　スノウリリィがリーシャを連れて行って男性陣は一気に静かになった。

　辺境の女性陣は肝っ玉の大きい気持ちも体も立派な人が多い。

　まれに王都や他所からグレーデン辺境騎士団の騎士と婚約予定の令嬢が来るが田舎過ぎることと住民の大きな声、騎士たちの体格に驚いてほとんどの場合逃げ帰ってしまう。

　もちろん平均的な一般の女性も居るが辺境生まれで環境に慣れているだけで、外部の貴族女性がこの地に馴染むのは難しいようだ。

　王家から1月ほど前に婚姻の命令とその理由を知らされてはいた。保護で良いのではとは思ったが中々嫁を貰わない辺境伯に対してのお節介も兼ねているのかも知れない。　

　だが体格の良いジュリアスの嫁としてやってきたのは辺境基準の子供サイズより少し下。

　現れたのは辺境基準では10歳いかないくらいの色白な、そして痩せぎすな女の子なのだ。

　日焼けして走り回るプクプクした幼児を見慣れている男たちにとって、子供と女性は大切な宝だと思っている辺境の騎士にとっては、あり得ないほど庇護欲をそそる子供であった。

　そして痩せすぎではあるものの大層可愛い人形のような女の子なのだ。

　特に夫となるジュリアスにとって大変動揺する問題があった。

「結婚したら床を共にしないと女性に屈辱を与えてしまうのだろう？どうしたらいいんだ？ロジャー」

　ロジャーは少し眉を顰めてジュリアスの眉間を弾く。

「今手を出したら逆に犯罪者だ。周りも無茶なことだと理解するだろう」

「だよな！？」

　ジュリアスはホッとしたが

「栄養失調が解消したら徐々に体が変わってくるだろう。背はあまり伸びないかも知れないが体力が変わってくる。それまでは心の安定を大事にまず信頼を得るんだな」

　と言われてしまう。

「信頼・・・」

　見た目が幼いとは言えど、16歳の貴族の女性にどう接したものかと困惑する28歳。

「あの子は暴力はないとは言え、放置という虐待を受けていたのだろう？愛情を与えられなれてない。だから愛情を向けられ慣れていない。とにかく愛される存在であると認識させることが大事だ。心と体の成長はリンクしている」

　啜り泣きが聴こえて、ロジャーが横を見るとルドガーが歯を食いしばって涙を流している。

「あんなに可愛い子を愛さないなんての。体が成長出来ないほど食べられん状況に置くなど信じられん。わしはいっぱい可愛がるぞ！ジュリアス！泣かせたら承知せんからな！」

「当たり前だ！」

　何かが燃え滾ってる二人に対してロジャーは、相変わらず暑苦しいと思うのだった。

「ともかく結婚式をするまでは婚約期間のようにして接しよう」

「いやお前の存在に慣れてもらうには部屋は一緒の方がいいだろう」

　二人でいろいろ言い合っているが、おそらく何を決めてもスノウリリィが最終的に決めていくだろうなぁと思うすっかり壁になっていた騎士と侍女たちなのであった。

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