第21話『春高楼の花の宴』

巡(めぐり)・型落ち魔法少女の通学日記


021『春高楼の花の宴』   





 身体測定の日は学食はお休み。



 お弁当ってほどじゃないけど、城山(宮之森城址公園)には売店も自販機も無いということなので、ちょっとお買い物。




 学校を出て道を渡ったところにお店がある。




 いちおう大手パンメーカーの看板は掛かってるんだけど、お店の中ではもんじゃやらお好み焼きとかも食べられて、子供向きの駄菓子とかも置いてる。


「あら、お花見? いいわねえ、オバチャンの時代は女子挺身隊だったからね、お花見どころじゃなかった」


 お店のオバチャンはリアル女子挺身隊(^_^;)


「五人分はかさばるから、紙袋あげるね」


 ひとり二個のパンと飲み物。一人分ずつを小袋に入れて、それをまとめて西武百貨店の袋に入れてくれる。


 この時代、レジ袋もコンビニも存在していない。


「なにシゲシゲ見てんの?」


 ジュースのパックを見ていると吉本さんに見咎められる。


わたし:「ああ、変わったパックだから」


吉本:「え、普通のテトラパックじゃないの?」


辻本:「給食の牛乳これだったね」


ロコ:「うちは、ビン牛乳だった」


吉本:「三年まで脱脂粉乳だった!」


横田:「あ、あれは飲めたもんじゃなかったよねぇ」


辻本:「アメリカじゃブタの餌だし」


ロコ:「ブーブー!」


吉本:「ブタはブヒブヒだぞ」


ロコ:「ブーブー!」


吉本:「ブヒブヒ!」


横田:「もう、食べ物屋さんでブタごっこはいけません」


みんな:「「「「「アハハハハハハハ」」」」」




 なんか、早くもみんなお友だちの雰囲気で城山を目指した。




吉本:「八重桜はゴージャスだねえ!」


 感嘆の声を上げたのは吉本さん。


 天守閣とか建物の無いお城って、どんなのかと思ったけど、苔むした石垣との対比がステキだ。


辻本:「来てよかった……」


横田:「そうね、荒城の月って、こんな感じよね」


ロコ:「あれって、夜の歌じゃないんですか?」


吉本:「ああ、月は夜だよね」


横田:「夜になるのは四番よ、一番は『春 高楼の花の宴~』よ。お城でやったお花見がテーマ」


辻本:「そうね、めぐる盃ぃ~かげさしてぇ~♪」


吉本:「よし、あたしらも盃にしよう!」


みんな:「「「「「おお!」」」」」


 高島屋の袋からパンと飲み物を出し、石垣の縁に立ってグビグビ、チビチビ。


ロコ:「メグさん、シミジミしてますねえ」


わたし:「え、あ、なんかモノノアワレ的なみたいな?」


横田:「あ、そうね。荒城の月って、昔を偲んでシミジミする歌なんだよね。時司さん、正しいわよ」


わたし:「いえいえ、そんなあ(^_^;)」




『荒城の月』知らないだけだしぃ(#^_^#)




吉本:「う~ん、写真撮りたいねえ」


辻本:「あ、そうね、青春の一コマ的かもね」


 うう……スマホあるから簡単に撮れるんだけど、出すわけにはいかない。


ロコ:「スケッチしましょうか?」


みんな:「「「「スケッチ?」」」」


ロコ:「あ、ほんのクロッキー的なもんです。期待されると困るんですけど(^o^;)」


みんな:「「「「やってやって!」」」」




 みんなで桜の木の下に立ち、つつましくポーズをとった。


 ロコは、自分の立ち位置とポーズを決めると一段高い石垣に上がり、器用に五分余りで書き上げた。


 今日は、一気に友だちが五人になった。


 めでたしめでたし。




☆彡 主な登場人物


時司 巡(ときつかさ めぐり)   高校一年生

時司 応(こたえ)         巡の祖母 定年退職後の再任用も終わった魔法少女

滝川                志忠屋のマスター

ペコさん              志忠屋のバイト

宮田 博子             1年5組 クラスメート

辻本 たみ子            1年5組 副委員長

高峰 秀夫             1年5組 委員長

吉本 佳奈子            1年5組 保健委員

横田 真知子            1年5組 リベラル系女子

加藤 高明             留年してる同級生

藤田 勲              1年5組の担任

先生たち              花園先生:4組担任 妹尾先生:グラマー

須之内写真館            証明写真を撮ってもらった、優しいおねえさんのいる写真館


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