真の英雄の称号 ※アデル視点
■アデル視点
「アナ、今回も楽勝だったね」
王都へと帰還する馬車の中、僕は隣の席に座るアナに微笑みかけた。
「うふふ……ですが、これは当然の結果です。英雄であるアデルさんが、こうしてご足労なされたのですから」
「あはは、まあね」
僕達は、国王陛下及び教皇
だけど、街に到着してから半日も経たないうちに全てを
「それにしても……やっぱり教皇
そう……異教徒どもは、あろうことか王国から独立しようと、武装蜂起の準備を
街に入るなり、全員が有無を言わさずに生意気にもミスリル製の武器を手にして僕達に襲いかかってきた。
もちろん、あっさりと返り討ちにしてやったけどね。
その後、みんなで街を調べてみると……ミスリル製の武器や防具が、大量に発見されたんだ。
本当に、僕達が来なかったら王国はどうなっていたことか。
「まあまあ……アデル殿、既に終わったのだしもういいではないですか。それより、王都までの道中はゆっくりしましょう」
新たに加わった仲間で[聖騎士]の“フリーデ”が、ニコリ、と微笑む。
教皇
実際、彼女のステータスは素晴らしい。
ほとんどのステータスが “A”で、スキルも優秀なものばかり。まさに英雄の仲間に相応しいものだ。
もちろんそれだけじゃない。
容姿だってアナやアメリア王女に引けを取らないし、彼女の父は教会ナンバー二の“ユンカー”
「だが……おかげで俺の剣が、
愛剣を見つめながら肩を落とすのは、フリーデと同じく仲間に加わった[剣聖]の“エアハルト”。
ブロイツェン王国の誇る武の象徴、“シャルンホルスト”侯爵家の長男で、いずれは彼が王国を守ることになるだろう。
実際、その実力も確かで、シャルンホルスト家始まって以来の才能とのこと。
つまり、王国最強の剣士はエアハルトだということだ。
といっても、僕は王国にいる間は
「うふふ。ですがこれで、ますますアデルさんの名声が高まってしまいますね」
「はい。もはや王都において、英雄アデルを知らないものなどいないでしょう」
「悔しいが、俺もそれは認めるしかない」
微笑みながら誉めそやすアナに、頷くフリーデと肩を
あはは、本当に頼もしい仲間達だよ。
あのゲルト達と比べたら、雲泥の差だね。
ただ……すっかり落ちぶれたガラハドとニーアはともかく、ゲルトとライザだけは未だに行方が分からない。
王国や教会の力を借り、血眼になって探しているにもかかわらず。
「……アデルさん、またあの二人のことを考えているのですか……?」
無意識に握りしめていた拳に白く小さな手を重ね、アナが心配そうに僕の顔を
「アデル殿が以前所属していたパーティーの者、でしたね」
「確か、アデル君の実力も見極められずに追放するだけでなく、まるでヒステリーを起こしたようにアナスタシアと他の仲間も追放したとか」
そうだ……今から考えれば、あの時のアデルは異常だった。
僕を追放することは既定路線だったみたいだけど、わざわざ[聖女]のアナまで追放したりするだろうか。
しかも、あの時のアデルはアナに対し、憎悪に満ちた視線を向けていた。
あれからアナにも聞いたけど、アデルに恨まれるようなことをした覚えはないというし、不思議で仕方がないね。
「あはは……本音を言えば、今の僕にはこんなに素晴らしい仲間がいるから、あのアデルを見返してやりたかったんだけどね」
そう言って、僕はかぶりを振る。
まあ、もちろん僕は、ゲルト達の捜索を諦めてはいないけどね。
僕は絶対に、あの二人が悔しさに打ち震える姿を見ないと気が済まない。
この英雄である僕を馬鹿にして追放した、アデルとライザに
◇
「アデル様! ご無事に戻られて何よりです!」
オルドベルクの街から王都へ帰還し、報告のために王宮へ訪れると、アメリア王女が出迎えてくれた。
あはは、どうだいアデル。
あの王女でさえ、僕のためにこうやって待っていてくれるんだ。
偽物のオマエじゃ、あり得ないだろう?
「アメリア殿下、ただいま戻りました」
「アデル様……」
僕は
白く透き通った肌をほんのりと朱色に染め、アメリア王女は
「……アデルさん、早く国王陛下への報告を済ませましょう」
「そうですとも。教皇
背後から、底冷えするような声で告げるアナとフリーデ。
あ、あはは……二人共、そんなにやきもちを焼かなくてもいいのに……。
「まあ、こればかりは英雄である以上、仕方ないのでは?」
僕の肩をポン、と叩き、エアハルトが肩を
そうだね、君の言うとおり仕方ない。
なら、後でちゃんと二人の
そして。
「アデルよ、よくぞ戻った。また、お主の活躍、
「はっ! ありがたき幸せ!」
僕の報告に、国王陛下が満足げに頷いた。
これまでも国王陛下や教皇
ただし、あの既に死体になっていた、黒竜ミルブレアを除いて。
今も伝説の黒竜を倒したのが誰なのか、王国内で議論になっているけど、僕にとってはどうでもいい。
あれくらい、僕だって可能だしね。
「さて……アデルには、どのような褒美がよいか……」
国王陛下が顎に手を当て、思案する。
「陛下。アデル殿のこれまでの活躍や
初めての謁見の時に僕を疑問視にしていた側近が、まさかそんなことを提案してきた。
あはは! さすがにこの僕の存在を無視できなくなって、手のひらを返してきたよ! まあ、それが賢明だよね!
「確かにお主の申すとおりじゃ。よし! アデルには侯爵位を与えるとともに、ミズキ姓を名乗ること認める!」
「「「「「おお……っ!」」」」」
国王陛下の言葉に、謁見の間にどよめきが起こった。
当然だ。ただの平民にいきなり侯爵位を与えることもそうだけど、あの伝説の英雄レンヤ=ミズキと同じ姓を与えたのだから。
つまり……僕はある意味、王族に並ぶ者として認められたということだ。
「……思うところはありますが、アデルさんがミズキ姓を名乗るのは相応しいことですから」
僕の後ろに控えるアナが、ポツリ、と呟く。
彼女は僕が王国に取り込まれるのではないかと危惧しているみたいだけど、心配いらないよ。
だって。
――いずれ王国は、僕のものになるのだから。
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