第14話 対照的

 出来る人は、行動が早い。


 そして、だいたいの人が『ごはん行きましょう』と言っても、社交辞令で実際には行かずに終わるところを、ちゃんと約束をつけて行く。


 そう、だから、彼女は……


「うふふ、何だか、新鮮だな」


 誰もが振り向き、目を奪われる美少女が、微笑んで言う。


「私に恋人が出来て、しかもその友達カップルと放課後にダブルデートだなんて」


「またまた、謙遜しちゃって。佐伯ちゃんに恋人が出来ても、何ら不思議じゃないよ。けど、よりにもよって、何でこいつ?……って感じだけど」


「うるせーよ、舞浜。むしろ、オレしかいないだろ? 芽衣の彼氏にふさわしいのは」


「はぁ~、やっぱりこいつ、不愉快だわ~。もう帰ってくれない?」


「おいおい、それじゃダブルデートが成立しないだろ。男1対女2の構図になるぞ?」


「じゃあ、ショータが両手に花状態になれば良いじゃない」


「えっ、えぇ?」


「ていうか、舞浜。お前はそれで良いのかよ?」


「何が?」


「だって、芽衣に昇太を奪われるかもしれないぞ?」


「そんな、私は……」


「まあ、佐伯ちゃんは確かにメッチャ美少女で、うっかりするとショータが浮気しちゃうかもだけど」


「いやいや……」


「でも、ショータが言ってくれたから……今は、あたし一筋だって……きゃっ♡」


「……舞浜、お前そんなキャラだっけ?」


「あ?」


「こわっ……おい、ショータ。お前、騙されているんじゃないのか?」


「大丈夫だよ。リナちゃんは、優しくて可愛い子だから」


「ショータ……しゅき♡」


「……って、イチャついてんじゃねーよ」


「良いじゃん、カップルなんだから。ていうか、そっちはむしろ、イチャつきが足りなくない?」


「いや、オレたちは……大人なんだよ」


「ハッ、どの口がほざいてんだか。大方、実際に付き合ってみたら、佐伯ちゃんが高嶺の花過ぎて、相手にされていないんでしょ?」


「んだとぉ~?」


「まあまあ、ケンカはやめてちょうだい」


 佐伯さんが、苦笑しながらたしなめる。


「で、どこに行きましょうか? 私は、コーヒー屋さんで良いかなって思うんだけど」


「コーヒーか……俺、飲めるかな」


「大丈夫だよ、ショータ。ミルクをたっぷり入れれば良いから。何なら、すぐそばに直搾りがあるよ?」


「リ、リナちゃん!?」


「えへへ~♡」


「舞浜、お前マジでキモいぞ」


「あぁ?」


「……こわっ」


「ショータ、あたち、やっぱりこいつ嫌い~! 今すぐ絶交して~!」


「黙れクソビッチ」


「んだと、クソチャラ男」


 リナちゃんと隼士が睨み合う。


「ちょ、ちょっと、2人とも……」


「はぁ~……まあ、ケンカするほど仲が良いって言うし。隼士くんと舞浜さん、見た目的には同系統だものね」


 と、佐伯さんが微笑んで言う。


「佐伯ちゃん、冗談でもよしてよ。あたし、こんなクソチャラ野郎とそんな繋がり求めていないし」


「それはこっちのセリフだよ。ユル◯ンビッチになんて興味ねーし」


「うわ、この男……キモ、死ね、カス」


「ガチで引いてんじゃねーよ」


「でも、隼士。今のは、お前がひどいぞ」


「いや、まあ……」


「それに、リナちゃんは……っと、何でもない」


「加瀬くん、どうしたの?」


「ほ、本当に何でもないから」


 俺は焦って誤魔化しつつ、チラとリナちゃんを見る。


 彼女は、頬を真っ赤に染めて、顔をうつむけていた。


 こんな状況で申し訳ないけど、可愛すぎる。


「はぁ~、もう喉かわいたわ。コーヒーでも何でも良いから、さっさと店に入ろうぜ」


「ええ、そうね」


 微笑む佐伯さんと、ダルそうな隼士のカップルが先導して。


 俺とリナちゃんは、その後についていく。


 すると、リナちゃんが、少し顔をうつむけたまま、そっと俺の手に触れる。


「あっ……」


 顔を向けると、リナちゃんは、シーッと指を立てる。


 別に、内緒にすることもないだろうけど。


 何となく、気持ちは分かる。


 この、ちょっとしたドキドキ感が、たまらないかも。




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