それはきっと、語られることのない誰かの物語
第77話 それは違うよ
その後、一度
「では……僕はこれで」お茶を飲み終わった
「はーい」
「わかりました」そして
「あ……はい。もう、大丈夫です」
もう死のうとしたりしない。できる限り図太く生きてやると決意したばかりだ。絶対に幸せになってやる。だから、死ぬわけにはいかない。
「では……今度会うときは、同僚かもしれませんね」
そんな言葉を残して、
私の初恋の相手で、今の恋の相手でもある
……絶対に手に入れたいな……今回の一件にも、
……どうしたら
「……じゃあ、私もそろそろ行くよ」
「うん。一人で大丈夫? 送っていこうか?」
「……」そこまで心配されるほど、私は追い詰められていたんだな。だけど、「もう大丈夫だよ。それから……
「なに?」
「ありがとう」私は深々と頭を下げる。「……」
その後の言葉は出てこなかった。お礼の理由を適当につけることはできるけれど、なんとなく意味がないような気がした。お礼の言葉だけで、
「お礼なんていらないよ。私がやったことなんて……犯罪行為のアドバイスしたくらいだし」
「……言われてみればそうかも……」
「そうそう。
「それは違うよ」明確に否定できる。「私は……
だから、
もう一度頭を下げてお礼を言おうかと思ったが……やめた。代わりに
「……」
「……」
お互いに笑い合う。たぶん、それだけで通じあえたと思う。なにが通じ合ったのかはわからないけれど、私たちはこれでいいのだと思う。
「じゃあね」
「うん」
そんな軽い別れの言葉を交わして、私は
さっきまであんなに降っていた雨は嘘のようになくなっていた。太陽が地面に残る雨を照らして、なんだか幻想的な雰囲気が漂っていた。
……
……
やはり、
でも、それでいい。私は
電車に揺られて最寄り駅まで到着する。
今日は久しぶりに、公園の中でも通ってみよう。最近は迂回していたけど……なんとなく中を通ってみたくなった。まぁ
別に変化もない。ただの公園だ。いつもどおりの公園。キレイにも汚くも見えない。それくらい、私の心は安定しているのだと思う。
この安定は、私が死ぬまで続くだろう。いや、続かせてやるのだ。絶対に幸せに……
そのまま家に向かって公園を歩いていると、
「あ、あの……!」
突然、女の子に声をかけられた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。