9,怪物の王
夜、11:32———俺は微妙な時間に目が
すると、
「……………………」
そっと
話の
「……やはり、最近になって
「ああ、やはりこの異常には”王”が関わっている可能性が
「王、ですか……やはり、甲殻バジリスクとなると”チェシャ”ですか?」
「いや、或いは”ゲオルギウス”が関わっている
王、その言葉にユキが
それに、”チェシャ”に”ゲオルギウス”だって?一体何の話をしているんだ?
どうも
「何をしているんだ?」
「っ⁉」
背後から声が掛かった。声の主は神薙ツルギだ。俺は、思わず肩を
ついでにヤスミチさんとユキも驚いた。勢いよくこちらに
流石にバツが悪くなり、俺は素直に二人の前に出ていった。二人は驚いたような、それでいて何処か
「お前、
「……あー、ついさっきから?丁度、ユキが外来種が
「……………………」
ヤスミチさんの
「で、さっき言っていた
「……まあ良い。これから
ヤスミチさんは何処か
それは、この世界に住まう六体の怪物種の
「この
「怪物の、王?」
「そうだ。それぞれオロチ、ツチグモ、チェシャ、ゲオルギウス、セイテンタイセイと存在し、それぞれがそれぞれの領土で
オロチ、ツチグモ、チェシャ、ゲオルギウス、セイテンタイセイ。と、俺は指を折りつつその数を一匹一匹と数えていく。しかし、数が
先程言った話では確か、王は六体ではなかっただろうか?
「六体目は?」
「………六体目は、先程言った王達の中でもとりわけ
「謎?」
ヤスミチさんは重々しく
何処か、ユキの表情が冴えない気がするのは気のせいだろうか?何かに
「……六体目の王は、その名を”
ユキの言葉に、俺は僅かに疑問を
「本当に、そんな奴が居るのか?」
「居る、それだけは
そう答えたのは、ツルギだった。力強く、
ツルギの表情は重々しく、それでいて深い
「奴は、アバターは人類文明を直接滅ぼした存在だ。世界に
「ああ、それに他五体の王達がアバターの事を
ツルギの言葉にそう
それは、やはり実際に人類文明の滅亡を経験したとしても
或いは、俺自身が悪意や敵意に対してそれを信じる事が出来ない
「……どうして、星のアバターは人類文明を滅ぼしたのかな。どうして、文明は滅びなければならなかったのかな?」
その問いに対し、やはりツルギとヤスミチさんの反応は
「そんな事は
「……………………」
それでも、俺はやはり何も知らないままに敵意を向けたくない。そう思うのは果たして甘えだろうか?どうにも、それだけは分からなかった。
……と、其処で気付く。先程からユキが
ユキの方を見る。そして、ぎょっとした。ユキは、目に見えて
「……ユキ、大丈夫か?どうした?」
「何でも、ないよ……」
何でもない。そう言うが、しかしユキの表情はとても
そんなユキの表情に、ヤスミチさんは何かを考えるような顔で問う。
「……ユキ、お前もしかしてアバターについて何か知っているんじゃないか?」
「…………っ。い、いえ……私は何も知りませんから。
びくっと震える。震えながらも必死にそう
その姿に、ヤスミチさんは更に問いを重ねようとする。しかし、それを片手で制してユキは息も絶え絶えに言った。
「すい、ません……私は、そろそろ…………」
「…………おう」
ユキは、ふらつきながらも何とか歩きプレハブ小屋の中へ戻っていった。
ユキの姿が消えた後、ツルギは
「どういう事だ?さっきのユキの様子も
「ああ、とはいえ俺だって
その言葉に、俺だけではなくツルギも驚く。そう、つまりユキは
或いはそれが彼女の
一気に、ヤスミチさんとツルギの表情に
「少し、明日にでもユキに
「ああ、その返答次第では……」
「返答次第では、何だ?」
気付けば、俺の口から
「……クロノ?」
「ユキは、俺達の
「……いや、しかしよクロノ」
そう、言葉を
ヤスミチさんは口を
「しかし何だ。お前等、一体ユキの何を見てきたんだ?出会って
「それ、は……」
「あの甲殻バジリスクの時だってそうだろう。逃げまどう人達を
「……………………」
俺は一度だけ呼吸を
「ユキは仲間でしょう?今までずっと、皆の為に頑張って。身体を張って必死に働いてきた筈だ。そんな仲間を追い立てて本当にそれで
「……………………」
「……………………」
黙り込む二人。そんな二人に、俺は言う事は
俺の脳裏には、未だにユキの怯えた表情が
分からない、けど何時か
・・・ ・・・ ・・・
「ごめんなさい……ごめん、なさい…………」
ひたすらに、ユキはベッドにもぐりこんで何かに
果たして彼女は何に怯えているのか?何を恐れているのか?
分からない。けど、それでも白川ユキが怯えて震えている事だけは確かだった。
「私のせいで……
誰も居ない室内で、ユキは一人怯え続けていた。その姿は、余りにも
「クロノ、君……」
「何だ?」
「っ⁉」
突然の返答に、ユキは思わずびくっと身体を
そう、遠藤クロノだった。
「ど、どうして
「ごめん、こっそり入ってきた」
「ど、どうして……」
「ユキの事が
「で、でも……」
ユキがそれでも何かを言おうとしているのを、クロノは片手で制した。思わずユキは口を噤んで黙ってしまう。
クロノがあまりにも
思わず黙り込んだユキに、クロノは何処から取り出したのかトランプを一束ほど取り出して一言だけ言った。
「
「…………うん」
ユキは思わず、頬を朱に
つまり、クロノはこう言いたいのだ。目一杯、一緒に遊んで先程の事は忘れてしまおうと……
その優しさに、思わずユキは胸の奥が高鳴るような
そう、これはあくまで錯覚なのだ。気のせいでしかないのだろうと。
そう
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