行為でメロメロにさせて、テストで赤点を取らせて落ち込ませて、ヨシヨシしながら再テストで合格点を取らせるわ」


「……闇がふけぇ」


「愛が深いのよ」


 どうやら、本当に、オレはヤバい女に手を出してしまったらしい。


 このままだと、命がいくつあっても足りない。


 いっそのこと、こっちから別れを切り出すか?


「ふぅ……」


 ……とはいえ、やっぱりクソほど美少女だ。


 ちょっとした仕草の1つ1つが、いちいち絵になる。


 その唇に押し当てているボールペンに、オレはなりたい……


「手」


「へ?」


「止まっている」


「……はい」


 あれ、オレってこんなに、Mだっけ?




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