第20話 教えて欲しい
タバコと香水の匂いが入り混じった部屋で……
「「……ハァ、ハァ」」
吐息が乱れる。
「ふぅ~。JKギャル、ごちそうさま」
「まあまあ、美味かったなぁ~」
裸の男2人はへら笑いをして言う。
「でも、ギャルと言えば巨乳だからさ。もう少し、おっぱいが大きい方が良かったなぁ」
と、男1人が愚痴をこぼすと、
「えぇ~、ひどいんですけどぉ~」
ギャル1人は口を尖らせつつも、ニコッと微笑む。
年上の、イケメンに遊ばれて、気分は上々なのだ。
「まあ、友達のギャルはもっと巨乳だけど」
「マジ? 何カップ?」
「たぶん、FかG」
「でっか。えっ、その子を紹介してよ。ていうか、その子も芽衣ちゃんと仲良かったりする?」
「うん、まあ……ああ、友達って言ったけど、うちら最近ちょっと疎遠だから」
「ねぇ~……」
表情と声を沈ませるギャル2人を見て、男2人は顔を見合わせてから、
「「じゃあ、もう1発やっておく?」」
すると、
「「やる~♪」」
またすっかり、ご機嫌になった。
◇
ギャルって、ちょっと怖いイメージだけど。
でも、ご機嫌になると……
「「よっ、加瀬ぇ~♪」」
特有のちょいねばっこい声に呼ばれて、俺はビクッとする。
振り向くと……
「……あっ」
リナちゃんの、ギャル友2人がいた。
いや、最近はちょっと疎遠みたいだから、もう友達じゃないかもしれないけど……
「最近、リナとはどーよ?」
「へっ?」
「上手くパ◯れているか~?」
「はっ?」
何か、ちょっとフレンドリーにされているんだけど……
「……トモ、エツ」
ふと、背後から低いトーンの声が聞こえた。
「あ、リナちゃん……」
ちょっと気まずい対面に、ドキッとしてしまう。
「……何か、機嫌よさげじゃん?」
リナちゃんが言う。
「うん、まあね~。実は最近、イケメンとパ◯ったから」
「カレシ?」
「う~ん、ぶっちゃけ、たぶん遊びだけど……でも、良いんだ」
「そうそう、イケメンだからね~(笑)」
「あんたらねぇ~……」
リナちゃんは呆れたようにため息をこぼす。
「ごめんなさい」
ふと、軽やかな声に、みんなして反応する。
「メイちゃん? どしたん?」
「あのね、実は彼女たちにそのイケメンさんを紹介したのは……私なの」
「マジで? どういうこと? てか、いつの間にトモとエツと……」
「うん。ほら、最近リナちゃんと仲良くしているでしょ? そしたら、2人が私に話しかけて来てね。ちょっと、疎遠になっているから、里菜ちゃんと仲直りしたいなって」
「そっか……」
「で、話の流れで、知り合いのイケメン大学生を紹介してあげたの」
「展開が飛躍しすぎ! てか、メイちゃんって、大人しいようで、何気に人脈すごめ?」
「うふふ、そうでもないわよ」
「いや~、マジでちゃんメイさまさまだわ~」
「メイ様に一生ついて行くわ~」
すげえ、ワガママなギャルをこうもあっさりと手懐けるなんて……
いや、佐伯さんは良い人だから、そんなつもりは全くないだろうけど。
でも、何となく……彼女には、逆らわない方が良い気がして来た。
「でもさ~、そのイケメンさん達、もっとおっぱいが大きいギャルが良かったって」
「そうそう~。だから、リナも一緒にパ◯る?」
「はぁ? あんたら、あたしにはショータがいるってのに……」
「ウソウソ、冗談!」
「怒らないで、リナ!」
ギャル2人はリナちゃんに抱き付く。
「分かった、分かったから。あたしも、ちょい大人げなかったよ」
「じゃあ、許してくれるん?」
「うん、まあ」
リナちゃんは、ちょっと照れ臭そうに頷く。
「良かったわ」
佐伯さんが、微笑んで言う。
「はぁ、あたしってば、メイちゃんに借りを作ってばっかだね」
「そんな、気にしなくても良いのに」
「ううん、やっぱり、このままじゃダメだよ。対等な友達でいられない」
「里菜ちゃん……」
佐伯さんは、きれいな口元に指先を添えて、う~んと考える素振りを見せる。
「……この前、私が勉強を教えてあげたでしょ?」
「うん」
「だから、今度は……私が教えてもらおうかな」
「と、言うと?」
リナちゃんが聞き返すと、佐伯さんは少しモジモジしながら、そっと耳打ちをする。
「ふむふむ……えぇ? どうやったら、あたしみたいに巨乳になるかって!?」
「ちょっ、里菜ちゃん! 声が大きいわよ!」
「ナッハハ! 乳もデカいしね~♪」
「リナ、死ね!」
「調子のんな!」
控えめおっぱいなギャル友2人が泣き気味に抗議する。
「あはは、メンゴ、メンゴ~」
リナちゃんは、ご機嫌に笑って言う。
「でも、これは遺伝だからなぁ~。あたしの場合は、パパの方のおばあちゃんが巨乳だから、その遺伝だし」
「そう言えば、前に言っていたね」
俺が頷くと、他の女子3人の目が集まって、ちょっと気まずい。
「まあ、でも遺伝が全てじゃないと思うから。食生活を意識すれば、今よりも大きく出来るかも」
「食生活……やっぱり、お肉かしら?」
「うん、トリニク。あたし、普段からお弁当も唐揚げだから」
「そういえば、そうだよね~」
「美味そうだけど、くっさくてウケるわ~」
「うっさい。あとは、野菜だとキャベツが育乳に良いから」
「なるほど……」
「って、メイちゃん、そんなメモ取るほど真剣な話じゃないよ?」
「ううん、大事なことよ。だって、大きい方が……男の子は嬉しいかなって」
瞬間、佐伯さんにチラッと目線を向けられ、ドキッとしてしまう。
「もしかして、大貫に言われたの?」
「そういう訳じゃ……」
「あのね、メイちゃんはそのままで十分なんだから。その美貌で、さらに巨乳になったら……それこそ、あたしメイちゃんと対等になれないよ」
「そんなことは……里菜ちゃんだって、すごく可愛いじゃない」
「やん、うれちい♪」
「てか、リナってこんなブリッコだったっけ?」
「何か、加瀬とちゃんメイと仲良くなってから、キモくなってね?」
「あ? あんたら、また絶交されたいの?」
「「うわ~ん!」」
ギャル友2人は泣く。
女の子が泣いているのに、何とも平和だなぁ、と思ってしまう。
一方で……
「……おい、加瀬のやつ、何でいつの間にあんなリア充になってんだ?」
「なあ、どっちかと言うと、陰キャ寄りだろ?」
「チャラ男の大貫なら分かるけどさ~」
と、チクリと刺さるような声が聞こえて来た。
そうだ、女子たちがこれから育乳をがんばるように(?)
俺だって、自分をしっかり磨いて、成長しないと。
リナちゃんに、ふさわしい男になるために。
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