[英雄(偽)]の隠された能力
「ライザ! そっちだ!」
「うん!」
バジリスクの討伐を俺とライザだけでするなんて
「【ファイアボール】!」
ライザが放った直径三十センチの火球が、バジリスク目掛けて放たれる。
バジリスクも、これ以上攻撃を食らえばまずいことを理解しているのだろう。迫る火球を必死に
だが。
「これで……終わりだッッッ!」
俺は一瞬の隙を突いてバジリスクに飛び乗り、その眉間に剣を思いきり突き刺す。
――ズウ……ン……。
バジリスクは最初こそ暴れたものの、すぐにゆっくりと地面に横たわり、ようやく息の根が止まった。
「ふう……」
「ゲルト! やったね!」
深く息を吐くと、ライザは疲労
「ライザ……俺達、あのバジリスクをたった二人で倒したんだな」
「うん……やっぱり君が弱いなんて嘘だよ。私の幼馴染は、誰よりもすごくて素敵なんだから」
胸に頬ずりをするライザを、俺は労うように藍色の髪を優しく撫でた。
だけど、しがないB級冒険者の俺達がバジリスクを倒したんだから、感慨も
しかも、これで三体……いや、メルエラさん達が用意してくれた瀕死のバジリスクを含め、四体も倒せた。
メルエラさんやバルザールさんが言っていた、『
「フフ……己の能力や経験、それら全てを最大限駆使した、見事な戦いだったぞ」
「「うむうむ」」
メルエラさん達が、微笑みながら拍手してくれた。
こ、これはこれで照れるな。
「さて、バジリスクを四体倒し、目標だったスキルポイント二百も獲得できた。これで、ゲルト君も新たなスキルを獲得できるな」
「は、はあ……」
メルエラさんはそう言うが、正直俺はピンときていない。
そもそもスキルというものは、経験を積んで自然に身につくというのが、この世界の常識なのだから。
「【ステータスオープン】」
―――――――――――――――――――――
名前 :ゲルト(男)
年齢 :18
職業 :英雄(偽)
LV :20
力 :C
魔力 :C
耐久 :C
敏捷 :C
知力 :C
運 :C
スキル:【剣術(中)】【統率(中)】【鼓舞(中)】
残りスキルポイント:222
―――――――――――――――――――――
メルエラさんが、俺の情報を記した文字盤を出現させた。
「ここにある『スキル』の項目に触れてみてくれ」
「は、はい……」
指示されるまま、俺は文字盤におそるおそる人差し指で触れると……っ!?
<どのスキルを獲得しますか?>
そんなメッセージとともに、膨大な数のスキルの一覧が表示された!?
「メ、メルエラさん!」
「うむ。これこそが、[英雄(偽)]が最強である
メルエラさんが、ニコリ、と微笑む。
だ、だけど、確かにどんな
「じゃ、じゃあ、膨大なスキルポイントさえあれば、ここにあるスキルを全部取得することも……」
「残念だがスキルは最大八つまでしか付けることはできない。それは、[英雄(偽)]であってもだ」
「そ、そうですか……」
やはり、そう上手くはいかないみたいだ。
「フフ。だが、ゲルト君はその八つを、スキルポイントの許す限りいつでも自由に付け替えることができる。なら、それは全てを取得していることと意味は同じなのではないか?」
「あ……そ、そうか……」
確かに、その時の状況に応じてスキルを入れ替えれば、常に最適の状態で対処することができる。
はは……まさにこれは、最高の能力だ。
「ゲルト! すごい! すごいよ!」
「ああ! たとえ能力が平凡で大したことがなくても、スキルがあればいくらでも強くなれる!」
俺の手を取って飛び跳ねるライザ。
お前はいつだって、俺のことで喜んで、怒って、悲しんで、楽しんでくれるよな。
なら、俺はこの力でもっともっとお前を喜ばせてみせるとも。
それが、俺の何よりの喜びなのだから。
「ん? 何を言っているんだ?」
「「え?」」
不思議そうに首を傾げるメルエラさんに、俺もライザも呆けた声を漏らしてしまった。
「いや、全てのスキルを取得可能なのは破格ではあるが、それだけでは最強とは呼べないだろう」
「そ、それは、まあ……」
そうだ。スキル全取得で浮かれてしまっていたが、たとえ最強のスキルがあったとしても、俺自身が弱かったらたった一撃で倒されることだってあり得る。
何より、常時付けられるスキルの数は八つ。戦闘中にスキルの付け替えは難しいだろうから、もし相手の能力に見合ったスキルじゃなかったら……。
「フフ、心配するな。もちろん、これだけで終わるはずがないだろう。そのために、バジリスクを倒してスキルポイントを二百集めたのだからな」
どうやら既に頭打ちになっている、俺の平凡な能力についての対策もあるみたいだ。
だけど、一体どうするつもりなんだろう……。
「ではゲルト君。次の段階へと移ろう。スキルの中から、【ドロップ(100%)】と【経験値獲得(10倍)】を選択するんだ」
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