第7話
「こんな真夜中に誰かと思えば、あなたですか。珍しいこともあるものですね」
夜中過ぎの呼び鈴に応じて開いた玄関扉の向こうにいたのは特化隊隊長のフィル・オ・ウィンだった。
「ちょうどこの辺りに通りかかったものでね。寄らせてもらったよ。少し、礼が言いたくてね」
今夜はいつもの制服の上に重厚な外套を羽織り、夜中にも関わらず濃い色の色眼鏡を掛けている。ちょっとした外出時に高度な対魔装備で身を固める者などいない。
「まぁ、何のことかはよくわかりませんが、いつまでも立ち話もなんですから奥へどうですか。私どもでもお茶ぐらい御出しすることはできますわ」ローズは礼儀正しくとぼけておいた。
「残念だが、今回は遠慮しておくよ。まだ、職務中なのでね」オ・ウィンはローズの言葉で動こうとしたフレアを止めた。ローズもうなずいた。
「今夜も例の串刺し魔が出てね。もう大騒ぎなんだ」
「あら、大変ですわね」
「幸い今夜は死亡者は出ずにすみそうだ」
「それはなによりですわ。でも、それがわたしどもに何か関係があるんですか?」
「あぁ、それなんだが、今夜難を逃れた被害者によると剣を持った男に襲われ、あわやという時に、金髪でお仕着せを着た少女に助けられたというのだ。そして彼が我々に救助を要請し、共に再び現場に戻った時には賊はもう逃走していた。少女も姿を消していた。彼はその少女に是非お礼が言いたいとのことだった」
「そのお仕着せの少女がうちのフレアだというのですか?」
「思いつく中で、とりあえずここが一番近かったのでね。寄ってみたんだよ」
「確かに今夜はあの娘を用事で使いに出しました。彼女には街で何か困っている人がいれば、お助けするように言い聞かせてはいますが……」ローズは後ろに控えているフレアに視線を向けた。「フレア、今夜のお使いの途中でオ・ウィン様がおっしゃるような出来事ががあったの?」
「はい……、お使いのために急いで走っていた時に、突然悲鳴が耳に入りましたので、すぐにその場に駆けつけました。何やら賊に襲われている様子でして、その方を助けるために間に割って入りました。その方には警備隊の方への連絡をお願いしました」
「そういうことは黙ってないで、わたしも伝えてほしかったわ」ローズはため息をついた。
「それは……、その時は無我夢中でその方を助けることだけしか頭になかってのですが、あとであの賊が串刺し魔だということに気づき、もう介入しないとのことでしたので、言い出しにくくて、すみませんでした」
見え透いた芝居とわかりきっていたが、オ・ウィンも後に続いた。小芝居は彼が始めたものだ。
「そのことなら気にすることはない。帝都民の安全のための活躍は感謝しているよ。で、その賊の人相、風体などはどのようだったか、君は覚えていないか?」
「フレア、何か覚えていることはない?」
「そうですね。黒いローブを着て、大柄、体格からしておそらく、男。顔は兜に隠れていたのでわかりません」
「奴と戦ったという証言があったがどうだった?」
「どうだったの?」ローズが促す。
「打ち込みとかは結構力がありましたね。動きも速かった」
「君がそういうからには奴はかなりの使い手と思って間違いはないか?」
「はい」
「他に打ち合っている時に気づいたことはなかった」ローズは何気ないふりをして左手で右腕に触れた。
「ああ、右腕は動義手でしたね。打ち合っている最中に肩から外れたのでわかりました。後、助走なしで屋根に上がれるほどの跳躍力があります」
「それは確かなのか?」
「間違いないですよ。わたしの目の前で飛びましたから」
「ふむ、それで奴はどこに逃げたかわかるか?」
「少し屋根伝いに逃げた後に運河に飛び込みました」
「運河というと、ガ・レマ運河のことか?」オ・ウィンもフレア同様驚きを隠せなかった。あの汚れた運河に飛び込むなど正気の沙汰ではない。
「もちろんです。他の運河がどこにあるんです?」
「それで奴は?」
「潜ったきり、そのまま浮かんできませんでした」フレアは残念そうに首を振った。
「後は追わなかったのか」
「わたしが飛び込んでも何もできませんし、お使いの途中でしたし、何より関わるなと言われてましたし……」
「河ざらいでもしたらどうですか。何か見つかるかもしれませんわ」ローズが言った。
「これで失礼する」オ・ウィンは冷静さをかき集め、それだけ言うと玄関から飛び出し、そばに止めていた動馬車に飛び乗った。動きだけは実にかわいい。
「あれでよかったですか?」
「いいんじゃない。河ざらいは彼らにまかせましょう」
二人はオ・ウィンの馬車が走り去っていくまで眺めていた。
ややあってフレアが呟いた。
「ローズ様、一つお聞きしたいことがあるんですが、いいですか?」
「なにかしら?」
「ローズ様は過去に鮮血の剣と何かあったんですか?」
「どうしてそう思うの?」
「最初の妙な話のはぐらかし方と事件への入れ込み方です。オジーを使うほど危険を冒して入れ込んでいるわりに、ローズ様はいつものように楽しんでいる様子が見られません」
「ふん、よく見てるわね、中で話しましょう」
玄関扉が静かに閉じ、フレアは締め出されないように素早く塔内へ戻った。ローズは既に最上階へと向かう螺旋階段を上り始めている。フレアも後に続く。
「話したことがあるかどうか覚えていないけど、短い間だけどわたしもエル・コンデライトに住んでいたことがあるの。鮮血の剣の練成者であるニコラス・エバリンが住んでいた街よ」
「はい」
「あそこでもわたしは裕福で変わり者の魔導師を装って暮らしていたわ。でも、わかるでしょ。どんなに注意していても正体はばれてしまう。彼もわたしの正体を見抜いた一人だった。彼はある夜わたしの前に現れて言ったわ。仲間にしてくれと……力が欲しいんだと。もちろん断った。魔力の絶望的な低さに悩んだ末のことだったようね。後ろから家族を支えることもできると錬金術を勧めて送り出したんだけど、心の闇は深かったようね、結果は……」
「それってローズ様に責任は……」
「無いわ。けど、わたしの目の前に現れられてはね、やっぱり気になるわ。もし、あの剣に彼の残滓でも残っているのなら、剣を破壊しそれを解放し転生の輪に戻してあげたいと思ってね」
「それだとかなり気を入れないとだめですね」
「そうね。また朝から頑張ってもらうことになるわ」
探しているものを速やかに発見することは難しく、探してもいないものが先に見つかる事が多い。
早朝から開始された帝都合同捜査班の運河捜索活動の成果は、本来の目的からはずれ長年話題となってきた帝都の都市伝説を補強するものばかりで、事件解決に寄与するものはなかなか発見されなかった。
運河脇にはその仄暗い水底から揚げられた肉食性の巨大魚と何体分もの人骨が並べられている。そして、正教会から派遣された僧による鎮魂の祈りが捧げられ香の香りが漂う中、運河周辺は野次馬たちでごった返し、お祭り騒ぎとなってしまってる。
これは運河には巨大な生き物が棲んでおり、運河に落ちた者はそいつに食われてしまうという都市伝説の証拠がついに発見されたと騒いでいる者たちである。
フレアも人ごみにまぎれてその様子を眺めていた。そして、幸いにも捜査班の努力が報われる瞬間を目撃することになった。水中のゴミと共に投網に絡まり、はしけに揚げられたのは、澱んだ泥水をたっぷりと含んだ黒のローブ。まだ新しく傷みは目立たない成人男性用のローブである。そしてそれに絡みつく軽装鎧の右腕。警備隊員はローブを同乗していた特化隊のデヴィット・ビンチに広げて見せた。どこにでも現れる男だ。ビンチは振り向き群衆の中にいるフレアを見据え、引き上げられたお宝を軽く指差した。やはり野次馬にまぎれていたことは気づかれていたらしい。お前が昨夜見たのはこれか、ということだろう。フレアは軽く二回頷いた。ビンチは了解の意か軽く右手を上げ、背を向けた。これら一連の動きを気に止める者はいなかった。皆が見たいのは巨大な怪物魚や大きな歯型のついた遺体なのだ。その後しばらく運河での作業を眺めていたが、古びた剣や軽鎧を身に付けた水死体が見つかることはなかった。フレアもいつまでも運河の清掃作業を眺めているわけにもいかず、次の訪問先へと向かった。
開店間もないハンセン・ベック魔導工作所に訪れたフレアは、案内係にショールーム中央にあるテーブル席へと案内された。ここで扱われているのは主に帝国へ収める魔導機器や装具である。コバヤシ製品の販売代理店でもあるため、店内にはそれらの横に対魔仕様にカスタマイズされた鉄馬や鉄人なども飾られている。
「おはようございます。ランドール様」
ほどんど白湯というお茶がフレアに出されてからほどなく、所長のリュー・ハンセンが現れた。ハンセンは色白で黒髪、黒い瞳の美しい女性で、見た目の年齢はローズと変わらない。そのため呪われていないローズという雰囲気を持っている。
「おはようございます」
「今日はどうされましたか?鉄馬に何か不具合でもありましたか?」ハンセンは静かにほほ笑んだ。
「いいえ、馬に特に問題はありません。今日は義手についてお聞きしたいことがありまして……」
「義手、ですか?」
「はい、あの腕をなくしてしまった方が使う装具の……」
「それならうちでも御提供はしています」ハンセンは熟練の人形師であり錬金術師、そして工房の共同経営者でもある。「お二人のお知り合いの方で義手が必要になった方がおられるんですか?義手は使用する方に合わせてお作りする物なので、使用者様ご自身で工房のほうにおいでいただけると助かります。操作の訓練に多少の時間は掛かりますが、以前の生活を取り戻すことはできると思います」
「いや、そうではなくですね」
「はい」
「義手を使っている人のことを知りたいんです」
フレアは昨夜の出来事を軽くまとめてハンセンに話した。内容はオ・ウィンに話したものと同様だったが、ハンセンも二人をよく知る者の一人であり、彼女が偶然人を助けたなどという話は信用しないが、それを口に出さない分別はある。
「なるほど、ランドール様が出くわした賊は義手を使用していた。それも高価な動義手だと思われる。それで戦闘にも耐えられるであろう装具を扱うわたくしどもの元へお越しになった。それはわかりますが、この場合まず、お医者様を訪ねられた方がいいと思いますよ」
「やはり、ですか」
「お話によると賊はランドール様との戦闘中に義手が外れたほか、あなたからの打撃の何度か受けている。たとえランドール様、あなたが手加減をしていたとしても、適切な防具なしでは、体を人形にでもしない限り普通は立っていることはできないでしょう」
「そんなことができるんですか?」
「可能です。動人形を依代に本人がそれを乗り物とすればいいんです。でも、そんな人はいないと思いますよ。明らかに違法ですので、帝都の市民としての権利を失ってしまいます。話がそれてしまいましたね。とにかく、賊はあなたの攻撃で負傷したはずです。その場は必死に耐えたかもしれませんが、治療は必要です」
「そうですね。何かで麻痺して痛みを感じなくても、体は損傷してますからね」フレアはフリーデンの店で発見した盗掘者を思い出した。
「ええ、普通は小さな切り傷でも治るのに数日かかるものです。ですので、お医者様に義手の男の来院か、往診について……」
「所長、特化隊の方がお見えになってます」
先ほどの案内係が現れ、二人の会話は中断となった。
「魔導騎士団特化隊ニッキー・フィックスと申します」フィックスはハンセンに隊の身分証を見せ。恭しく頭を下げた。そして、フレアに視線を移した。「お話の途中でしたか、どうぞ続きを、後で少しお時間を頂けますか?」
案内係の後ろにいたのはオレンジ色のターバンを頭に巻いた長身の男。派手な刺繍の入ったウエストコート、袖口飾りのついたシャツ、クラヴァット、旧市街が似合うゴロツキである。
その口調こそ穏やかなものだが、彼の目はフレアにさっさとここから出て行けと言っていることがありありと見える。
「それには及びません」フレアは席から立ち上がった。「あなたもお忙しい身でしょうし、わたしの用事はもう終わりましたから」
しかし、フレアはこのまま帰るつもりはなかった。ハンセン・ベック社の社屋正面出入り口から一度出てから社屋の外側を回り、裏通りに面している工房兼整備場の裏口へと向かった。
工房へと向かう社屋脇の道はいつもより綺麗に掃き清められているように思われた。工房裏口に着いた時、フレアはそれが気のせいなどでないことを悟った。重要な顧客がすぐにでも訪れるのだ。
そこには完璧に磨き上げられた鉄馬二機と車体が置かれていた。ローズの持つ軽装のバギーではなく、四、五人は乗ることができる二頭立てのキャリッジである。鉄馬、車体とも鮮やかな真紅の地に白いラインが入れられ、側面には皇家の紋章である向かいあう獅子が描かれている。
「どうです。素晴らしいでしょう」フレアの背後から声がした。
振り向くとそこにはハンセン・ベック社の共同経営者のチャン・ベックがいた。現場担当でぼさぼさの長い髪と山羊髭が特徴となってなっている男だ。今日は珍しく長い髪を綺麗に撫で付け後ろで纏め、髭にも櫛が入っている。
「アイオミ公爵にお納めするためのものです」
「あのアイオミ様ですか。あの方はもう馬車はお持ちなのでは?」公爵のことはフレアも知っている。彼のために一働きしたこともある。
「はい、今回は家族でゆったりと乗れる物をということでこちらをお買い上げいただきました」
「いい色ですね。真似できないのが残念ですけど」
赤特に鮮やかな真紅の地に白のラインは皇家以外は使用を禁止されている。
「はははっ、では対魔塗装はどうですか?それなら問題はありません」
「うちはローズ様が対魔装備そのものなので……」
「あっ、これは失礼しました」ここでベックは真顔になった。「ところで、今日は何の御用です?」
「義手を見せていただけませんか?」
装具工房へと向かう道すがらフレアはベックにかいつまんで今回の要件を話した。串刺し魔との関連に少し顔を曇らせたベックだったが、事件解決のためならとフレアを工房へと招き入れた。
「これが当社で扱っている義手です」
フレアの前に出されたのは黒い色をした右手が二本、一つは球体関節の人形の腕のようで、もう一つは鎧の籠手のように見えた。腕はそれぞれ支持台に固定され、簡易操作用のヘッドセットを付けたベックの右手と同じ動きをした。やがて、二本の腕はフレアに握手を求めるように手を差し出してきた。それぞれと軽く握手を交わしてみたが、どちらも本物と同じように握り返してくる。少し力を入れた時の反応も変わらない。
「この二つ見た目以外にどういう違いがあるんですか?」
「使用時はこの上に皮膚を模した素材を被せるため見た目は変わらなくなります。どちらも識を構築し、それによって動作を管理するという点においては同じなのですが、様式がまるで違います。こちらはコバヤシ識の腕」ベックは籠手に似たほうの腕を示した。腕も同じ動きをする。
「そして、こちらが古くからある動人形の技術を応用したイザヤ識の腕です」球体関節の腕がベックの腕と同様の動きをする。
「どちらもしばらくの間訓練が必要です。その期間も大差ありません。決定的な相違点はその価格と使用感です。コバヤシの腕は比較的廉価ですが、どうしても補助装具の域を出ることができないようです。それに対してこちらの腕は何割か高価になりますが、識を使用者本人の意識を絡めるため腕との一体感を取り戻すことができます」
「では、こちらの方が優れているということですか?」フレアは球体関節の腕を差した。
「その点では優れています。触れる物の暖かさや柔らかななどを繊細に感じ取ることができるのですが、しかし、それは苦痛などに関しても言えることなんです。義手が損傷した場合、コバヤシの腕は衝撃を感じる程度であっても、イザヤの腕は式との連結を解くまで激しい痛みを感じ続けることになるかもしれません。これはお客様にまずお話しすることにしています」
「腕が外れるようなことがあればどうなりますか?」
「体本体と識で密接の絡んでいますから、本物の腕がちぎれる時と変わらないほどの痛みを感じることになるでしょう」
「怖いですね」
「はい、ですから、繊細な感覚を取り戻さなければならない方以外は無理にお勧めしていません」
そういえば、ケインの親方が世話になったという人形師はどちらの方式を採用しているのかとフレアは考えた。聞いた雰囲気からしてイザヤの方か、そして昨夜の乗り物について考えを巡らせていた。それは優れた身体能力を持つ剣の使い手、何らかの理由で右手を失い、現在は動義手を使用している。昨夜の状況からして使用しているのはコバヤシの腕、こちらの腕なら昨夜の状況も納得できる。
「今日になって装具の修理の依頼や予備部品の注文はありましたか?」
「いいえ、まだ何もありません」
ベックはフレアが少し落胆した様子を見て取った。
「しかし、まだ朝ですから依頼が来るとしてもこれからです。それに予備を持っていれば使うでしょうから直すのは後になります」
「他の業者を利用することはできますか?」
「闇医者のようなものですね」ベックはにやりとした。「コバヤシの物はうちかコバヤシの技術者しか扱うことはできません」
「つまり、あなた方を頼るしかないということですね」
「そうなりますね」
「もしその連絡があったら教えてもらえますか?」
「ええ、もちろん」
フレアは次の要件を済ませる前に、もう一度ガ・マレ運河に掛かる橋まで戻ってみた。河ざらいのはしけは上流に移動し、それに伴い野次馬も動いていた。引き揚げられた骨や怪物じみた魚は増えていたが、それ以外には成果は見られない。
運河を橋から眺めていたフレアは、今更ながら運河沿いの建物に備え付けの桟橋の存在を思い出した。運河沿いの住居などは桟橋から自宅に入ることができる。しかし船を持つは者は少ないためあまり活用されることはなく、物置代わりとなっていることが多い。
不幸なフリーデンは最初の盗賊同様どこかに隠されていたのだろう。それが大雨による運河の増水により図らずも人目にさらされることとなったというところか。それなら、隠されてていたのは運河沿いで桟橋を持つ住居、または工房ではないか?
フレアが思いつくことなら合同捜査班も容易に思いつく。彼らは既に行動を始めているらしく、上流の自宅桟橋で警備隊士と話す住人が見える。合同捜査班もバカではない。
運河の様子を横目にケインから聞いた人形師の工房を探してみた。コバヤシ以外の線も当たってみるのもよい。ケインから話を聞いていたので、フレアはそれを簡単に探し出すことができた。
サンクチュアリ人形製作所、そこは思っていたより小奇麗な建物だった。運河沿いにあり、対岸は旧市街の東端にあたる。少し距離はあるがサヴェージ修道院の尖塔がここからでも見える。建物は二階建てで奥行もあり、運河沿いの桟橋付きの物件。ここなら新市街だけではなく旧市街の客も訪れるだろう。
一目会って話をしたいところだが、工房の入り口には「体調不良のためしばらくお休みします。ラルフ・シェーパース」という張り紙が張られている。ケインが店主は体調を崩していると言っていたが、まだ回復してはいないということをフレアは確認した。工房のショーウィンドーの中ではケージに入れられたネズミやウサギが走り回り、籠の中の鳥が羽づくろいなどをしている。小動物などは食べ物扱いのフレアでもそれらに愛らしさを感じることができた。その奥の暗く人気のない店内には等身大の人型人形が立っている。
フレアはしばらく鳥やネズミを眺めた後その場を離れた。
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