10 結婚式
結婚式は翌日に行われることになった。
見知って2日目で結婚式だ。
スーツのような服をピシっと決めて、会場へ向かう。
なんたって今日は俺たちが主役なんだからな。
王城に隣接している大聖堂のような所で式は執り行われるようだ。
式は午前10時開始ということで8時ごろに会場に到着。
控室に入ると、アリシアはすでにいた。
アリシアはピンクのドレスを纏っている。
ウェディングドレスってやつだ。
めっちゃかわいい。
俺の諸々の支度は済んでいる。
彼女は実の父であるスーワと話していた。
「仲良くするんだぞ、いいな?」
「はい、お父様」
そんな会話が聞こえた。
緊張してきたぜ…
__________________________
「それではこれから、勇者シュウとオワリカ王国第9王女アリシアの結婚式を執り行う!」
結婚式が始まった。
俺たちは大聖堂の入り口から入り、祭壇へと歩く。
祭壇には司教がいる。
参加者は十数人程度。皆、円形状のテーブルに座っている。
殆どがアリシアの親族であり、俺側の参加者はロムーリだけだ。
ハミやガムはどうしたって??
あいつらは二人で駆け落ちだかなんだかしたらしく、行方不明になっている。
まあ、死んでないだろうからいつか会える。
結婚式は続く。
「この結婚に異議があるものはいるかっ!?」
「…いないなっ!これで、この二人の結婚は神によって認められた」
「これで式は終わりだ」
「皆、呑んで唄え!!」
思ったよりもあっさりに終わった。
これがこの世界での結婚式なのだろうか。
「文化の違い」ってやつか。
「唄え!呑め!」
式の様子がガラリと変わった。
スーワはなんかいなくなってるし、
ロムはテーブルのど真ん中で唄ってるし。
普通に上手いのかよ…
昨日逃げられてから、一度もアリシアと話していない。
…アリシアと話すか。
「…アリシアさん…おはようございます…」
突然、俺に話しかけられて驚いたのか、身をビクンと震わせた。
「あっ…おはようございます…」
「…………」
「……………」
二人の間に沈黙が流れる。
…気まずい。
なんとか空気を変えなければ…
「今日もいい天気ですね」
「…ええ、そうですね」
「晴天の日が一番、魔力が出るんですよ…知ってました?」
「…ええ、本で読みました…」
「………えっと…魔物は、晴天の日と雨天の日、どっちが強くなるか分かりますか?」
「…晴天の日ですかね…」
「実は雨天なんですよ…」
「…………へぇ…知らなかったです…」
「………………」
「………………」
なんか、アリシアがものすごい上の空なんですけど…
俺、なんかやらかした?
「…俺、なんかやらかしました?」
「………え?」
「…俺なんかやらかしましたか?」
「…あ、いえ…特に何も…」
「そうでしたか…」
昨日とは様子がまるで違う。
こいつなんかと結婚するが嫌だ、そんな感じだ。
俺がそのことを聞こうとすると、アリシアが話しかけてきた。
「…シュウさんは………その…お…そう…で………」
最後の方は全く聞こえない。
「………?」
アリシアの顔が赤くなっていく。
「…シュウさんは!その!私と結婚したら!襲うんですかっ!!」
アリシアの大きな声が響き渡る。
大聖堂内に沈黙が広がった。
皆がアリシアを見る。
アリシアは周囲からの視線に気づいた途端に座った。
「………え?」
襲う?何の話だ?
「先ほどお父様から聞きました。女は結婚したあと、全てを男に委ねろ、と。あの話も聞きました。」
あの話……ああ、あの話…か
「…はぁ…」
思わずため息をついてしまう。
………性教育はちゃんとやらないといけないんだね。
そのことを改めて理解した。
異世界から戻った社畜さんは今日も出社する。 Tendon06 / 天丼06 @tendon06
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