第33話 271437文字
「正直ね……恋のほうの進捗はあんまりないよ」
「ほう……たしかまだ相手の住所とか、どこに住んでるのかもわからないんだっけ?」
「うん……なんとなく推測はできてるんだけど……」
「そっか……私がやってあげようか? 相手の住所とか推測するの、得意だよ。特技と言っていい」
「なにその怖すぎる特技」ストーカーの才能ありすぎだろう。私も欲しかった。「いいよ。私1人でやりたいし」
「それでまぁ……最近ね……気づいたことがあったんだ」
「なに?」
「私……」私は自分の手元にあるメロンソーダを掲げて、「私は……メロンソーダが好きだったみたい」
「なるほどね」こういう真剣な話題のときは、しっかりと共感してくれる
「……どういうこと?」
「自分の好みより、他人の好みを優先してたってこと。あるいは、世間体を気にしてたのかな? どっちでもいいけど……
そうだと思う。紅茶以外の選択肢を消去していった結果、紅茶を飲んでいただけ。コーヒーは胃が荒れるし、炭酸飲料も苦手だと思っていた。
「メロンソーダを好きだと気づいたきっかけは?」
「……その……私が好きな人がオススメしてる喫茶店に行ったんだ」
「オススメ……雑誌とかに載ってたの?」
「いや……直接聞いた」
「ああ……直接話せるような関係なんだ。もっと、遠いと思ってた」
「一応会話はできるよ。呼んだらだいたい来てくれる」
「ふぅん……よくわかんない関係だね。まぁいいや。そんで、その人オススメの喫茶店で、どうしたの?」
「なんとなくメロンソーダを注文したの。
「なるほど。それでメロンソーダを飲んでみたら……」
「美味しかった」それはもう、こうやってハマるほどに。「今までも……子供の頃に飲んだことあると思うんだけど……本当に当時の同じ飲み物なのかって思うよ。それくらい……美味しかった」
「なるほどねぇ……」
「そうかも」それから、私は笑って見せる。「法律的には良くないかもしれないけど」
「そうかもね」
「え……?」なんとも意外な言葉が飛び出してきた。「唯一……? 私が?」
「うん」
即答されても困る。信じられない。なんで
それに……
「恋敵さんは? その人は友達じゃないの?」
「
その
それはもう器がデカいというより……ただのアホなんじゃなかろうか。
「とにかく……他の友達は、すぐに友達じゃなくなる。ちょっと付き合うと、私に勝手に失望していなくなる。もっと清楚だと思ってたとか、怖いとか、イメージと違ったとか……勝手に難癖つけてくる。私の人格を、そっちが勝手に決めないでほしい」
イメージと違うというのは私も同意だけれど。だが、人格を勝手に決めないでほしいというのにも同意だ。
とにかく、
だけど少し接してみれば……危険思考丸出しのヤンデレであることが判明する。その時点で友達離脱する人も多いだろうな。私は別に気にしなかったけど。
「他にも私のことを避けないでくれる人もいたんだけど……その人はお姉ちゃんになりましたとさ」
「……
「そうそう。あの人も器がデカいから……私のことを受け入れてくれる。彼のことを追いかけ回すのも許してもらえてる」
「……それは許さないほうがいいともうけど……犯罪行為だし」
「じゃあ私は
「そりゃそうだ。続けて」
ぐうの音も出ない。私も犯罪行為をしてるんだった。当たり前すぎて忘れてた。
「ともあれ
「自業自得って……」風光明媚の
「いろいろあったのさ。高校時代のことを話すだけでも……そうだね、271437文字くらい語らないといけなくなるかな」やけに具体的な数字だな。「それ以降も……まぁいろいろあったの。でもまぁ一番の罪状は……そうだね。今の現状を楽しんでること」
「た……」なんだかよくわからなくなってきた。「楽しむ?」
現状を? 恋人がいるところを楽しんでるのはわかるけど……ストーカーがいるのに?
「うん。自分の恋人と一緒にいて……私に追いかけ回される。しかもさらに他の女の子にまで手を出そうとしてて、幼なじみのことも諦められてない。そんな優柔不断でギャルゲーのムカつくタイプの主人公みたいな現状を、彼は楽しんでるから」
「へ、へぇ……」
奇特な人もいたもんだ。ちょっとばかり私には理解できない。
でもまぁ……その彼とやらが楽しんでるならいいか。周りの人も理解があるようだし……私が口をだすことじゃないな。私が口を出せることじゃないな。
……仮に関係者だったとしても、たぶん私は逃げるけれど。
とにかく……もう少し会話は続く。
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