第5話 プチ狙われるデカパイ

 ギャルって、基本的に騒がしいイメージだ。


 けど、その中では比較的、舞浜さんは大人しいというか、クールな感じ。


 だと思ったけど……


「ぷはっ! ショ、ショータ、写真映りが下手過ぎぃ!」


 ……う、うるせえ。


 ちなみに、いまはプリクラの撮影中です。


「わ、悪かったね」


 さすがに、心で思ったように、うるせえ、とストレートに言う勇気はないから。


 そんな風に、ひよった反抗しか出来ない。


「まあ、大丈夫。今の時代、余裕で盛れるから」


「便利だね」


 とか相槌を打ちつつ、盛るというワードを聞いて、ついつい……舞浜さんの、胸元に目が行く。


 えっ、もしかして、それも盛っていたりとか……


「ショータ」


 ビクッ。


 やばっ、ガン見していたのがバレたか?


「こんな感じでどう?」


 どうやら、違うらしい。


「あ、うん……よく分からないけど、何かキラキラしているね」


 これがリア充のオーラか……まあ、俺は所詮、陰キャ寄りだけど。


 ていうか、このプリクラを見て……やっぱり、不釣り合いだなぁ、と思う。


 まあ、所詮はお試しカップルだから。


 百戦錬磨のギャル子さんとしては、童貞を食べてみたいだけだろうし。


 でも、その前に俺は殺されてしまうかもしれない。


 悩殺という、惨殺を。


 だって、鼻血ブー垂れて死ぬとか、かっこ悪すぎだろ。


 まあ、オ◯ニーした状態でガチの昇天をするよりはマシかもしれないけど。


「さてと、いっぱい笑って、お腹も空いたことだし……ランチにしよ」


「ああ、うん……何にしようか?」


「そんな気取ったところじゃ無くても良いよね。何なら、チェーンのうどん屋でも良いし」


「うどんか……良いね」


 という訳で、俺たちはそこを目指すことにした。


 そして、街中だから、すぐに見つかる。


 けど、混んでいた。


「まあ、休日だし、どこも混んでいるよ」


 という訳で、並んで待つことに。


「ふぅ、暑いなぁ」


 その間、舞浜さんは、胸元をパタパタとする。


 チラ見える谷間に、汗の玉が浮かんでいた。


 クソほどエロい。


 例え、これが盛り乳だとしても……


「あっ、盛りそばも美味しそう」


 ドキッ!


「えっ?」


「ほら、向かいの店」


「ああ、そば屋か……でも、ちょっと高そうな店だね」


「うん、そうだね。あ、良いこと思い付いた」


「えっ、なに?」


「ショータに対して貯めたポイントで、美味しいモノをごちそうしてもらおうかな~?」


「な、何と……ま、万札が飛ぶのはやめてね」


「いや、さすがにそこまで行かないから。せいぜい、ラーメン大盛りトッピング全部乗せで3000円とかくらいじゃない?」


「ああ、なるほど……ていうか、そんなに食えるの?」


「う~ん……一緒に食べよ?」


 小首をかしげて言う。


 不覚にも、あまりにも可愛すぎて、一瞬だけ頭が真っ白になった。


 このギャル子さん、悪意なく俺を殺すかもしれん。


 いや、このチャーミングさも全部、計算の内か?


 失礼ながら、勉強は出来るイメージないけど。


 ギャルだし……


「あ、順番きたよ」


「あ、うん」


 店内へ。


 混み合っている。


 まあ、ぎっしりすし詰め状態ではないけど。


 すれ違うのに、ちょっとだけ気を遣うな……


「……あっ」


「んっ、どした?」


「い、いや、何でも……」


 舞浜さん、すれ違う時、大丈夫かな?


 そのご立派なお乳(盛り乳かもしれないけど)のせいで、すれ違いが難しいかもしれない。


 あるいは……


「……むっ」


 その時、前方から、おひとりさまのおっさん客がやって来た。


 つまようじをシーシーとしながら、どうやらご退店のようである。


 そして、俺は見逃さない。


 そのおっさんが、嫌らしい目を、舞浜さんに向けていることに。


 さらには、その視線が、お乳に向けられている。


 とうとう、すれ違う瞬間。


 お互いに、半身状態になるけど。


 その際、おっさんが、肘を突き出す。


 あ、この野郎、と。


 気付けば、俺は動いていた。


 狭い通路にて、なぜか割り込む形で、おっさんと舞浜さんに挟まれる。


 そう、この一瞬、俺は緩衝材かんしょうざいになった。


 片や、苛立ち、片や、極楽。


 この世の天国と地獄を同時に味わう。


 おっさんは、少し焦ったような、それでいて、苛立つような目を俺に向けて。


 そそくさと、店から出て行った。


 ふぅ、良かった。


 エロオヤジから、ギャルの巨乳を守ったぞ。


 なんて、ちょっとだけ、感慨かんがいにふけった時。


 もにゅっ、と。


 今さらながら、背中に至極の柔らかみを自覚した。


「あっ……」


 と振り向くと、舞浜さんが笑顔でいる。


 な、何か、怖いぞこの笑顔は……


「……変態くん♡」


「いや、その、これは……」


「……なーんて、嘘だよ。いま、あたしのこと、助けてくれた?」


「ま、まあ……だいぶ、カッコ悪いけど」


「カッコ悪いというか、ウケるんだけど」


「うぅ……」


 やっぱり、俺は二枚目にはなれないなぁ。


「……ありがと、ショータ」


 落ち込みかけたところ、こそっと耳元で囁かれる。


 俺はハッとして、顔を上げる。


 自然と、胸の鼓動も上がった。


「ほら、ボケッとしてないで。他の人の邪魔になるし、早く進も?」


「う、うん」


 そして、俺と舞浜さんは、セルフ式のレーンに並ぶ。




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