崩壊日常編

13、リフレイン

 えている。街が燃えている。一面が、火のうみだ。

 これは、あの頃の記憶きおくがリフレインしているのだろうか?いや、違う。何故か、俺はそう断言だんげんする事が出来た。それは何故?

 分からない。けど、断言は出来た。これはただのリフレインではない。これはきっとあの頃の再現さいげんなのだと。あの頃の、文明崩壊の記憶。その再生なのだと。

 俺の中で、何かがげていた。

 其処に誰かがる。誰かが居る事は理解している。けど、それが誰なのかがイマイチ判別が付かない。何故か、その人物だけ黒くり潰され人物像どころかその表情すら読めない。

 その人物は、黙々もくもくと破壊活動を続ける。何故、街を壊すのか?何故、世界を滅ぼそうとするのか?その理由りゆうは分からない。いや、或いはその人物自身にも理解出来ていないのではあるまいか?何故か、俺はそう直感出来た。

 証拠しょうこは無い。だが、何故だか確信かくしんはあった。こいつは違う、こいつじゃないと俺の中で何かがげている。

 そして、これ以上見てはならないと。今は知ってはいけないと脳が警鐘けいしょうを鳴らし、徐々に意識が浮上してゆく。今は知るな。理解りかいするな。まだ早いと……

 いやだ、まだだ。もっと俺は知らなければいけない。

 何故、世界はほろびなければいけなかったのか。どうして文明は滅びてしまったのかを俺は。きちんと理解して、その上でこの世界をすくわないといけないから。でなきゃ俺は、この世界で……みんなに……

 ぼやけていく視界しかいの中で、黒塗りの人物だれかに俺の両親とおぼしき人物達が……

 ・・・ ・・・ ・・・

 其処で、俺は目をました。

ゆめ……」

 あてもなく、伸ばしたままさまよう腕をろす。気付けば目には涙が玉となり溢れている。それが、こぼれ落ちた。

 コンコンと、ドアをノックするひかえめな音が聞こえた。続いて、ユキの声が聞こえてくる。

「クロノ君、起きてる?朝食ちょうしょくの時間だよ」

「あ、ああ……もう目がめているよ」

 のそのそと起き上がる。くそっ、何て夢だ。そうぼやきたくなる自分をおさえる。

 ドアが開き、ユキが中をのぞいてくる。

「クロノ君……ってどうしたの?顔色が悪いよ?」

「ああ、少しばかり夢見ゆめみが悪くてな。うなされてた」

「そう、大丈夫だいじょうぶ?」

「ああ、別に問題ないよ」

 その後、着替きがえてから食堂に向かう旨を告げる。ユキは了承りょうしょうしてそのまま部屋を出ていった。そう、あれはたかがゆめだ。夢でしかないんだ。

 だから、きっとあの黒く塗り潰された人物が誰かにていたなんて気のせい。所詮は記憶の整理機能が見せたありもしない幻影なのだろうから。

 そう俺はり切り、タオルで寝汗をぬぐい、衣装棚から取り出した衣服に着替える。

 さあ、今日も新しい一日が始まる。文明の再興さいこうの為、そして人類の救済の為に頑張るとしましょうか。

「さあ、今日も一日がんばろう」

 そう、自分自身で気合きあいを入れる。一生懸命、頑張って生きなければ。

 みんなの為に、この世界せかいの為に……

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