第12話 一触即発
「……ふざけんな」
「……それは……」
一通りの
ほぼ全員が絶句し、次の句が紡げない状況である。
分家から入った婿が、前当主の没後に妻子が屋敷にいるにも関わらず愛人親子を呼び寄せた後、領地に妻子を送る途中に刺客を送り込んで生死不明にし、どさくさ紛れに捏造書類を貴族管理局に提出。執事を筆頭にメイドから庭師に至るまで全解雇で証拠隠滅──だいぶ
ちなみにソアラというのはグラシア
「ヴィオス、貴族印章関連の記録簿持ってこい。……貴族管理局の責任問題問われるだろ、これ」
イストの指摘に王宮側の使者が顔色を変える。
責任問題だけで済まない可能性もある。
貴族管理局に提出される書類に押印する印章は神殿で管理している印章を押さなければならない。この印章は管理局の書類にのみ使用するため他の用途に使用を禁じられている。──故に神殿に使用記録がなければ書類が偽造されているわけである。
「……さて殿下、どうしましょうかこれ。侯爵家の一件と第一王子による
口調だけは整えたイストからは怒気が陽炎のように揺らめいて立ち上る。
「こちらとしては全面戦争で焼き払っても構わねぇぞ?」
面食らった。としか言い様がなかった。
目の前にいるイスト・アルテッツァという人物は本当に大神官なのだろうか?
仮にも聖職者が焼き払うなどと公言するものなのか……?
創世神を奉る大神殿のトップに長らく君臨する──先代の…いや先々代の国王の御代には既に大神官であったと聞いたことがあるが……。
それに聖女が可憐な美少女……聖女が攻撃魔法撃てるとかっ……聞いていない!というか死んだ
『あのバカ
父王から下心もあって密命を請けたは良いが遂行出来る気はしなかった。出来ることなら時間を遡ってやり直したい──そうラグレイトは思った。
◇◆◇
この国の王侯は良く解ってはいなかった。
創世神の神殿の本質を。
教義に正当なる復讐という言葉があることを。
創造と破壊は表裏一体ということを。
創世神が何を思い、そして消えたのか。
そしてそのやるせない意志を継いだのが誰なのかを。
建国してたかだが二百年の王国には、暗黒時代と呼ばれた五百年前の大陸全土を巻き込んだ
至高神の地位を簒奪した神の神殿の勢力をこの大陸から追放したのは傭兵イスト・アルテッツァ率いる創世神殿である。
死せる聖女は甦る 風見渉 @Shou_k89
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