第8話 ミルクまみれ

 イケているギャルと付き合ったからって、俺の学園生活が一変する訳ではない。


 少なくとも、周りの俺に対する目は変わっていないだろう。


 底辺とまでは言わないけど、冴えないやつ。


 それが俺に対するクラスメイトの評価だろう。


 まあ、けど公表していない事実2つが知られたら、またその評価は変わるかもしれない。


 ずっと好きだった子を、友人(だったやつ)にNTR、あるいはBSSを決められて。


 でも、その後に、なぜかイケているギャルと付き合うことになった(お試しだけど)。


 んっ、これって、プラマイゼロになるのかな?


 いや、それとも、後者の方がポイント高くて、何とかプラスに転じて……


「ねえ、加瀬かせぇ」


 俺はビクッとする。


 なぜなら、その呼び方は、ギャル特有のねばっこさがあった。


 いや、陽キャにそんな陰キャみたいな表現は失礼だしふさわしくないかもだけど。


 とにかく、俺はビビりながら、振り向く。


 ギャル彼女が出来ても、他のギャルは怖い。


 けど……


「……あれ?」


 振り向いた先にいたのは、どこか見知った顔。


 そう言えば、このギャルたちは……


「加瀬って、最近リナと仲良くね?」


「えっ?」


「まさかとは思うけど……付き合っていないよな?」


 ギクリ。


「い、いや、それは……」


「バカ、あんた、それはナイナイ。いいとこ、セ◯レでしょ」


「あはは、そっか。ていうか、オモチャか。たまには、童貞でも食ってみるか~って」


 ギャル2人は笑う。


 全くもって、おっしゃる通りです。


 悔しいけど、俺は何も言い返せず、顔をうつむけるばかり。


「……絶交しようかな」


 ふいに、どこかドスの利いた低い声がして、ビクッとする。


 振り向くと……


「……ま、舞浜さん」


「って、リナじゃん。え、ていうか、いま何て言ったの?」


「あんたらと、絶交しようかなって」


「はぁ? いきなり何で?」


「だって、ショータのこと、バカにしたし」


「いや、でも……どうせ、お遊びくんでしょ?」


「そうそう」


「…………」


 舞浜さんは、沈黙している。


「……どちらにせよ、ショータをバカにしないで」


「リナ……」


「あと、もうしょうもない男とか、紹介ってか……レ◯プまがいのことするような奴、あたしと引き合わせないで」


「レ、レ◯プって……だって、あんた、散々オトコとヤリまくりでしょ?」


「そうだよ~。まあ、学内の男とはウワサ聞かないけど。どうせ、外で色んなオトコと……」


「ウザい」


 舞浜さんの一言で、ギャル2人は押し黙る。


 心なしか、顔が青ざめている。


 俺もぶっちゃけ、怖いけど……


「……行こ」


 ギャル2人は去って行く。


 その場に残された俺と舞浜さんは……


「……ごめんね、ショータ」


「いや、俺は全然……ただ、その」


「んっ?」


「舞浜さん、さっき……レ、レ◯プって……大丈夫なの?」


「ああ、うん。レ◯プって言っても、未遂だし、ていうかカラオケボックスで、バカがいきなりチ◯コを見せて来ただけだから」


「な、何か……すごいね」


「幻滅した? あたしのこと」


「いや、そんな……むしろ、ありがとう。俺なんかのこと、かばってくれて」


「俺なんかって、言わないで」


「えっ?」


「ショータは、あたしの……彼氏なんだから」


 舞浜さんは、今までになく、頬を赤らめて言う。


 俺はドキッ、と胸が高鳴った。


 ああ、これはいけない。


 どうせ、遊びだとは分かっている。


 分かっているはずなのに……ガチ恋しそうだ。


 見た目だけじゃなく、本気で中身から、心から……


 この子のことが、好きになりそうだ。


 ていうか、もうなっている。


「そうだ、ショータ。今日も、一緒にお昼たべる?」


「あ、うん」


「今日はね、唐揚げだよ? ほら、この前、ショータがモミモミしてくれたやつ」


「あ、あれか。まだ残っていたんだ」


「うん、時間が経ってちょっと硬くなったからさ。アレンジ加えておいた」


「アレンジ?」


「うん、ミルクまみれにした」


「ぶふっ!」


「ぷはっ、予想通りの反応、ウケる」


「ま、舞浜さん……」


「大丈夫、卑猥な意味じゃないから」


「分かっているけど……」


「牛乳に浸して、煮込んだの」


「へぇ~、それ美味しいの?」


「うん、美味しいと思うよ。だって、直搾りだし」


「何が?」


「ミルク、あたしの」


 俺は驚愕する。


「か、顔っ……」


「ま、舞浜さん……まさか、そのお腹に、命が……」


「ショ、ショータ、し、死ぬ……死ぬぅ~」


 舞浜さんは、命が宿っているやもしれぬお腹を抱えて笑う。


「ち、父親は……俺、な訳ないよね。だって、まだ一度もしていない、童貞のままだし……」


「ふふ」


「その笑みが怖い!」


「……なーんて、ぜんぶ冗談だから」


「で、ですよね~」


「まあでも、妊娠していなくても、ミルクが出る人はいるよ?」


「ま、まさか、舞浜さんは……そうなの?」


「ショータ、目がギラつきすぎ」


「うっ」


「そんなに、あたしのミルク欲しいの?」


「へ、変態チックだなぁ……」


「どうなの?」


 ずい、と迫られる。


「そ、それは……将来、ちゃんと可愛い赤ちゃんに、あげてください」


 俺はそう答えるので精一杯だった。


 ていうか、これ以外のアンサーは、もれなくギルティー。


「……じゃあ、ショータがパパになってね」


「……はい?」


 俺はキョトンとしたまま、目の前の舞浜さんを見る。


 彼女もジッと、俺のことを見つめていた。


 え、何コレ……


「……わ、分かったよ。例え、俺の子じゃなくても……舞浜さんのためなら、養育費を……」


「って、アホか」


 ベシッ。


「あいてっ」


「全く、これだから童貞くんは」


「ご、ごめんなさい」


 もはや、訳が分からないけど、とりあえず謝罪しておく。


 やはり、童貞であるだけで、ギルティーなのか……


「で、いつ卒業式する?」


「そ、卒業式?」


 何の?とは聞けない。


 いや、聞くまでもないか……


「……あ、何か、ハラが痛くなって来た」


「このへたれめ♡」


 まだもう少し、卒業まで時間がかかりそうだ。







次回予告


「じゃあ、今度こそ……本当に揉んじゃう?」


 本気で好きになったギャル彼女の巨乳から目が離せない。


「コレ買う時、ショータがキョドりまくりで、笑いを堪えるの大変だった」


 極薄、0.01mm……そのワードだけで……


「……まあでも、それ以上に、もう我慢できないんだ」


 少しおどけつつも、何だかんだ、彼女も真剣で……


「舞浜さん……好きだ」


 今まで、いろんな男と経験が豊富であろう彼女を、童貞の彼は彼なりに、必死に満足させようと胸に誓う。




 次回もお楽しみに!




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